米会計検査院がバーチャル訓練推進に待った

Virtual Training.jpg7月19日、米会計検査院(GAO)が米空軍の輸送コマンド、特殊作戦コマンドおよび戦闘コマンドに対し、バーチャル訓練への投資の効率性追求が不十分だとの指摘を行い、各コマンドがバラバラに行っているバーチャル訓練施設やソフト開発等への投資を米空軍全体で計画段階から精査するべきであると改善を求めています
バーチャル訓練とは、実際に航空機で飛んだり実弾を演習場で発射する代替として、コンピュータ画像やシミュレーターを使用して行う訓練で、基礎的訓練の反復や実環境の作為が困難な条件下を想定した訓練等に有効と考えられ、設備投資を除けば実環境での訓練より低予算で訓練可能なため、予算削減の中、注目を浴びているモノです
例えば、海軍作戦部長のグリーナート海軍大将は割高なF-35の実環境訓練を積極的にバーチャル訓練に置き換えるべきだと主張している所です
GAOの指摘自体よりも、指摘を通じて米空軍の実態が垣間見えるような気がしましたので、会計検査院のwebサイトからその指摘をご紹介します
GAOは見た!「What GAO Found」
Virtual Training3.jpg●米空軍の各コマンドは実訓練とバーチャル訓練を組み合わせて訓練を行っている。しかしその取り組みは各コマンドによってバラバラであり、戦闘コマンドが約25%をバーチャル訓練で行うのに対し、他のコマンドは50%に達している。また機種によってもその組み合わせは大きく異なる
●各コマンドの取り組みは全体として一貫した枠組みが無く、努力試行方向や課題への対処がバラバラに行われ、目標、重視事項、投資優先が組織としてデザインされていない
●このため各コマンドの投資はバラバラの基準で行われ、相互運用性が欠如し、時間と経費の無駄が生じている。その結果、協力して行うべき空軍兵士や統合の教育訓練、更には同盟国への訓練機会提供に不整合が生じている
●GAOは、各コマンドのバーチャル訓練を包括する計画や指導する権威が必要と感じたが、包括的な計画や権威の欠如により、空軍はニーズに適応するバーチャル訓練の計画や投資に関し、ギャップを埋め、相互運用性を高め、資源を最大限に有効活用する困難に直面するだろう
Virtual Training4.jpg●また空軍は、バーチャル訓練の推進により実飛行訓練を減らし、$1.7 billionの経費節減が可能としているが、バーチャル訓練を増加させるに必要な経費が明示されておらず、検討が不十分である
例えば、シミュレーター増設の経費、シミュレーター訓練伴う移動経費やバーチャル訓練施設を管理運営する外部業者の経費等々は考慮されるべきである。米空軍は、20011年9月にバーチャル訓練に関わる経費見積もりを行っているが、これでは不十分である
●現状では、空軍はバーチャル訓練への投資が有効との判断が出来る状態にはないと考えられる
GAOの勧告「What GAO Recommends」は
●国防長官は空軍長官に命じ、空軍のバーチャル訓練全体とその投資を監督する部署を明確にすべき。またバーチャル訓練の統合相互運用性を推進する基準を明確にすべきである
●国防長官は空軍長官に命じ、バーチャル訓練の戦略を明確にし、目標設定、効果の評価、資源配分の決定に資するべきである。またこの戦略は、現存する各種将来計画や投資の関係を明確にすべきである
●国防長官は空軍長官に命じ、バーチャル訓練関連のデータを収集整理分析し、実訓練とバーチャル訓練の混合比率やその他将来計画策定時に活用できるよう準備すべきである。
/////////////////////////////////////////////
Cyber-warfare.jpg何かを削減する(される)際は、何かを見返りに獲得しようとするのが組織一般の生態です。組織が大きくなればなるほど、組織内がバラバラに成るのも組織の常です。
しかし、他に競争相手が国内になく、その専門性から外部のチェック体制が機能しにくいのが軍事組織でもあります。
日本の場合は、その国内環境の特殊性を前面に出し、その陰でバラバラに各軍種が好き勝手に防衛力整備を進めてきた経緯があります。
その辺りは、また別の記事でいつか・・・
「石破茂・元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「北岡伸一氏を支援する・・」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-04
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

タイトルとURLをコピーしました