2日、オバマ大統領はF-35開発計画の新しいプログラム責任者に、ボグダン空軍少将(Christopher C. Bogdan)を推薦し、同時に中将への昇任も議会に推薦しました。
泥沼状態のF-35開発ですが、この国防長官室のポスト(director, Joint Strike Fighter Program)は、初代が海兵隊の少将、その後問題が大きくなるに連れ中将ポストに格上げされ、現在は海軍中将が2010年5月から勤めています
F-35の大部分を調達する米空軍が、なぜこのポストを取れないか疑問でしたが、ゲーツ前長官が戦闘機偏重の米空軍幹部を信用していなかったからだとの見方がありました
現在のDavid Venlet海軍中将は海軍システム開発の経験豊富な人材で、「Too big to fail:あまりに影響が大きいので途中で中止できない」といわれる「亡国のF-35」計画を、「組織の人」として馬事雑言を浴びながら2年以上支えてきました。お疲れ様でした。
「F-35責任者は海軍から」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-25
後任のBogdan中将予定者とはどんな方・・・
●1983年に空軍士官学校を卒業したテストパイロット。当初は空中給油機KC-135や戦闘爆撃機FB-111部隊で勤務し、その後専門のテストパイロットとしての道を歩み35機種以上の航空機に搭乗する。その後昇任に伴い、新装備開発計画の全般管理業務にも経験を拡大。
●開発にかかわった機種は多数あるが、大尉や少佐としてB-2、准将時代には新空中給油機KC-46の開発計画全般にかかわっていた。
●その他にも、ミサイル防衛、電子戦やネットワーク、特殊作戦用システムの各開発・計画管理監督業務を経験している
●また兵站や調達分野での勤務も多く、米空軍の補給コマンド、兵站調達担当国防次官の軍事補佐官や空軍省の兵站ポストを経験している。
●本年7月から、F-35プログラムの副責任者として業務の掌握に努めている
このように、航空機の操縦と技術から兵站調達にわたる幅広い経験を有しており、泥沼のF-35を担当するに得難い人材と考えられます
また驚くべきはその昇任の速さ。現在の少将に昇任したのは昨年11月18日。具体的に議会の承認手続きがどの程度のスピードで進むか不明ですが、少将から中将へ1年以内に昇任の可能性十分です。
逆に考えれば、Bogdan少将しか適任者がいないので、例外的であっても昇任させる必要があった・・・とも考えられます。
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誰かがやらねばならない仕事でしょうが、自分だけはやりたくない仕事・・・これが現在のF-35関連の仕事です。
主体的に行動できる米国防省や米軍ならまだしも、口を開けて待っている購入国の関係者は、つきたくもないウソをつき、間違っていると思っても組織の決定に従って動かざるを得ません。
本当に人的損失です。この業務に携わる人は、皆が過ちを感じつつ仕事に取り組むわけですから・・・。
「F-35やっと地上で爆弾投下」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-11
「再度:米会計検査院F-35懸念」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-17
「不沈F-35と低酸素F-22」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-09
「カナダ検査院国防省批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-04
「米会計検査院のF-35批判」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-03-21