ヘーゲル長官が国防省北極戦略を発表

Arctic.jpg22日、ヘーゲル国防長官はカナダのHalifaxで開催の国際安全保障会議(Halifax International Security Forum)で講演し、2013年5月にオバマ大統領が発表した「国家北極戦略」を受け、国防省として「Arctic strategy」を発表しました
急激な北極海の氷解で環境が急変し、その中でロシアや中国が活動を活発化していることもあり、対応を急ぐ必要があるでしょう。
戦略では方向性を8つの方針「8-point approach」として示しており、厳しい財政状況の中でも急速な環境の変化に対応すべく考えが示されているようです
関連文書へのアクセスはこの記事から
→http://www.airforcemag.com/DRArchive/Pages/2013/November%202013/November%2026%202013/Pentagon-Issues-First-Arctic-Strategy.aspx
先日ご紹介した「米海軍が北極戦略を改定中」との関係は不明ですが、国防省レベルの戦略決定を受け、各軍種類レベルでも下部戦略を見直しているのかもしれません22日付国防省web記事から、米国防省の「情勢認識」と「8-point approach」ご紹介します
米国防省の情勢認識
Arctic2.jpg●エネルギー要求の増加により、世界は北極を含む新たなフロンティアを注視している。また温暖化により北極は、凍った砂漠から航行可能な海へ、そして未知の人類活動の増加を招くだろう。本年の北極ルートの航海は、昨年の10倍になるとの見積もりもある
●今後は観光、商業航海、漁業活動、エネルギー開発の急増が、北極海周辺8カ国に特に影響を与えるだろう(Canada, Denmark, Finland, Iceland, Norway, Russia and Sweden and USA) 
●米国の「国家北極戦略」は、平和、安定、紛争回避を基礎としており、米国防省の北極戦略の重視する8項目は、国家戦略を支え、北極が紛争ない状態で維持されるよう国家間の強調と協力を重視している
人類の歴史は、新たなフロンティアの発見がその後の紛争を招くことを示しており、歴史は消すことが出来ない。しかし歴史を繰り返さないようすることは出来る
●北極探検を行ったクックの言葉を借りれば「価値ある人間の行いとは、唯一人間が努力する価値を見出せるのは、人類の利益となることである
●本戦略は長期にわたる努力方針を示すもので、数週間で展開できるものではなく、数年数十年を要するものである
「Arctic strategy」8つの方針事項
Arctic-Canada.jpg●引き続き米国の主権をアラスカ周辺で行使し、米国への脅威を「detect, deter, prevent and defeat」する
アラスカ州や沿岸警備隊を含む官民組織と協力し、北極海への理解と認識を深め、安全にかつ効果的に活動可能にする。
北極海への取り組みは、コロンブスやマゼラン時代以来の海洋フロンティア開拓と位置づけられる。正確な状況把握、地図、大気現象把握、海洋学、氷解状態等の把握が重要」
●現存国際法の枠組み内で、地域全体の海洋の自由の維持を助長
●自然環境の変化を慎重に見極め、米国の域内インフラと能力の伸長を慎重に行
●現存する同盟国や友好国との取り決めを遵守しつつ、新たな協力への道筋を追及する
「当地域での多国間訓練を活用して寒冷地域での運用経験を増やし、また北極周辺国との軍事協力を強化する。これにはロシアを含む。米とカナダは、ロシアと北極海における利害を共有しており、軍隊間の協力を追及し、透明性確保を推進する
人的及び自然災害の両方に備える
「米国の支援は、アラスカ住民だけでなく、同盟国や友好国と協力して人道支援と災害対処を行うことにより(広く供される)」
「国際的な捜索救助ミッションや災害対処に現有の能力を投入する。カナダとは人命に関わる緊急出動で緊密に協力する」
Arctic.jpg●北極の自然環境を一体的に保護するため、関係機関や関係国、アラスカ住民と協力する
●地域の協力関係や法治システムを推進する「Arctic Council」や他の国際機関の活動を支援する
「国務省と協力し、Arctic Security Forces Roundtable等の取り組みを推進して紛争のリスクを低減する」
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北極海に臨む8カ国だけで「話を進めます」との雰囲気が漂ってきますが、中国も淡々と北極海進出を狙っていますので要注意です。
具体的な軍事的な投資について匂わせる記述が薄く、捜索救助に関し「現有の能力を投入」とわざわざ言及する念の入れようです。
国家戦略から1年半以上経過しての国防省戦略ですが、アジアや中東と同じく「同盟国やパートナー国と緊密に連携し」が戦略の中心となる省エネ戦略です
ロシアが高飛車に出てきそうですので、今後に注目です
「米海軍が北極戦略改定中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-20
国防省高官が北極戦略を語る
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=120001

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