中国の無人機作戦を考える

「中国はすでに尖閣諸島の写真撮影に無人機を使っている」
Great-Wall.jpg米国は中国の研究に膨大な資金と人材を投入しており、軍事部門は重要な注目点の一つとなっています。
研究は多様な手法で研究者が競争しており、香港経由等で多量の中国軍テキストや関連論文を収集・翻訳したり、ネット上の情報を丹念に収集整理したり、専門家のネットワークを構築して意見交換や分析討議等々を始め、あらゆるアプローチを試みているようです。
ここで何度か取り上げた米海軍大学ヨシハラ教授もその専門家の一人ですが、本日は26日付WEDGE「世界潮流を読む 岡崎研究所論評集」が紹介している、米海軍大学のErikson氏とStrange氏によるForeign Affairs誌web論文(5月23日付)を取り上げます
また比較のため、3月にご紹介した米シンクタンク「Project 2049」の中国軍UAV研究も復習いたします
米海軍大学のErikson氏とStrange氏は・・
Erickson-china.jpgStrange-china.jpg中国は無人機の開発を進め、現在では280機以上を持っていると見られ、量質とも米国に次ぐ。いま、中国はステルス無人機の開発の最終段階にある。
●中国は、ミャンマーの麻薬取引者のNaw Khamを無人機で殺害することを考えたが、結局は実行しなかった。無人機のシステムや操作に自信がなかったためかもしれない
●中国は、インド、フィリピン、ベトナムとの領土紛争に無人機を使う可能性がある。中国はすでに尖閣諸島の写真撮影に無人機を使っている
●偵察の他に将来新彊やチベットでの抗議デモ、暴力行為の鎮圧に使うかもしれないし、また陸海の領土紛争に使う可能性もあるが、国際世論の反応を考慮してその使用には慎重である
中国指導者が中国の台頭が地域への脅威になるとの懸念を払拭しようと努めている中で、領土紛争への無人機の使用を逆効果だと考えているのかもしれない。実際、中国国防部の最近の公式声明によれば、中国は当面東アジアにおける無人機の使用を偵察に限っているとのことである
ChinaUAV4.jpg中国の学者、研究者は、無人機を国内の監視、法律の施行や中国の国境紛争地帯での非戦闘任務に使うことは議論しているが、海外での無人機による攻撃を公に論じる者はいない
新彊やチベットでのデモや暴力をテロとみなしているので、鎮圧のため無人機を使うかもしれない。使えばイメージ悪化を招くが、中国指導者にとって国内の安定が最優先である
●中国軍内の通信の支援や、敵の電子通信を傍受・かく乱する電子戦使用が考えられるが、全体として慎重である。中国の慎重さを、米国は念頭に置くべき
米研究機関「Project 2049」の中国UAV将来見積
細部は→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-12
China-UAV.jpg●特に、中国から3000km以内での精密誘導攻撃を可能にするUAV機能の将来に注目。狙いは米空母への弾道又は巡航ミサイルでの攻撃であり、中国弾道ミサイル部隊が目標照準用UAVを保有
●また、UAVのステルス製を高め、対空脅威が厳しい環境下での運用にも力点を。更に電子戦用のUAV開発も進んでおり、衛星や早期警戒機やレーダーを妨害するUAV設計を進め、攻撃用UAVとの同時投入も念頭にある模様
短期的には、係争中の領土監視での役割を期待されている。より長期的には、中国軍の西太平洋における偵察・攻撃能力を拡大することにUAVを活用するであろう。ISR無人機と偵察衛星と情報収集艦を組み合わせ、より遠方で敵艦艇を捕捉し追尾できるだろう。
●ネットワーク化されたISRは米海軍にとって大きな懸念。中国軍は、多数で多機能のUAVで紛争時米空母を攻撃しようと考えている。究極の目標は、UAV活動とミサイル攻撃を緊密に連動させ、敵の強固な防衛線を突破し、敵を飽和させる攻撃である
ChinaUAV2.jpg●まず最初に航空攻撃を模擬したおとりUAV攻撃を行い、敵の防空ミサイルを射耗させる。次に一群の電子妨害UAVやレーダー攻撃UAVを投入する。同時または後続として、攻撃UAVが対艦ミサイルや巡航ミサイル発射母機となって攻撃する。
気になる中国指導者の「軍統治」関連で以下の論説が
(→http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2886?page=2
5月15日午前、中国指導部が「過度の反日表現を避ける」よう、メディアに指示を出している。事実、5月15日から日本関連のニュースは、橋下市長の慰安婦関連発言、防衛大綱見直し案など、日本非難報道が展開されそうな内容が多かったのだが、全て淡々と事実を述べるに止まった
●中国政府関係者によれば、この指示が出された理由は二つだ。一つは、日中関係の悪化が中国経済に与えた影響が予想以上に大きかったこと。もう一つは、民衆の現政権に対する不満増大に対する警戒である
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国内法の縛りを盾にして、有人機や戦闘機に固執する利益集団やしがらみがある西側軍と異なり、自由な発想でUAVの特徴を最大限に発揮する構想となっています。
gateChinaDM2.jpgそれにしても、中国指導層と軍の関係が気になります。そして、それよりもっと気になるのが「民意の加熱や暴走」をどこまで管理できるのかです。世界に影響力を持つまでに至った大国が、「風に聞いてくれ」では困ります。
冒頭紹介の「中国はすでに尖閣諸島の写真撮影に無人機を使っている」との指摘(岡崎研究所も追認)も気になります。
真実ならば、日本はこの情報にどう対応しようとしているのか、無視しているのか、隠しているのか・・・プレスの方の頑張りどころでは?
ヨシハラ教授関連の記事
「中国軍を語るヨシハラ教授」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-03-1
「Toshi Yoshihara博士の来日」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-29
「米海軍は日本から豪へ移動」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2

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