26日、元イスラエル空軍司令官(1996-2000年)である退役将軍が、同国で開催された無人機会議&展示会で無人機活用の将来の方向性について講演しています。
恐らくイスラエルは、世界で最も早くから無人機を実戦で使用してきた実績を持ち、海外への無人機輸出でも他国をリードしている国です。
ゲーツ元国防長官は言ってました・・
「CIA長官だった1992年、イスラエルが無人機を有効に活用していたので、米空軍と共同出資で無人機を使わないかと持ちかけたが、米空軍はこれを拒否した。しかし国防長官に就任した2009年、私は4軍に牙をむいて無人機導入を推進した」と
→→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-07
一方で元空軍司令官のBen Eliyahu将軍は、戦闘機が最も活躍した時代の戦闘機パイロットで、1973年の第4次中東戦争ではエジプト戦闘機を2機撃墜し、1981年のイラクのオシラク原子炉攻撃作戦にも参加した経歴の方で、戦闘機や空中戦には深い思い入れがある方です。
イスラエル老将軍が語る無人機の将来方向
●テルアビブ南方の都市で開催された無人機会議で、「無人機による空中戦はファンタジーではないが、未来の話である」と語り、有人機やF-35導入の必要性・重要性を語った
●主要国空軍が、ISR任務や目標照準用に維持運用経費が高い有人の固定翼や回転翼機運用を止め、無人機に向かっている。攻撃ヘリは将来無くなるだろう
●しかし、無人輸送機が有人機に取って代わることはないだろう。無人機に人間を輸送してほしいとは思わない
●無人機は調達価格、訓練費等のライフサイクルコストで経費の節減をもたらすが、抑止力が不足している。無人機は十分に戦争抑止の役割を果たさない。
●F-35が導入されて運用が開始されれば、敵の抑止効果は劇的に向上するだろう。仮に数百の無人機を保有していても、パワーバランスへの影響はF-35の1個飛行隊にも及ばないだろう。
●無人機はネットワークに大きく依存しており、有人機よりサイバー攻撃に対し脆弱である。操縦者は無情報(total silence)でも任務を遂行できるのだ
●私達パイロットは意志決定者なのだ。戦闘機操縦者の名声は空中戦にある。だから、無人機が有人戦闘機に取って代われるかは、無人機の空中戦能力にもかかっている。
●元空軍大佐で軍情報部の無人機操縦を3000時間以上行ってきた軍需産業関係者は「彼ほどのレベルの人物が、無人機による空対空ミッションについて語るのを初めて聞いた」と振り返った
///////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
良くご批判を頂くのですが、まんぐーすは有人戦闘機を全廃して無人機に置き換えろ、と主張しているわけではありません。その特性や特徴を理解し、従来の思考に捕らわれず、組織防衛に走らず、効率的に効果的に使用できる用途を皆で議論できる雰囲気が重要ですと言いたいだけです
「無人機に人間を輸送してほしいとは思わない」との発言には全く同意ですし、「無人機による空中戦は未来の話」なのでしょう。
しかし、一刀両断に「無人機は有人機よりサイバー攻撃に脆弱」で、「無人機は十分に戦争抑止の役割を果たさない」し、「無人機の空中戦能力が重要要素の一つ」と言われると、議論の意欲もなえてしまいます。
ゲーツ氏が讃えた無人機先進国でもこの状態ですから、まだまだ長い年月が必要なのかもしれません。こだわり無く、胸襟を開いて無人機の活用を議論するには・・・
イスラエルが国を2分して激論したF-35導入の是非
議論の焦点は「戦闘機等の戦力投射用の高価な装備を追求しても、安価で高性能なミサイル等を多用する側に有利な時代になるのでは」との疑念
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01 西側近代軍共通の課題です
最近の無人機の話題
「初飛行:中国無人ステルス機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-23
「欧州でも続々と無人ステルス機試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-11-09-1