27日、米国務省の軍政問題担当サピーロ国務次官補(Andrew J. Shapiro)が記者団と懇談し、米国政府の輸出管理業務の改革が進展中であり、そのゴールが見えてきたと語りました。
この輸出管理規則や業務の改革は、2009年オバマ大統領が改革への着手を命じ、米国の複数の政府機関が複雑に絡み合い、軍需産業や同盟国にとって極めて基準や担当部署が曖昧で理解困難だったプロセスの円滑化を目的として開始されました。
この改革により、予算削減で国内需要が縮小傾向の軍需品の輸出を促進し、兵器調達のコストを低く抑えるとともに、産業基盤維持と経済の活性化に寄与するのが本当の狙いでしょうが・・・。
サピーロ国務次官補は懇談で・・・
●今回の改革が円滑に進んでいるのは、今回の取り組みに国防省が牽引役として関与している事が大きな理由である
●また、今時の改革では、全ての技術や製品を保護することは、必ずしも国家安全保障に寄与しないとの前提に立って進められている点が重要である。本当に重要な「crown jewels」と呼ばれるような核心技術に焦点を絞り、保護や輸出規制を厳しく管理する方向である。
●ここでの核心技術には、例えば、夜間暗視システム、ステルス外装技術、衛星通信技術などである
●現状では、(輸出規制対象の)リストが2種類存在する。国務省のリストと商務省のリストである。そしてこれらリストは極めて曖昧なモノである。これだけでも同盟国や産業界にとっては大きな混乱要因である。
●改革の初期段階で私が驚愕したのは、各政府機関がリストの意味するところを明確に表現できず、かつ2つの機関が正反対の主張をしている点である
●長期的なゴールは、規制を改善し、ITシステムで手続きを容易にし、単一の規制リストと許可権者を定めることである。我々は、第一段階の輸出規制システム改革と進行中の取り組みについて、公表できる段階に迫りつつある。
●完全なリストの完成は年内には無理だが、ゴールラインは見えつつあり、次期政権はキックオフすることが出来るであろうと思う。
●現在国務省が許可ライセンスを発行している数千の部品やパーツについては、商務省の管轄に移行し、手続きが関与する全ての人にとって容易なモノとなるであろう。
//////////////////////////////////////////////////////
武器や軍事技術の輸出規制緩和は、カーター副長官のインド訪問時にも話題にしましたが、オバマ大統領やゲーツ前長官が積極的に推進し、QDR2010でも取り上げられて推進されてきたモノです。
かつてゲーツ前長官は、「守るべき兵器技術を十分守れず、真に必要な兵器を同盟国に提供できなくしている諸悪の根元」と批判した米国の輸出管理規則体型です。
日本では「武器輸出3原則」の緩和が最近実現しましたが、現実的政策として、いつまでも「国産」にこだわっている余裕は今の西側諸国にはありません。
「国産戦闘機を」と声高に叫ぶと耳障りが良く、「国防は国産兵器でないと」と言えばそれは究極の正論でしょうが、現実的政策としてあり得ない経済的負担を強いることになります。
最低限の社会保障や医療、教育やインフラ維持等々・・これらを含めたトータルの資源配分を踏まえて国防も議論しないと、最も避けるべき、遠吠え老人の議論に巻き込まれることになります。
「武器輸出・共同開発の方針転換」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-22
「武器輸出管理の仕組改善とQDR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-09
「QDRの「(軍需)産業基盤の強化」」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-08