ブラックホール化する陸上自衛隊

今日は、勝手にぼやかせていただきます!
GSDF3.jpg防衛計画の大綱が発表され、なんと陸上自衛隊は前大綱比で「増員」をむしりとりました。現時点の定員を維持するレベルで、定員削減を食い止めたわけです
また、戦車を現大綱(現保有は900両)の400両から「記述なし」扱いにすることにより、国民の議論から遠ざけることにも成功しています。
戦車の実数を前大綱換算で400両から300両に削減しつつも、「機動戦闘車」なる新たな「戦車乗りのおもちゃ」を新規に99両導入し、実質現状維持の「組織防衛」を完成させています
今回の大綱と中期は、海空自衛隊(各4万人)が中国の猛烈な軍拡と活動活発化に日々懸命に立ち向かう中、対中国の平時任務(恐らく有事でも)が「皆無」で、組織防衛の知恵出しだけに全精力を傾けてきた陸上自衛隊(15万人)がブラックホール化し、日本の防衛を蝕む方向性をより明確にしたものとなりました
「東京の郊外より」は今回の大綱と中期を、海外メディアが「日本の軍拡」と報ずる中で、脅威の的変化に目を背け、本質的改革を避けながら、目先の情勢に無理やり追随する装備導入に猪突猛進する「自傷行為的大綱と中期」と認定いたします
大綱や中期施策に関する感想(国家安全保障戦略も)は、もう少し「気を静めて」からにするとして、本日はブラックホール化する陸自と銘打って「漏れ聞こえてくる」様々な「声」をご紹介します
平時に任務が無い陸上自衛隊
GSDF4.jpg●平時から海上自衛隊は領海の監視と必要な対処を、航空自衛隊は領空の監視と必要な対処を担い、ぎりぎりの人員を1年365日交代制勤務で酷使している。一方、陸上自衛隊は訓練だけしかやることが無く、「極めて暇」である
●もちろん陸自にもPKOはあるし、国際緊急援助の待機もある。しかしPKOも緊急援助待機も、海空自衛隊は少ない人員で陸自と同様に行っている
●陸上自衛隊は、災害派遣を格好の「組織防衛」材料と認識し、有り余る人材を「宣伝活動」に投入し、存在感を国民にアピールするのだけに懸命。同じ災害現場で活動し、輸送や兵站支援で世話になっている海空自衛隊員の姿を決して報道しないのも陸上自衛隊
●福島第一原発への消防車による放水映像で、陸自消防車の映像だけをアップでマスコミに提供し、同じ任務を協力して行った航空自衛隊の戦友を「切り捨て」る徹底した自己中心主義も最近顕著である
●年末年始も東シナ海をはじめとする全国で領空領海を守る任務に就く海空自衛隊が各4万人規模で「青息吐息」な中、早々とほぼ隊員全員が同時に長期休暇に入り、年明けの年始行事で地元サービスをたっぷり行う余裕があるのが陸上自衛隊
事例:紛失小銃を「数万人」で捜索し続ける陸自
GSDF1.jpg●名古屋に所在する陸上自衛隊の部隊が、今年の10月、富士山の裾野の演習場で89式自動小銃を紛失した。銃を紛失すること事態はもちろん問題だが、その後の対応には更に驚かされる
●なんと陸上自衛隊は、富士の裾野に8万人も動員し、未だに銃の捜索を行っているらしい。演習場の草を刈り、茂みに分け入り、大々的に指揮所を立ち上げ、延々と数ヶ月も、多量の人員を投入して・・・
●ちなみに、あの伊豆大島の災害派遣に投入した人員は延べ2万人だったとか・・・
海空自衛隊が必死になり、海上保安庁と協力しながら尖閣や防空識別圏問題の正面に立ち、昼夜を分かたぬ任務に取り組む中、陸上自衛隊はたった一丁の銃捜索に数ヶ月間連続で数万人を投入している実態が衝撃的。あらためて、陸上自衛隊が何をやっていても、国防任務に何らの影響が無い現実が明らかに・・
少子化の中で人材を飲み込む陸自ブラックホール
GSDF2.jpg●自分だけの災害派遣映像でアピールが得意な陸上自衛隊は、少子化で親も子供も地元就職指向が強まる中、全国に広く駐屯地や勤務場所を持つ利点を十二分に活用して人材確保に奔走している。一方、飛行場や港湾やレーダーサイト等の限定的な勤務場所しかない海空自衛隊は、任務にまい進して人材募集の余裕も無い。
暇な15万人の陸上自衛隊が人海戦術「底引き網」で人材を囲みこみ、結果として、日夜最前線で苦労する海空自衛隊に十分な人材が供給されず、網から漏れた「魚」を海空が奪い合う歪んだ構造が常態化
●海空自衛隊が人材確保に苦労する一方で陸上自衛隊は人材を飲み込み、陸自が飲み込んだ人材は中国最前線での活動に生かされず、演習場での「銃捜索」に投入され空しい草刈作業を強いられている
銃捜索だけでなく組織防衛を重点に
GSDF6.jpg●各4万人程度の海空自衛隊が日々の任務に四苦八苦する中、平時(有事もたぶん)任務無き15万人の陸上自衛隊は人材をもてあまし気味
●かつての陸軍大学等に当たる中級幹部教育に、陸自が2年も費やすのに対し、海空自は1年が精一杯。陸自は暇なので、民間企業等の研修にも大量に人材を派遣し、防衛予算で給料を払いつつ「天下り先開拓」にも万全の体制
●研究本部なる組織を立ち上げて「組織防衛」を研究させ、「陸自の装備は防衛的だから中国を刺激しない」等々の良くわからない主張をOBを含めて組織的に垂れ流す日々・・・
●最近の陸上自衛隊は、有事に米軍地上部隊の来援は期待できないから陸上自衛隊の体制を維持しなければならないとのキャンペーンを展開中。在日米海兵隊の有事撤退も示唆する、なりふりかまわぬ自己防衛作戦を展開中
そしてその極みが今回の大綱であり中期防衛力整備計画です
GSDF7.jpgマスコミは陸上自衛隊の変化をしきりと報道しています。人が有り余る「暇な」陸上自衛隊が書いたシナリオ通りの「宣伝文句」を垂れ流す様子を、今日も最前線で黙々と平時の任務に当たる海空自衛隊員はどのように見つめているのでしょうか?
防衛費に投入できる資源は限られています。人口減少と高齢化が確実な日本で、全てに資源投入が困難なご時勢に、陸上自衛隊はその分をわきまえて定員削減で経費を捻出し、優先度の高い日本版A2AD強化に資源投入すべきです。
本当にこのままでは、丸裸のまま銃剣突撃をするしか出来ない、ガラパゴス化した国防組織を日本は持つことになってしまいます。危機感を持たねば!!!
陸上自衛隊関連
「中澤大佐が南西諸島で組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10
「森本元大臣の防衛構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-05
「陸自の組織防衛を許すな!」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-17
平成22年大綱見直し時の議論
「読売も社説:陸自削減を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-21
「国防より組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-16

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