なぜ露はシリア攻撃に反対するのか?

Nagoshi2.jpg週刊文春19日号の『THIS WEEK 国際』に、名越健郎・拓大教授による「プーチンはなぜシリア攻撃に反対するのか?」との論考が掲載され、なぜロシアがこれほど米国主導のシリア攻撃に反対し、アサド独裁政権に固執するのかについて「5つの理由」で説明しています。
ロシアは常に米国の軍事行動に反対するからなぁ・・とあまり良く考えもしなかったのですが、通信社で長年ロシアを見てきた名越氏による解説は、短節に分かりやすくポイントを整理していますのでご紹介します
なお名越健郎教授は、1953年生まれ。東京外大露語科卒業。時事通信社入社。バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局長、モスクワ支局長、外信部長等々を経て、2012年から拓殖大学海外事情研究所教授です。ロシアに関する著書も複数
5つの視点で解説:なぜ露はシリア攻撃に反対?
ロシアでのG20首脳会議で議長を務めたプーチン大統領は、夕食会をシリア問題にあて、多くの首脳に軍事介入反対論を発言させてオバマ大統領に恥をかかせた。両者は元来合わないが、これで関係修復は不可能だろう。なぜロシアはこれほどアサド独裁政権に固執するのだろうか。
Nagoshi.jpg第一にメンツの問題。2011年のリビア内戦でメドベージェフ大統領(当時)は国際社会の説得を受け、国連安保理の限定的なリビア制裁決議の採決を棄権して成立させた。だが欧米はリビア全面空爆を敢行し、カダフィ大佐は死亡。プーチン首相(当時)は決議を「中世の十字軍だ」と批判し、メドベージェフ外交までも槍玉に挙げた。
第二に「アラブの春」に終止符を打ちたい思惑だ。デモによる政権転覆を放置すれば、民主化機運がやがてロシアに及びかねないとの危惧がある。
第三にシリアのタルトゥース港は小さいながら、旧ソ連時代から残るロシア最後の国外海軍基地。海軍力増強を図るロシア軍は「地中海作戦司令部」を設置する方針で、同港を地中海戦略の拠点にしようとしている。ロシアにとってシリアは中東最後の砦だ
第四にシリアはロシア製兵器のお得意様だ。2011年に内戦が始まって以降、ロシアは対艦ミサイルや攻撃ヘリなど数十億ドルの兵器を供与したが、支払いは長期返済。アサド政権が倒れれば、後継政権は支払わず、膨大な債務が踏み倒される恐れがある。
RussiaPutin.jpg第五にシリア反政府勢力内に国際テロ組織アルカイダが浸透していることだ。アルカイダはかつて、アフガンからチェチェンの独立派武装勢力と連携し、無差別テロを支援した。シリアやヨルダンにはチェチェン人が多数居住するため、不安定なカフカス地方にイスラム原理主義が波及することをロシアは憂慮している。
名越教授は更に
●米国は「シリア反政府勢力にアルカイダはいない」(ケリー国務長官)としている。だが、もしアルカイダの活動が確認されれば、逆に米露の一定の歩み寄りもあり得る。シリア情勢は、国際社会のパワーバランスを一変させかねないのである。
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「メンツの問題」と「債務踏み倒され懸念」と「タルトゥース港死守」はさておき、「アラブの春に終止符希望」や「アルカイダ懸念」については、米国や米国を支持する関係国も本音では理解できる部分かもしれません。
democracy-Ezypt.jpgでも米国によるシリア攻撃の戦略的目的はあやふやであり、米露の議論は、「罪なきシリア国民の保護」等のマスコミを賑わす観点とは異なる要因により、「落としどころ」に向かうのでしょう。
それにしても「アラブの春」には困ったものです。
また、「アラブの春」を促進した「スマホ」にも困ったものです。あの複雑で分かりにくい料金体系や、青少年から大人までを「中毒」にする麻薬性等々、規制を考えても良いのでは・・・と思います。
↑    ↑    ↑    ↑ イラスト絵は、ワシントンポストに掲載されたエジプトでの「アラブの春」を風刺するもの。エジプト市民が「エジプトの民主主義」なる資料を倉庫から取り出して見てみると、使用手引書が古代のヒエログリフで書かれていて解読できないようす。
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「攻撃計画を匿名幹部が語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-09
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「対シリア:化学兵器無効化兵器」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-31
「シリア防空力はリビアの5倍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-03-10

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