米空軍:グアム島への戦力増強構想など

Guam AF.jpg12月号の米空軍協会機関誌が「The Growth at Guam:グアムの成長」との記事を掲載し、米軍のアジア太平洋リバランスの鍵の一つである、グアム島をはじめとするマリアナ諸島の活用について紹介しています。
作戦拠点が少ない西太平洋地域にあって、「外国政府との交渉」を必要としない唯一の基地として、中国のミサイル脅威を踏まえつつ、その利用を検討しているようです。
グアム島には現在のローテーションからより固定的な戦力配置を、テニアンは代替飛行場や訓練施設として、サイパンは代替飛行場や燃料の貯蔵場所候補として考えられているようです
グアムについて記事は・・・
Andersen AFB2.jpg●グアム島の第36航空団は緊急展開飛行部隊の受け入れを任務として編成されており、恒久的に配備された航空機を持たない。しかし、2004年に北朝鮮情勢が緊迫した際、爆撃機の短期ローテーション配備が始まった
●最近では、B-52やB-2爆撃機がグアム島へのCBP(continuous bomber presence)を行い、同盟国等との関係強化や訓練、また米国の地域での決意を示す役割を果たしている
太平洋空軍司令官のカーライル大将は「爆撃機のローテーション派遣は継続するが、太平洋空軍は短期的な展開に変わる手段として、保有戦力をリバランスしてもう少し滞在を延ばす、2~3年グアムに滞在するオプションも考えている」と語った
ローテーション派遣については、他の基地への派遣も合わせ、拡大していく事も検討している模様である。
Andersen AFB.jpg●また同司令官は「これ以上太平洋地域で新たな基地を作るつもりはなく、冷戦期に欧州で行われていたCheckered Flag演習のような形式で、1年半から2年毎に全ての部隊が関連する作戦基地に展開するようにし、最も優れたアセットが太平洋域にローテーション派遣されるような方式を考えている」とも語った
ISRアセットのグローバルホークは引き続きグアム基地に存続し、「最新で最高の能力を持つアセットが太平洋地域に投入される」とも語った
テニアン島では・・・
●テニアン島を管轄する北マリアナ地方政府は、米国防省に対しリースしている島の土地(15,353エーカー)を、もっと訓練等に活用してほしいとかねてより要望している
●2013年のCope Northグアムでは、米豪日がテニアンに人道支援や災害対処用の拠点を緊急構築する訓練を行った。グアムとハブとし、テニアンを小基地のようにして訓練環境を試験した
●第36航空団の報道官は「複数国が参加する中で、緊急展開や補給物資供給の相互運用性を高める訓練を行っていきたい」と語り、2014年もテニアンを拠点とした訓練を実施すると述べた
サイパン島については
●米空軍はサイパン島を、代替基地や展開飛行場として使用できればよいと考えている。これにより、攻撃でグアム飛行場を無効化する試みを、より困難にしたいとの思惑からである
米空軍は2012年に北マリアナの調査を実施したが、上記構想実行のためのは、米軍はサイパンから追加で土地を購入する必要がある。
サイパンの利点は、港湾施設が利用でき船舶で航空燃料を持ち込める点にもある。グアムは米空軍内でも最大規模の燃料貯蔵施設があるが、緊急事態時には大量に燃料を消費すると予想されるからである
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冷戦期に欧州で行われていたCheckered Flag演習」について承知していないのですが、空軍内でも余り経費のかからない「プレゼンス強化」を考えているようです
B-52爆撃機が、グアムから中国への事前通告無しで「中国の防空識別圏」を飛行したとの報道がありましたが、一般市民向けのプレゼンスとしては効果大です
しかし、中国に対するというよりも、同盟国に対して「米国が及び腰ではない」ことをアピールすることに必死なような気がして成りません。どんなコースをB-52が飛行したかが明らかになっていませんが、非常に気になるところです・・・
Guam AF2.jpgまたグアム島などの強化は、中国の弾道ミサイルや巡航ミサイル(爆撃機から発射型)攻撃による被害発生への備えとしての取り組みです
何度も何度も申し上げているのですが、中国A2AD対処において、自身の強靱性を高めることは極めて重要な一側面です。
しかし、中国から3000km離れたグアムが懸命に取り組んでいる中、日本はどうするのでしょうか。沖縄の嘉手納基地が「強靱性」強化を必死でやっているとは聞きません。航空機の避難訓練はやっているようですが・・・。強靱化しても航空機運用に必要なインフラ維持は、中国に近すぎて無駄だと考えているのでしょう
「たぶん嘉手納からの避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-23-1
この割り切りは日本にも必要です。そしてその割り切りが出来たとき、自然と戦闘機偏重から離脱でき、戦闘機数の縛りから解放され、より効率的で抑止効果の高い防衛力整備の方向性議論が可能になると思うのですが・・・
グアム等の強靱性強化策
「グアムの強靱性強化策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-30-1
テニアンで作戦準備」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-05
「グアムで大量死傷者訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-08-1
「米と豪が被害想定演習を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-02
「グアム基地を強固に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-12
「Wake島へ避難訓練」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-04-1

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