24日にヘーゲル国防長官が概要を発表した2015会計年度の国防省予算案について、会見の斜め読みで適当にご紹介します
各種マスコミ報道が今後あろうかと思いますので、そちらの方が正確かもしれません。
今後5年間の計画全体から述べているものと、2015年度予算案のついて述べているものとの区別が難しいものもありますが、米国防省が議会や議員と対決しようとしている姿勢の概要をご理解いただければと思います。
24日のヘーゲル長官による会見等によれば・・・
(金額は1ドル=100円で算定)
●3月4日にオバマ大統領が議会に提出する予算案には、今後5年間の国防予算計画が含まれ、その総額は強制削減が継続した場合の上限額を11.5兆円もオーバーしたモノとなる
●ヘーゲル国防長官が24日に概要説明する2015年度予算案は49.6兆円。この額は(強制削減)制約内の額だが、別に態勢維持の為の経費として「Opportunity, Growth and Security Initiative」が2.6兆円が計上されている。
●この態勢維持経費について政権幹部は、支出改革や税制改革により、バランスよくまかなわれるだろうと述べている
●兵員数の増減について
—現役兵員を13%削減し、予備役は5%削減
—特殊部隊員は4000人増で約7万人に 一方で陸軍は現状の52万人から「44~45万人」規模に縮小。海兵隊も8000名減で18.2万人へ(最終的には17.5万人へ)
—なお海兵隊員900名を在外公館の警備に配属
●基地の再編&閉鎖(BRAC)
—国防省は議会にBRAC2017計画の推進を要請。また別に、今春から欧州の基地施設への支出削減を再検討し、削減を提言
—国防省高官は、欧州及び中東への米軍の関与は完全に果たすと主張
●米陸軍関連
陸軍は「Ground Combat Vehicle」計画をキャンセル
●米空軍関連
—A-10、U-2の全機廃棄。U-2に関しては、U-2を継続使用してGlobal Hawkの調達削減が当初の空軍案だったが、激論の末、逆の方向に。
—A-10全廃で浮く経費3500億円は、F-35投資や次世代ジェットエンジン開発(1000億円)に投資
—強制削減が継続されれば、2016年度予算でKC-10やRQ-4無人機Block 40を全廃、更に無人機のCAP数を計画の65個から10個削減を予定
●米海軍関連
—空母ジョージ・ワシントンの燃料交換経費は要求せず。一方で空母隻数削減にも踏み込まず、決断を2016年度予算案の中で決定
—沿岸戦闘艦LCSは32隻以上建造しない。ヘーゲル長官「海軍は隻数確保のためLCSに頼りすぎ。アジア太平洋地域でのニーズを再吟味し、新技術も検討すべき」
—軍の巡洋艦の半数に当たる11隻を、低稼働状態に置く(近代化施策を行い延命させる。海軍は7隻の退役を要望していたが)
—同様に強制削減が継続となれば、F-35C海軍型の購入を2年間停止
—毎年2隻の潜水艦と2隻の駆逐艦と1隻の「afloat staging base」を購入する計画
●人件費の伸び抑制(compensation:国防予算の5割占有)
大きな心理的影響があるが、細切れの施策よりは、将来設計の立てやすい大胆な変革がよいとの判断。今やらねば、将来もっと大変
→1%の賃上げ(将官を除く。減額にはならない。しかし01年から12年の間に、民間より4割も賃金上昇が大きかった状態は維持不可能)
→住居手当の伸び抑制(減額には決してならない。ゆっくりと。高家賃エリアに配慮)
→BXは閉鎖しない。しかし補助金を削減(1.4b→0.4bへ)。海外や僻地のBXへの補助は配慮
→医療保険TRICAREの改革。退役者と現役家族には若干負担増を。8→11% 2015年2月の諮問委員会の提言も踏まえ更に改革を
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基地の再編や閉鎖、A-10の全廃は、地元への利益誘導を考える議員の猛烈な反対が予想されますが、国防省が敢えて議会と正面から「戦う」姿勢を見せたと言うことでしょう。
海軍が「F-35の調達2年停止」を入れましたが、これは注目です
そのほか、「F-16の能力向上」の扱いも気になります。
追加判明事項については、気が向いたら追記します。
関連の過去報道
「A-10やKC-10全廃議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-09-16
「U-2重視:次期無人偵察機は中止!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-16
「空母GW削減議論&F-16改修」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-28
「沿岸戦闘艦LCSの隻数削減?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-20