小出しで申し訳ないのですが、少しづつ漏れ聞こえてくる予算の強制削減(sequestration)を巡る動きを、29日付「Defense News」記事から本日もご紹介します。
オバマ政権は、現時点で強制削減発動に至った場合の対処方針を示す意図はなく、議会が強制削減を避ける歳出削減と税収増加案を超党派で案出してくれることを見守っている状況です。
国防省は多様なオプションを予期して動き始めているようですが、その中には時間稼ぎのため、2013年度政府全体で$100 billion削減で妥協する「mini-sequester」案も含まれているようです
23日、そんな状況下、パネッタ国防長官は十数名の主要軍需産業トップと何回目かの秘密会談を行い、国防省が想定している4つの強制削減シナリオを説明しつつ対応等を協議した模様です。
その4つのシナリオとは・・・
●議会が何ら対策を打ち出せず、強制削減が発動される
●11月の大統領選挙後、「死に体」期間の議会が強制削減回避計画を作成する
●大統領選挙前に、議会が強制削減を回避する歳出削減と税収増加案で合意する
●対応策案出の時間稼ぎのため、1年から2年の暫定「mini-sequester」で妥協し、継続審議
パネッタ長官は軍需産業との会談で
●長期的赤字削減案が望ましいが、政治的に実行可能性のあるのは短期の合意で時間を稼ぐ手法であろう、と述べた模様(会談参加者からの情報)
●またこれまでの会談では、国防省と軍需産業界は一丸となって強制削減による雇用喪失の影響を訴え、議会に対し財政赤字削減案を案出して強制削減を回避するよう申し合わせている。
一方、軍需産業関係者は
●閣僚の中で、唯一パネッタ長官だけが強制削減の破滅的影響を訴え、その回避に動いている。軍需産業界は100%パネッタ長官と同じ考えであり、議会に圧力をかけていく点で完全に一致している
●一方で国防省内では、議会が長期的財政赤字削減策で合意できると考えているものは殆どいない
国防省関係者は・・・
●シュワルツ空軍参謀総長は、「仮定に話で申し上げることはない。我々は国防戦略に示された方針に沿って、また地域戦闘コマンド司令官の要望に沿って、優先順位に従って選択をして行くのみである」とコメントしている
●だが国防省関係者の不満は膨らんでおり、政府の予算管理室から強制削減対処の指針が示されるまで、削減対処には手を付けないと多くの国防省高官は強く主張している
●パネッタ長官も、米軍の作戦がここ数ヶ月世界中で強化を命じられている状況下で、予算削減の検討を迫られることに大きな不満を感じていると関係者は語っている。
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大きな進展はありませんが、国防省を取り巻く「陰鬱」な雰囲気をお察しいただけたかと思います。
強制削減(sequestration)の基礎的事項は、以下の記事でご確認下さい
「基礎を復習:強制削減とは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-28
その他強制削減過去記事
「強制削減の影響を企業に質問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-10-1
「強制削減の影響を報告せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-27
「強制削減回避へレビンが動く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-14