カンボジアの「タケオ」を覚えていますか?
1992年に国際平和協力法が制定、同年9月、自衛隊による初の国連PKOとして陸上自衛隊の施設部隊が国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)の旗の下に派遣されて活動を開始しました。
その際、陸自の施設部隊が拠点としたのが「タケオ」県(州?)です。
初めてのPKO派遣でもあり、日本国内は大騒ぎだったのですが、国連旗と日の丸を掲げたUNTAC日本施設部隊は、その秩序正しい振る舞いと仕事の確かさで高い評価を得、国内の反対勢力を黙らせました
そんなタケオで、米太平洋軍が主導し、対象国政府やNGO団体などが協力する形式で人道支援活動や医療支援等を行う「Pacific Angel 13-5」が行われました。「13-5」とは今年5回目のPacific Angel活動であることを示しており、既に4度インドネシア、フィリピン、スリランカ及びベトナムで同様の活動を行っているようです。
今回カンボジアのタケオでは、米太平洋軍に所属する沖縄の施設部隊とカンボジア軍施設部隊が、3箇所の医療施設(health center)の修理・改装を行っています。
米空軍web記事によれば
●9月9日から14日にかけ、米軍とカンボジア軍がチームを組んで「Operation Pacific Angel 13-5」を実施し、米軍からは16名の施設部隊兵士が、カンボジア軍からは20名の兵士が作戦に参加した。
●嘉手納基地所属の米空軍第18施設隊が本作戦の計画担当者として活動をリードし、同地の米国大使館や民間団体との協議をの協議を経て、3つの医療施設(RominhとNhaeng NhangとTram Kok)の作業を行った。
●通常この種の活動は3回事前確認や会議を行って準備を整えるが、予算の都合で1回しか出来なかった。担当のKowaleski上等軍曹はその1回を最大限に活用し、施設の医者等からニーズを確認して補修パッケージを確定した
●特に、現地業者に事前作業を依頼する部分を見極め、費用対効果を追求した計画に努めるとともに、作戦が期間内に終了するよう配慮した
●米軍チームの指揮官である中佐は、「カンボジア政府の招待により、カンボジア軍と共同で作業を遂行する事が出来て光栄だ」と述べ、「この作戦を通じ、両国関係者が共に学び、CIMIC(軍民協力)が前進することを希望する」と語った
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Pacific Angelは、CIMIC(軍民協力:civil-military cooperation)の典型的な活動で、米軍のアジア太平洋戦略の柱である「地域国の能力構築支援」の一部だと思います。PKOから能力構築支援への変化を象徴する活動とも見ることが出来ます
米軍の参加者16名(沖縄海兵隊員も含む)という規模からすると、「小さな事からこつこつと」そのものの活動です。頭が下がります
でもカンボジアPKOから20年以上が経過しても、このような支援活動に頼らなければならないのが現地の現状なのでしょう。
PKO活動当時、陸上自衛隊の隊員とタケオの女性が結婚したとの話題を耳にしましたが、その後どうなっているのでしょうか? お幸せであることを祈ります・・・
ところで・・・エドワード・ルトワックの思想
(中公新書「戦略論の名著」等より)
●戦争は平和をもたらす方法であり、戦争は戦争に必要な資源を焼き尽くす事によって平和な状態をもたらす。戦争は、物質的なモノだけでなく、戦争を行おうとする人間の心や精神、つまり、野心や期待をも打ち砕く
●外部からの干渉による平和維持活動、民族紛争に対する仲介、長期にわたる支援は、戦争から平和への変化を妨げている
●仮に欧州の形成過程で平和維持活動や国連の仲裁やPKOが行われていたら、今のヨーロッパは難民キャンプやテント村で埋め尽くされ、国連部隊が多数展開する有様だろう。