9月30日付「Washington Times」が、米陸軍が間もなく「陸軍が如何にAir-Sea Battleを遂行するかのメモを発表する」と報じました。
記事からすると、陸軍関係者の「見捨てられるのでは」との懸念払しょくを意図した文書のようですが、長らくAir-Sea Battle(以下ASB)について触れていませんでしたので、ご紹介します
また、陸軍関係者の懸念払しょくを図るデンプシー議長の発言も併せてご紹介です
記事「地上の兵士が新たなASBの道をゆく」の概要
●米陸軍は、国防省の焦点が中東や欧州から海空活動が大部分のアジア太平洋地域へ向かう中で、公式にASBコンセプトに加わる準備を進めている
●3年前に検討が開始され地上部隊が排除されているように見えるASBだが、海空海兵隊に沿うように、陸軍は間もなく如何にASBを遂行するかについてのメモを発出する予定
●このニュースは、陸軍が今後の統合作戦の中核となるASBとの関与を失い、アフガン後の人的削減の大部分を吸収することを懸念している陸軍関係者を慰めるものである
●陸軍は日本韓国からアラスカ・ハワイ、更にサモアからマリアナ諸島にかけてのアジア太平洋地域に、約5万8千人の予備役や州軍を含む人員を展開している。
●国防省のASB検討室で米陸軍分野を担当するPeter Bechtel氏は、「陸軍には、A2AD脅威下での軍事衝突ぼっ発の前にも後にもやるべきことがたくさんある」、また「陸軍兵士やその防空・ミサイル防衛システムは、第一線で米軍アセットを防御する役割を担う」と述べている
●また陸軍は、如何に装備品をアジア太平洋地域で移動させるかを検討しなければならない。太平洋やインド洋に所在する資材のことである
●更に陸軍は、被害状況下での作戦遂行についても準備しなければならない。例えば通信システムが被害を受けた状況などである。
●CSISのハムレ理事長は、「米軍はASBの一般国民への説明に苦労している。それが何なのか理解できない国民がいる。我々も説明しようとしていない部分がある。米国人は一般に、ASBコンセプトではなく、目的・目標やその方向性を知りたがる」とASBの状況を語っている
●国防省関係者はコンセプトは既にある、と語っており、昨年11月には4軍のASB推進を調整する部署も設けられた。
9月19日空軍協会総会でデンプシー議長は
●全ての軍種にASBコンセプトで担うべき役割がある。ASBは統合のアクセス作戦において多軍種アプローチをとるものである
●ASBとの言葉が明らかになって以降、陸軍は統合ドクトリンに沿い、A2AD環境克服に取り組んでいる。
●我々はそれが確実に正しく検討されるよう取り組まなければならない
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予算削減や強制削減(Sequestration)の恐れや不安の中、何とかして4軍一体を守っていこうとする国防省や統合参謀本部の取り組みと見るべきでしょう。
先日、装甲兵員輸送車両の製造を記念する式典に、副大統領と国防副長官が出席して「陸軍や海兵隊を忘れてはいない」メッセージを発信していましたが、そのような雰囲気の中にある米軍です
脅威の変化に対応するため、陸軍も考えるべきことは多いと思います。被害状況下の作戦や物資の輸送など、プロにしか理解できない重要分野だと思いますので、しっかり検討していただきましょう。
ただし、陸上自衛隊の組織防衛に利用されないよう注意が必要ですが・・・。
「ASBattle検討室はよい話?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10-1
「概要海空軍トップのASB論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「B-52が海上目標攻撃訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-21
「10年ぶり大着上陸演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-02
「アフガン撤収資材をアジアに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-04