14日から15日にかけ、台北で世界有数の中国軍事戦力に関する研究会が開催されました。
主催の台湾研究機関CAPS(Chinese Council on Advanced Policy Studies)ほか、米国から国防大学、米海軍大学、RAND研究所、ヘリテージ財団、ジョージアタウン大学、更に現地の米大使館のような役割機能を持つAITから、政務セクション長、陸軍と空軍代表、安保セクション担当などが参加し、さながら台湾と米国共同の中国軍事戦略検討会のような形式になっています
15日付Defense-Newsは、中国軍の「Prepares for Military Struggle」をテーマに議論が行われた中で、Andrew Erickson米海軍大学教授とOriana Skylar Mastroジョージタウン大学教授の発表(美人!)を紹介しています
なお研究会のテーマは、毛沢東の対米政策論文「CAST AWAY ILLUSIONS, PREPARE FOR STRUGGLE」をもじったものだと考えられます
米海軍大学のErickson氏は
●米海軍大学のErickson氏と国防大学のSaunders氏は、12月に出版予定の「中国軍巡航ミサイルの野望」(A Low Visibility Force Multiplier: Assessing China’s Cruise Missile Ambitions)の内容を紹介した。
●Erickson氏は、中国軍は今や対艦巡航ミサイルを地上からも航空機からも海上アセットからも発射可能であり、米海軍艦艇のイージスシステムを飽和させる恐れがあると語り、「中国はイージスシステムのようなミサイル防衛システムに対し、大規模な飽和攻撃を仕掛けることが一番有効だと考えている模様だ」と述べた
●また、巡航ミサイルは弾道ミサイルと異なり衛星での探知が難しく、米国は台湾や日本の琉球列島に配備された長距離レーダーによる探知追尾に頼るしかないと実情を説明した
「中国脅威の真打:巡航ミサイル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-08
Mastroジョージタウン大学教授は
●同教授は「Historical Patterns in Chinese Conflict Termination Behavior」とのペーパーを説明し、仮想の台中紛争シナリオを用いて、中国指導者の行動に歴史上3つの傾向があると説明した
●まず中国は、小国との紛争の際は、大国との紛争の際よりも、対話のチャネルをオープンにすることに前向きとなる
●次に、歴史的に中国指導者は、事態拡大やその脅しが敵を屈服させるのに有効だと過信する傾向がある
●最後に中国指導者は、敵が外国からの圧力により妥協や事態沈静化に向かいやすいと過剰に過信し、誤った判断を行う傾向がある
●中国は紛争が中台2国間の範囲にある場合は対話を呼びかけるが、対話希望は妥協希望とは異なる。中国は自らが優位と判断した場合には、対話は中国の要求を相手に飲ませる手段だとみなす。
●したがって、自分の弱みを悟られる恐れがあるときは対話に消極的である。しかし中国が対話を望まない場合、エスカレーション阻止や状況打破が難しくなる
●中国は対外的なイメージを大事にするため、影響力ある第3国を通じて台湾に対話に応じるよう圧力をかけるだろう。中国が直接台湾に対話を求めることは、中国を弱く守勢にあると周りから見られかねないと懸念するからである
●また中国は、米国が多国間の枠組みで行動に制約を受けていると感じない限り、多国間協議には応じないだろう。
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中国軍の巡航ミサイルの話と中国の戦略行動パターンという、全く異なる2つの発表内容をご紹介しました。それだけ広範なテーマを取り上げ、包括的な議論が行われたということでしょう。
台北開催ですから、相当信念の強い骨のある研究者が集まった研究会です。
この台中軍事問題は日本の安全保障に直結する話題ですので、日本のプレスは本研究会の模様を詳細に報道すべきだと思いますが・・・