23日、中国国防省が防空識別圏を発表しました。
中国国防省のYang Yujun報道官が会見を行い、質疑応答を行っています。
その際の発言概要は・・
●防空識別圏の設定は国際慣習に沿ったモノ。国家の主権、領土・領空、飛行秩序を維持するためのモノであり、特定の国や目的を対象にしたモノではない
●1950年代以降、既に20ヶ国以上の主要国や中国近隣国が識別圏ADIZを設定している。国連憲章や関連国際法や慣習に沿って中国として定めたモノ。
●ADIZの東端でも中国本土に近く、作戦機は短時間で中国領土に到達可能である。中国が航空機の識別や意図確認を行うに必要な距離を確保するための早期警戒ゾーンがADIZである。
●(なぜある国の領土から僅か130kmの位置にADIZを引いたのか、との問いに対し、)ある国(注:日本のこと)が1969年に定めたADIZは、中国本土から最短130kmの位置を通過している。
●飛行の安全を共に確保するため、関係国には中国が発表した防空識別圏のルールに従って行動するよう希望する。中国側は国際法に従って航空通過の自由を尊重してきた。ADIZの設置は関係空域の法的な性格を変更するモノではない。
●国際線を飛行する旅客機の識別圏内の飛行については、これまでと変更はない。
●他のエリアにおいても、必要な準備が整った後、防空識別圏ADIZを設置する
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←左図は「海国防衛ジャーナル」から引用拝借
防空識別圏ADIZは、各国が自国の領土・領空防衛のため、隣接国との距離や地理的特性に応じて自己都合で設ける(宣言する)ものです。よってこの空域への出入りは、国際法上、不法行為にはなりません。
しかし、国際社会では相互に各国の領土・領空防衛の必要性や重要性を理解し、各国が宣言するADIZを尊重し、事前の飛行計画の通報や各国の要望に応じた対応を行います。
つまり一方的な措置ながら、暗黙の了解でお互い便宜を図りあう「相互互助」の精神で成り立っているのがADIZです。
ですから、一般的には隣国の領土領空や隣国の防空識別圏との吻合を図る意味で、隣国の領土や防空識別圏と大きく重複させることは有りあえません。
特に日本など極東の防空識別圏は、「先の大戦」後、米軍によって「勢いで」定められ、それをそのまま踏襲しているものです。
北方領土付近には旧ソ連への配慮があるようにも見えますが、後の部分は文句を言う国もなく、恐らく当時の対空監視レーダーや要撃機の能力から「ざっくり」決まったものと思われます。
しかし今回の中国の防空識別圏のように、尖閣を含めるような行為は明らかに「相互互助」精神からではなく、敵対的な意志を明確にしたモノであり、これへの対応は通常の防空識別圏への対応とは全く異なる「答えのない・手探り」の対応となります。
ヘーゲル国防長官が直ちに「米国はこれまでの行動を一切変えない」と発表したのは、こう宣言することで米国の対応や意図を明確にし、少なくとも誤解や誤認識から生じるリスクを低減したいとの「思惑」からだと考えられます
ヘーゲル長官発表
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=121223
日本の対応は難しくなります。
中国が、日本と米国の「引き離し」を意図するならば、日本と米国への対応を区別して差別化することが予想され、仮に日本が米国と同じ「これまでの行動を一切変更しない」立場を取った場合、中国の出方が異なる可能性があります
しかし、日本が最初から中国の「言いなり」に成るわけにも行かず、逆に「突っ張って」緊張をエスカレートさせたくもなく・・・中国が求める「4つの識別手段」への対応など、しばらくは緊迫した対応が予想されます
「4つの識別手段」
1. Flight plan identification
2. Radio identification
3. Transponder identification
4. Logo identification