26日、国防省にオバマ大統領が「謎の腹心」を送り込んだと一部で話題になったMark W. Lippert国防次官補(アジア太平洋安保担当)が、アジア太平洋での米軍の新たな展開や動きを予感させる講演を、CSIS主催のフィリピン問題セミナーで行いました。
ゲーツ前国防長官は、アジア経験もないこの人物を「ホワイトハウスのスパイ」として警戒して受け入れを拒否したと伝えられていますが、ゲーツ氏退任直前に大統領によって国防省にねじ込まれています。
「不穏なアジア次官補人事」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-20
議員の政策秘書を務めた後、イラクとアフガンには海軍特殊部隊の情報士官として勤務する合間に、オバマ選挙活動や政権移行チームで活動し、昨年春に現職に就く直前は、ホワイトハウスで安全保障会議のアドバイザーを務めていた特異な経歴の人物です。
スタンフォード大学の学位を取得していますが、北京大学で中国語を学んだとも経歴には記載されています。
今回のCSISのフィリピンセミナーですが、広範な分野を研究対象とするCSISにしても、フィリピンのみに絞った研究会を開催することじたが異例と思われ、「怪人Lippert」の「腕力」を感じざるを得ません。
先日、Hicks政策次官補が、陸軍特殊部隊と海兵隊のアジアへの追加配備を示唆したとお伝えしましたが、突然フィリピンセミナーが開催される辺りは、関連の調整も進んでいるのかもしれません
国防次官補ですが、デンプシー議長に同行している様子が写真等で確認できるところから、軍人の動きに目を光らせているのかも、とも邪推しています。
Lippert次官補はCSISでの講演で
●米比同盟はアジア太平洋地域で際立った役割を果たすことから、今後も国防省は比との軍事関係を継続して構築していく。また、米比関係はアジア太平洋地域への新しくエキサイティングなアプローチとなる。
●この同盟関係は最も重要な同盟関係の一つと言え、アジアにおける安全保障議論の中で、極めて重要な部分である。そして両国軍事関係は、過去10年間向上を続けてきた
●これまでの努力は真のパートナー関係を作り出した。そして今、両国は新たなチャプターに向かっている
●実務者レベルでの協議は成熟しつつあり、米は比と安全保障分野で強く協力できる位置に来た。以下の3つの分野でアプローチする
●まず、人道支援と災害対処資材の事前集積である。そして関連する通信機能の強化で、両国がより緊密に意思疎通が出来るようにする
●次に、海洋状況認識の共有である。目に見える形として、本年初に防衛と外交リーダーが発表した沿岸監視センターの設置がある。またデンプシー議長やロックリアー太平洋軍司令官が具体的に進めている両国軍の運用上の関与の進展である
●最後に、演習や訓練を通じた両軍間の関係拡大と深化である。
●過去10年間の両国の努力により、我々は共に「リフトオフ:打ち上げ発射」のタイミングに向かいつつある。
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Mark W. Lippert国防次官補についてご存じの方、是非教えてください!
すでにかなりの期間、ミンダナオのゲリラ対策(の指導)を米特殊部隊が行っているようですが、資材の事前集積、沿岸監視センター、演習や訓練の強化等は、公の活動を伴う「リフトオフ」事業なのでしょう。
対中国で微妙な立場に追い込まれつつあるフィリピンのようですが、ご紹介した米国防省web記事は前進あるのみです。
「不穏なアジア次官補人事」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-20
「アフガン撤収資材をアジア備蓄」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-04
「フィリピンと関係強化へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-01-29-1
「フィリピンがP-3派遣要請」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-06
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