2013年版「中国の軍事力」発表

hagelsex.jpg本題の前に、米軍内部の問題
7日、国防省は米軍内で大きな問題となっているレイプ問題に対処する「性的暴力撲滅戦略:Sexual Assault Prevention Strategy」を発表しオバマ大統領も記者会見で「被害者の側に立って取り組む」と語っています。
国防省webサイトは大々的にこれを紹介し、米軍内へのアピールを行っています。
米軍内の風紀の乱れが、予算の強制削減を受け、更なる士気や指揮監督意欲の低下につながらないことを祈るばかりです。
大統領発言→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=119958
対応戦略→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=119961
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本題は「中国の軍事力」レポートです ↓
6日、米国防省が議会に提出することを義務付けけられている中国軍に関する定期レポートが公表されました。「Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China 2013」とのタイトルで、付属資料や図を含め約80ページのレポートです
参考:過去の「中国の軍事力」レポート
「2012年の同レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年の同レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
Chinareport2013.jpg既に日本でも多数報道されていますが、どうしても尖閣問題がらみの「中国主張の領海基線は国際法に合致しない」との指摘や、空母・ステルス戦闘機・潜水艦等の装備品の近代化、更には「軍近代化の不透明さを懸念」といった「枝葉」部分が報道の前面に出ています
(←写真左は発表会見を行うDavid F. Helvey東アジア担当国防次官補代理)
もちろん、「枝葉」の指摘も誤りではありませんが「ゐの一番」に本報告書が何を指摘しているか、議論の基礎や中心をどこに置いているかに十分目が向けられていませんので、その辺りをご紹介したいと思います
Executive Summaryの概要
●中国は継続して包括的な軍事力の近代化を推進しており、その計画の方向は、地域の高列度軍事紛争に短期間で勝利することを意図した軍事力向上である。
●中国軍事投資の第一の焦点が、台湾海峡での潜在的紛争準備であることに変化はないようである。
BMrange.jpg●一方で、中国の利害が国際システムと関係や影響を深めるにつれ、軍事力の近代化は領土保全、海賊対処、平和維持活動、人道支援・災害対処、地域の軍事作戦等を超えたものを目指し、より中国独自の国益、領土主張の強化や海外への影響力構築に向けられている
●中国軍の拡大する役割や任務を支えるため、中国指導部は2012年に以下のような投資を続けている。投資先はA2AD(中国軍では「counter-intervention operations」)を可能ならしめる短距離及び中距離弾道ミサイル、対地及び対艦巡航ミサイル、宇宙兵器、軍事サイバー空間能力に向けられている模様である
●また中国軍は以下の能力向上を継続している。つまり、核抑止や通常兵器による長距離攻撃能力、先進戦闘機、限定的な戦力投射能力(空母1番艦の就航)、統合防空網、水中戦能力、高度な指揮統制、より高度な陸海空軍による訓練や演習である。
包括的で前向きな米中協力関係の枠組みの中で、継続的な米中軍事関係構築を追求し、米国やその同盟国と協力しつつ、中国が国際社会に公共財を提供するよう働き掛けたい
一方で報道(5日読売)がアピールする内容
J-20-1.jpg空母—昨年9月に就航した「遼寧」は、数年間は試験運用が続くが、2015年以降に艦載機を加えた本格運用に。今後10年以内に国産空母開発に成功し、15年以内に複数の空母を運用する
ステルス戦闘機—2018年以降に次世代ステルス機を開発する可能性がある。現在開発中のJ-20やJ-31をベースとしたものである
原子力潜水艦JIN級戦略原潜は現在3隻で、今後10年間で最大8隻となる。射程4000kmのSLBMを搭載することで、史上はじめて海からの核抑止力を得る
対艦弾道ミサイル—米軍空母を攻撃可能なASBMのDF-21Dを既に配備
無人機長距離飛行による偵察や攻撃能力が高まる
サイバー中国軍と政府が、サイバー攻撃や産業スパイなどの「非合法な活動」を支援している
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Summaryが強調する本レポートの「幹」と要注意点
DH-10.jpg●依然として「第一の焦点が台湾海峡での潜在的紛争準備」である。(注:昨年と同じ。この部分が変化した時は要注意)
●台湾だけでなく「中国独自の国益」や「影響力構築」のため、「地域の高列度軍事紛争に短期間で勝利することを意図」していること
●そのために、まず「短距離及び中距離弾道ミサイル、対地及び対艦巡航ミサイル、宇宙兵器、軍事サイバー空間能力」に焦点を当てていること
つまり、一般報道が注目する尖閣がらみ言及や、空母や戦闘機関連の写真入り説明部分は「枝葉」なんです。
多くの西側諸国が依然「呪縛」から逃れられていない、第2次大戦から湾岸戦争当時の戦い方ではなく、ミサイルであり、サイバーであり、宇宙であり、空中戦ではなく、「高列度に短時間で」地上で撃破なんです。
約3MBのレポート現物:その辺りに注意してご覧下さい
→http://www.defense.gov/pubs/2013_China_Report_FINAL.pdf
過去の「中国の軍事力」レポート
「2012年の同レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年の同レポート」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
2013年レポートの目次(右端の数字はページ)
Executive Summary i
Chapter 1: Annual Update 1
Chapter 2: Understanding China’s Strategy 15
Chapter 3: Force Modernization Goals and Trends 29
Chapter 4: Resources for Force Modernization 45
Chapter 5: Force Modernization for a Taiwan Contingency 55
Chapter 6: U.S.-China Military-to-Military Contacts 61
Special Topic: Space-Based Imaging and Remote Sensing 65
Special Topic: China’s First Aircraft Carrier 65 Special Topic: PLA Air Force Stealth Aircraft 66 Special Topic: PLA Integrated Air Defenses 67
Appendix I: Military-to-Military Exchanges 69
Appendix II: China and Taiwan Forces Data 75
Appendix III: Additional Maps and Chart 79

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