統合のドクトリンを語る

本日も中国の脅威に言及しない軍人トップの講演です
dempsey3.jpg5月1日、デンプシー統合参謀本部議長がカーネギー国際平和財団で講演を行い、1月発表の新国防戦略に沿った統合運用の考え方や変幻自在な潜在敵対国の様態を語っています。
先日「security paradox」との表現でデンプシー大将が語るのをご紹介しましたが、同様の流れをなす考え方です。
「ハーバードで脅威の変化を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-16
デンプシー議長は・・・
●イラクやアフガンの戦い後を見据え、新たな戦い方、つまり俊敏で同盟国等と緊密に「networked force capable」な形で、分散型でモザイクのような潜在敵を打ち破る方向を考えねばならない
●出来たてのドクトリンは、2020年までの脅威環境を見据えた、未だ不十分ながら「central organizing principle」に沿ったモノである。過去10年の対反乱作戦COINからの変換再適応を始めたばかりである。
●我々は「global networked approach to warfare」に向けて歩みを始めたのである。
dempCarnegie.jpg我々がこれまで備えていなかった能力である。大規模な組織化された敵の陸海空軍ではなく、ネットワーク化された分散型の敵に対処するため、これまでの能力に加え、これまでと異なった目標にこれまでと違うプロセスで取り込まなければならない
●そのため、世界中に分散配備した小規模な我が戦力は他国と協力し、兵器技術が拡散する中で、テロから海賊や多国籍組織的犯罪等々全てと戦わなくてはならない。
●我々を取り巻く世界は変化し続けている。私が「security paradox」と呼ぶ世界では、暴力は歴史上革命的に低レベルにあるが、兵器技術が小中規模国家やグループに拡散し、歴史上かつて無くより潜在的に危険な状況にある。
テログループや犯罪組織や悪漢国家は、彼らのニーズに応じ集散離合が迅速であり、我々もこれに対応し、他政府機関や同盟国との柔軟なネットワークで対応しなければならない
●このため、ペンタゴンは国際パートナー関係構築やISR・サイバー・特殊作戦分野での統合協力を推進してきた
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DempseyKennedyS.jpgデンプシー議長は最近中国の脅威を臭わせるような発言を極力避けているように感じます。
特に下記の「JOAC:The Joint Operational Access Concept」に関しての言及がほとんどありません・・
←4月12日のハーバード大での講演もそうですし、今回のCarnegieでの講演も兵器技術の拡散とネットワーク化された仮想敵の側面からのみアプローチしています。なぜなんでしょう・・
5月4~10日の中国・梁光烈国防相の米国訪問を前にして、軍人として慎重な姿勢を取ったのでしょうか??? それとも中国と・・?
講演のビデオ映像は
→http://carnegieendowment.org/2012/05/01/conversation-with-general-martin-dempsey/ad7h
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FlynnLTGMC.jpg4ヶ月あまり前のことになりますが1月20日、1月17日に統合参謀本部から公開されたJOAC:The Joint Operational Access Conceptについて、統合参謀本部の担当部長が解説ブリーフィングを行ったようです。
「このコンセプトは重要な第一歩である」、「特定の装備品や戦法や技術や手法と結びつけるのは時期尚早」、「我々の課題や必要な能力を明らかにし、必要なスピードを獲得し、前線レベルでの融合を進めて統合で運用出来るようにするためのコンセプトである」等々と説明し、「具体的にどこの予算を削減するんだ」と質問する軍事記者達をなだめています
理解困難な部分もありますが、一応最近明らかになってきた予算削減の方向性を示した軍レベルの文書ですので、JOACの作成責任者であるGeorge Flynn海兵隊中将(統合参謀本部の戦力計画部長:director of joint force development)による説明の概要をご紹介します。
なぜJOACが必要か 3つの理由
FlynnLTGMC2.jpg潜在的な敵対者が、劇的に進歩しつつあるA2AD能力を獲得しつつあるため
常時海外に駐留する米軍が減少傾向にあり、本土からの展開部隊による作戦が重要なため
宇宙やサイバードメインが重要で難しいエリアになってきているため
30の緊要な能力のカテゴリー7分類
●command and control ●intelligence
●fires [lethal or nonlethal effect on a target] ●movement and maneuver ●protection ●sustainment ●information and engagement
JOACの位置づけ
●Air-sea battle Concept、littoral戦闘や陸上戦闘コンセプトを結びつける概念
●2009年に過去更新され、現在再更新に取り組んでいるCapstone Concept for Joint Operationsは、JOACと他の統合ドクトリン作成を橋渡し(bridge)する。
—(Capstone Conceptを同中将は、「security challenges、winning the nation’s wars, deterring adversaries, developing cooperative security, defending the homeland and responding to civil crisesを記述するモノ」と説明しており、JOACの上位コンセプトと思われる)
—なおCapstone Conceptでは、将来の戦いのスピードについて新たに言及している
●本JOACの重視することにより、より効果的に、より効率的に、よりaffordablyに米軍は目的を達成することが出来る。
キーワード:Lower-level operational synergy
dempsy.jpg●ドメイン横断シナジーは新しい概念ではなく、重要性も以前から指摘されているが、より深く細部にわたって前線レベルで追求しなければならなくなっている
●これまで我々が経験したことのないレベルで、複数ドメイン間で連続した(sequenced)作戦が進行するからである
●陸海空宇宙については伝統的に理解があるが、人工のドメインであるサーバーを前4者に常時ミックスしなければならないサイバーの脅威は成熟してきており、この現実に適応せねばならない
実現するまでには、この概念をより発展開発しなければならない
「新味なき国防戦略」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-06
「統合の拒否戦略コンセプト」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-20
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dempsy2.jpg米国防省webサイトの記事からご紹介しましたが、抽象的な概念を多分に含むコンセプトなため、解説する方も、聞き取って記事に書く方もうまく整理が出来ていないような気がします
シナジーだ、統合だ、Lower-levelまでやるぞ、A2ADは差し迫った脅威だ、と・・・。
やはり具体的な姿が見えないと理解が難しいと思いながら一月前に読んでいたのですが、予算削減の方向性が見えて来た今でも難しい中身です。
「Capstone Concept for Joint Operations」が更新発行された際に参考にしてください。

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