米軍が地域コマンド再編成へ!?

Major Command.jpg11日付Defense-Newsが「情報筋」の話として、米軍地域コマンドの再編成に関する検討が進んでいる様子を報じています。
1940年代後半に遡る地域コマンドの歴史を振り返れば、これまでも柔軟に数年に一度再編が行われてきたようですが、今回の再編検討の背景には、地域情勢にあった任務分担の再検討以外にも、SCMRで示された、予算強制削減対応のスタッフ機能や人員の削減が念頭にあるようです
7月31日のSCMR発表会見で長官は、「地域コマンドの統合、国防省関連機関の削減、ITシステムの統合」で前線以外の業務の効率化を推進して経費を削減したいと強調してます。
一方で長官は「国防組織の官僚組織化による弊害はよく指摘されるが、これら組織が複雑化する前線部隊の任務遂行を支えている実態もあり、その変更には更なる分析や検討が必要」とも述べ、今後検討を実施すると語っていたところです。
ちなみに現在米軍は、全世界を6つの地域コマンドに分割して軍事作戦を担当させています。太平洋軍、中央軍、欧州軍、アフリカ軍、北米軍と南米軍の6つです
「情報筋」による再編案とは・・・
北米軍と南米軍を統合してアメリカ軍や西方軍へ
—米国防政策で最も無視されてきた中米や南米政策を、北米軍の資源も投入して一元的に管轄する方がよりベターである。
—特に同地域の麻薬取引問題を考えるとき、北米と中米・南米間の麻薬取引対処を別々のコマンドで行うより、一つのコマンドで対応した方が有効
アフリカ軍を廃止して欧州軍に吸収、「アフリカの角」部分のみ中央軍へ
ward-africa.jpgアフリカ軍は2008年に当時のラムズフェルド長官によって設置が決定されたが、その有効性については特に地域研究者の中で継続的に議論されている
—実際問題として、2011年に発生したリビア内乱やマリで実施中の対テロ作戦等を考えれば、アフリカ軍の解体は今時の再編に含まれない模様である
—-初代アフリカ軍司令官のWard退役大将は「アフリカの国々を複数のコマンドで分割担当することは、我が国にとっても、パートナー国にとっても最適なことではない」、また「アフリカ軍の視点の重要性は、地域の重要性から依然重要だ」とアフリカ軍存在の必要性を語っている
アフガンとパキスタンを、中央軍から太平洋軍へ移管
—現在中央軍担当地域にあるアフガンとパキスタンの問題は、外交、経済や貿易の問題まで含め、太平洋軍担当のインドと密接に関係している。インド担当者は、アフガンとパキスタンを含めた地域情勢全体を把握していないと良い仕事は出来ない。
—またアフガンで問題になる暴力事案は、そのほとんどがパキスタン国境で発生しており、この2国も切り離して考えにくい
—これらを総合すると、一案として、アフガンとパキスタンを中央軍から太平洋軍担当域内に含めることも考えられる。
司令部スタッフの2割削減対処に
JFC-past.jpg—2011年に米軍は効率化のため「Joint Forces Command」を廃止したが、3000人のほとんどの職務やポストは統合参謀本部に吸収されている。
—6つに地域コマンド司令部の規模は、2010年から12年にかけての僅か2年間で7%(約1000名)も増加しており、経費削減の中で大きな問題となっている
—従って、ヘーゲル長官が7月31日のSCMR会見で述べた全レベルの司令部スタッフの2割削減を成し遂げるには、コマンド数の削減を検討せざるを得ない
地域コマンド司令官の呼称再検討
—地域コマンド司令官の重要な任務は地域の関係国との関係強化だが、「combatant commander」との名称を聞いた関係国の指導者は、「戦争の話をしたいのではない。ただ話がしたいのだ」との「反応を示すことが多
—「combatant commander」との呼称が使用され始めた2002年以前は、「commander in chief, or CINC」との呼称が使われていた。「unified commander」等々の、地域の関係国と共に何かを行うイメージにあった呼称が必要だとの意見がある。
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
Asia Pacific.jpgあくまでも「情報筋」の話で、国防省関係者は一切のコメントを避けています。ただ、米軍の抱える地域の多様な課題を概観する題材として、非常に興味深い話題です。
アフガン、パキスタン、インドの一体議論」も「経済発展著しいアフリカ諸国への対応」も米国にとっては国益上重要な事でしょうし、「南北アメリカ大陸間の麻薬取引」も深刻な「今そこにある危機」です。
これにイラン問題や北極圏を巡る利害の衝突を加え、シリアを横目で見ながら中国と向き合う事が、今と将来の米国にどこまで可能なのでしょうか???
オバマ大統領の白髪の量が増えるのも納得の世界情勢でした。

タイトルとURLをコピーしました