米国がエジプトへの軍事援助一時停止

Egypt-al-Sissi3.jpg9日、米国務省と国防省関係者が、エジプトへの戦車や戦闘機や攻撃ヘリの引き渡しと約260億円の軍事援助を一時停止(withhold)したと述べました。9日付Defense-Newsによれば、8日夜に本情報がリークされたため、慌てて政府が発表したとのこと
本件は、「選挙で選ばれた」モルシ前エジプト大統領が軍により追放され、軍が政権を掌握する事態になった7月以降の状態を、米国政府が「クーデター」と認めるか等の「核心」に関わることもあり、数ヶ月にわたって内部議論が続いていたようです
依然、エジプト軍事政権の扱いは「玉虫色」のようですが、米軍事援助は「とりあえず当面停止」になるようです
9日付Defense-Newsによれば・・・
SASCApril.jpg軍事援助の一時停止は数週間前に決まっていたようだが、シリア情勢への対応で実行が遅れていたようだ。
9日午後、ヘーゲル国防長官がエジプト軍トップのAbdel Fatah al-Sissi将軍に電話し、米国の決定が伝えられた。政府関係者は、電話会談は丁寧でフレンドリーなモノだったと語っている。具体的には、F-16、アパッチ攻撃ヘリ、ハプーン対艦ミサイル、M1A1戦車の提供が停止された
●政府高官は報道陣に対し「これは恒久的な提供停止ではない。継続的に見直されるモノで、今時は本夏の状況から判断された。両国が協議している一定の成果が見られるまでの措置である」と語った
●8月にオバマ政権は、F-16戦闘機4機の出荷を停止し、攻撃ヘリ10機と戦車125台について検討中と説明していたモノである
国防省は各装備の製造企業に対し、引き続き契約に基づいた経費を支払うことになっており、製造されたり調達した部品は各企業で保管されることになる
対テロに関する軍事援助や現にエジプト軍が保有する装備の部品提供も引き続き行われる
民主党のPatrick Leahy議員(法制と予算配分委員会)はこの決定を厳しく非難しており、「オバマ政権は、一部を止め、一部を生かすことにより、混乱したメッセージをエジプトに発している。米国の法律は明確だ。軍事クーデターの場合には米国の援助は停止である」と訴えている
Egypt-al-Sissi.jpg●エジプトは米国からの軍事援助を既に十分なほど受けている。既に1000両以上の戦車と224機のF-16戦闘機、アパッチヘリ、数千の装甲車、ミサイルや通信装置等々も提供されている
●しかし、エジプト軍の貧弱な兵站組織と整備能力により、多くの装備品関連作業は米企業が行っている実態がある。例えば2012年に、General Dynamicsはカイロの戦車組立て工場での技術支援を約50億円で請け負っている
●「米国からはエジプト政府にこうするべきだと伝えており、エジプト側は聞いている。しかし重要なのは実際に実行されることだ」と米政府高官は述べている
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
米国はエジプトに対し、イスラエルとの和平交渉が結ばれて以降、30年以上にわたり影響力行使のため軍事援助を続けています
しかし、選挙で選ばれたモルシ前大統領は、米国内で「米国を同盟国と呼ばない」大統領として問題視されていたところでした。
obama.jpg米国予算を巡る国内問題で、外国や海外問題に目を向ける余裕がないと見られている米国政府ですが、中間選挙を前にした段階で早くも「レイム・ダック」との表現が各種論評に見られるようになりました。
強制削減対処→年度予算不成立対処→更に債務不履行対処・・判っているのに深みに落ち込んでいく米国です
経済の相互依存が進んでいるから、大規模な軍事衝突は想定しがたい時代になった」と言う方がいらっしゃいますし、勿論そうとも言えましょう。
しかし、判っていても感情で突き進むのが人間の性ですから・・・頭に置いておきましょう。

タイトルとURLをコピーしました