16日付読売新聞が、中国で開催された航空ショーの兵器展示ブースで、中国製短距離弾道ミサイルM20の宣伝ビデオに、台湾飛行場を攻撃して台湾F-16戦闘機を破壊する映像が使用されていると報じています
中国軍や中国の国防関係者にとって、敵戦闘機は地上では破壊する方が簡単で、弾道・巡航ミサイルを充実させる方が戦闘機を空中で破壊するより容易であることが、当然の常識となっているようです。その証左の一つとしてご紹介します
台湾はまだ短距離ミサイルを保有していますが、航空や海軍拠点基地が少数で、防備や代替手段が手薄で、戦闘機と艦艇しかアセットが無い国に対しては、安価なミサイルを揃えることで十分です。空中戦や大編隊の攻撃には長時間の準備と経費が必要で、西側諸国ははるかか前方を走っていますから・・・
RAND研究所も同様の意見を
「RANDが中国空軍戦略を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-29
兵器技術の拡散は、戦闘機命派や空母脅威宣伝派が注目する方向だけでなく、弾道・巡航ミサイルに一層有利に働きます。サイバー戦や宇宙戦にもです。
16日付読売新聞記事(朝刊6面)は・・・
(台湾紙「自由時報」等を引用し)
●中国広東省珠海市で13~18日に開催された「第9回中国国際宇宙博覧会」で、中国航天科工集団公司が開発し輸出を狙っているM20短距離弾道ミサイル(射程約280km)が一般公開された
●展示に合わせて映し出されていた合成映像は、同ミサイルが台湾空軍基地に居並ぶF-16戦闘機を破壊する様子を描写していた
●映像では、台湾の2つの基地所属の識別番号が記され、台湾軍の国識別標識のあるF-16にM20ミサイルが命中する
●同博覧会には中国内外の戦闘機やミサイル等が展示され、中国の新指導部を選出した中国共産党大会に合わせて、国威発揚を狙ったものとみられる
●台湾国防省の報道官は「こうした映像は誤解を招き、両岸の人民の感情を損なう」と不快感を表明した
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拡散防止の国際規制であるMTCR(Missile Technology Control Regime:ミサイル技術管理レジーム)により、射程300km以上、搭載能力500kg以上のミサイルは輸出が制限されるため、M20の射程280km、弾頭重量480kgはMTCRの規制を受けない範囲内に抑えられています
M20は、中国軍向けではなく国際市場への売り込みを目指して開発されたミサイルのようです。
M20は飛翔中にコース変更を行う能力を有しています。また打ち上げ後の最大高度は50kmに達し、そこから急角度・高速で目標に降下することとも合わせ、相手側の弾道ミサイル迎撃システムの対処を困難にさせます。
ご紹介した読売の記事だけで断言するつもりはありませんが、もう一度・・・兵器技術の拡散は、戦闘機命派や空母脅威宣伝派が期待する方向だけには進まないのです。
台湾を巡るさまざま
「ミサイル1600発除去が条件」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-19
「米は台湾に最新F-16売却するか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-23
「台湾空軍の苦悩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-14
「米中軍事対話と台湾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-11
「脅威の変化を語らせて」
→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08