25日付Defense-Newsが、米陸軍を中心として「Counter-WMD」部隊の増強や能力向上の検討が開始されていると報じています。
部隊の性質上、公開されている情報は少なく、記事もはっきりしない部分が多いのですが、北朝鮮やイラン等で事が起こったときに重要な役割を担う部隊ですが、なんと言ってもシリアの膨大な化学兵器も喫緊の課題に浮上し、注目が集まっているようです
ただ、記事が使用する「Counter-WMD」部隊の任務や役割は明確ではありません。記事の印象では、WMDで攻撃を受けた際の対処だけでなく、敵のWMDを特殊部隊と協力して確保して無効化する、又はテロ組織に奪われないようにする等の任務も重要で現実的な任務として想定されている模様です
25日付Defense-Newsは・・・
●最近の「Unified Quest」演習の結果、「Counter-WMD」部隊の海外派遣が種々の問題を抱えていることが明らかにあり、米陸軍の当該22個大隊(現役5個、17個が予備役等)の能力と規模拡大が検討されるようになった。
●従来イメージされてきた地上部隊が敵地で発見した化学兵器を単に処理する事だけでなく、より能動的に行動することが念頭にある
●米陸軍の教育訓練コマンド(TRADOC)が、同部隊にどのような能力と規模が必要かを検討している模様だが、細部の質問に対する回答は得られなかった。検討状況はカーター国防副長官にも報告され、指示を受けているようだ。
●過去12年間のCOIN任務ではほとんど出番がなかった「Counter-WMD」部隊だが、イラク戦争直後にイラクの化学兵器捜索があったように、不安定なシリア、北朝鮮やパキスタン情勢を受け、政策担当者の注目を集めるようになってきた
米陸軍のUSANCA関係者は・・・
●米陸軍のUSANCA(Nuclear and Combating WMD Agency)長官は、「陸軍は展開可能な小規模の対処部隊を保有し、地域コマンドや統合部隊を支援する態勢にある。また小規模ながら核兵器使用に関する高練度の支援要員も保有している」と述べたが、「現在の焦点は、WMDの使用を阻止する事に向かいつつある」とも語っている。
●同長官は、イラク戦争開戦直前に化学兵器対処のチームを緊急に編成し、必要な装備をかき集めて送り込んだ苦労など、これまでの長い(苦難の)道のりを振り返りつつ、「Counter-WMD」部隊が国家防衛戦略に組み込まれつつあることを喜んでいる
●USANCAは、最近数ヶ月の間に世界各地に関連部隊を展開させ、訓練を行ったりしており、本分野への関心の高まりが見られる
●シリア問題に関する上院軍事委員会で、デンプシー議長が軍事オプションに関してシリアの膨大な化学兵器にも触れ、「数千人の特殊部隊と他の地上部隊よる作戦で緊要な地点を制圧する必要がある」と語っている
シリアの隣国ヨルダンや韓国では
●米軍は今年に入り、シリアの隣国ヨルダンに約100名の兵士を派遣し、シリアの混乱が拡大した際の対処について助言や訓練を行っている。小規模な派遣は昨年から始まっており、シリアの化学兵器対処支援も訓練に含まれている。
●ヘーゲル国防長官も議会で、「シリア国境を化学兵器が通過しないようにするため、ヨルダン当局の化学兵器探知能力や対処力向上に約70億円を支出している」と説明している
●このような動きは中東に限らず、昨年9月には米陸軍の化学大隊が米本土から韓国に移転している。2004年に一度撤退した化学部隊が、再び派遣され事になる。アジアリバランスの一環でもある。
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「化学兵器を単に処理する事だけでなく、より能動的に行動することが念頭に」
「現在の焦点は、WMDの使用を阻止する事に向かいつつある」
この2つの表現が示す「Counter-WMD」部隊の役割とは、どのようなものでしょうか? WMD拡散を完全に阻止できない以上、このようなニーズはますます増えるのでしょう。
ちなみに「Unified Quest」演習とは、米陸軍が将来の課題への机上検討を元に、その有効性等を確認する実験演習のような正確を持つWARゲームだそうです。