丹羽中国大使や尖閣の問題が、AKBやオウム問題の合間に話題になっていますが、この秋に政権交代がある中国国内の状況については、薄煕来事件以降あまり聞こえてきません。
円と元の直接取引開始も中国国内の様子には繋がらず、確かに石原都知事が「尖閣買い取り」発言をしても、あまり中国内で反日気運が高まっているようなニュースもありません。
そんな今日この頃、「WEDGE」のサイトで岡崎久彦氏がその当たりの情勢分析を行っています・・・。
5月30日に薄煕来事件と絡め
●薄煕来事件が今秋の権力継承に与える影響については、とかくの議論がありますが、中国指導部は何とか取り繕って、党内を抑えてしまうように思われます。
●むしろ、指導部にとってより大きな打撃となったのは、共産党幹部の腐敗堕落が公然とウェブで喧伝され、それによって国民の中国共産党に対するイメージが大きなダメージを被ったことでしょう。このことは、今後の中国国内デモの取り扱いに影響して来ると思われます。
●実際、石原都知事の尖閣購入の話が出てきた時、中国で反日デモが起きると恐れる向きもありましたが、こんな時に反日デモを許していたら、忽ち共産党幹部糾弾のデモになっていたでしょう。過去にも、2006年春の上海、広州における数万の反日デモのあと、デモが厳禁された例があります。
●また先日、中国で行われた軍関係者同士の対話で、中国側が日本のフィリピンへの警備艇売却に激しく反対したそうですが、この件は公のメディアには一切出ませんでした。それが出て、反日デモを誘発したら困るからでしょう。
●こうした状況は、日本にとっては、南西諸島防衛の強化、尖閣の実行支配などを進める良い機会です。反日運動は、激化すれば、かえって、その矛先が中国政府に向かうことを中国の支配者はよく知っているからです。
6月8日に台湾問題と絡め
●アイケンベリーの論説は、そうした中国の意向にも迎合するような希望的観測に安易にくみすることなく、台湾防衛は引き続き重要だとする立場に立っています。
●その観点からすると、台湾への武器供与の度にごたついたり、いつまでも要人の交流を制限するようなことはもう止めた方が良いという議論です。常識的で健全な意見と言えるでしょう。
●また、政権交代期には中国が内向きになるだろうから、米台関係を改善するチャンスだという指摘は、新しい視点で注目されます。もっとも、現在の中国の状況は、政権交代のためというよりも、薄事件や陳事件で中国政権がボディーブローを受けたことによる影響が大きく、そのために中国は対外的に強硬に出られないように思われます。
●実際、今は尖閣問題でもウイグル問題でも、反日デモを呼びかけることは不可能でしょう。薄事件で中国共産党指導部の腐敗が表に出てしまったため、反日デモがいつ反政府デモに転じるかわからない情勢だからです。
●また、薄、陳の事件は台湾の体制に道義的優位を与えており、こんな時に中国は台湾に対して強くは出られません。その意味で、今が米台関係を強化するチャンスだというのは正しいでしょう。
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漏れ聞こえてくるところによると・・・北京の日本大使館内では、丹羽大使に情報を入れない、丹羽大使の指示は適当に聞き流す、重要な案件は相談せず本省と直接相談、等々の「面従腹背」路線が館員に自然と徹底されているようです。
あの大使の姿勢ではそうならざるを得ないのでしょう・・・。
「丹羽中国大使の中国観」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-02
中国国内がこんな時ほど、一丸となって日本の国益を追求するチャンスなのでしょうが・・・つくづく勘違い「政治主導」の罪深きを恨みます。
ところで・・・、つい最近は「イスラエルによるイラン攻撃は時間の問題」との警告を一人発していた同氏ですが、その件は「5+1」の結果待ちと言うことで遠のいたらしいです。
「中国経済と指導者交代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-15
「中国を多様な視点で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-31
「中国がパキスタンで苦労」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-24
「バイデン訪中と密約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12