「アジア回帰に関わらず(中国に)弾き出されないか懸念している」
14日付Defense-Newsは、米国防省の技術開発機関であるDARPAの長官が、アジア回帰と対中国に関連して「対艦ミサイル」の開発に焦点を当てていると語ったと報じています。
中国が対艦弾道ミサイル(DF-21D)や巡航ミサイル開発(CH-10やDH-10等)を精力的に進める中、先日ご紹介した国防省のエアシーバトル検討室の重視事項10個の中にも「艦対艦」能力の向上が含まれていたところです
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
DARPAの女性長官は空対艦や艦対艦ミサイルの開発強化について語り、更に記事は議会調査局(CRS)のレポートを引用して中国ミサイルへの電子妨害の有効性を示唆しています。
長距離対艦ミサイルについて
●Arati Prabhakar長官は「Defense One website」主催の軍事問題検討会の開会に当たって講演し、「中国が独自に開発中の長距離攻撃兵器に対応するため、我々の長距離対艦ミサイルに注目している。アジア回帰にもかかわらず、(中国に)弾き出されないか懸念しているのだ」と語った
●またDARPA長官は、敵によるGPS妨害に対処する観点から、LRASMの自立誘導装置は必要不可欠だと語った
●DARPA担当責任者は、8月に試作品が発射試験に成功したLRASM(Long Range Anti-Ship Missile)について「海軍と空軍に次世代の対艦能力を付与するという点で極めて重要なステップだ」と語っていた
●先週、下院軍事委員会のRandy Forbes即応体制小委員長は「中国が開発した空母キラーと呼ばれる対艦弾道ミサイルDF-21Dにより、我々は現時点で弾き出されている」、「我々のハプーンミサイルは、中国海軍の脅威に対応した射程距離を持っておらず、我の生存性が確保できない」とweb上で語っている
●一方で議会調査局(CRS)による春のレポートは、中国の対艦ミサイルは一部の専門家が恐れるほど脅威ではないと分析している。
●CRSは「active and passive」手法を組み合わせることで海空軍は対応できると述べ、一例として、米海軍艦艇に電子戦システムを装備させることで中国ミサイルの終末誘導を混乱させ対処できると推奨している
宇宙アセットについてDARPA長官は
●予算削減とコスト削減要求が強まる中、宇宙アセットの開発が大きな困難に直面している。宇宙に関しては、全てが困難で全てに時間が必要であり、小さな衛星一つにも数十億円が必要だ
●もし強制削減を議会が回避できなければ、将来の装備は実物でなく、紙の上の想像図で終わってしまう
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本当に「米海軍艦艇に電子戦システムを装備させることで」解決するなら結構なことですが、艦艇乗組員はとてもそれだけじゃ信じられないでしょう。
米軍内でも、ようやく空中戦がメインとならない「将来戦の様相」や「脅威の変化」に目が向いてきたとも言えましょう
LRASMが2度目の試験成功
●14日のLockheed Martin発表によれば、11日の週初めにB-1爆撃機からのLRASM発射試験(2回目)が成功した
●LRASMはステルス性を持つ長距離ミサイルで、移動中の船舶を模擬したターゲットを標的にして実験が行われた
●ミサイル発射後、B-1から目標情報の更新をデータリンクを通じて行い、最終的には自立航法に切り替え、ミサイル自らが目標を照合して予定ポイントに命中した
LRASMはJASSM(Joint Air-to-Surface Standoff Missile)を改良したミサイルですが、2009年に開始された開発が順調そうで何よりです。本家からの分家で開発費もミニマムで済んでいるようです。
艦対艦ミサイル「Harpoon」の後継に関しては、記事に明確な記述はありませんでした
関連の過去記事
「ASB検討室の重視10項」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-04
「新対艦ミサイルLRASM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19