10日付Defense-News記事は、元米軍人の研究者が台湾のシンクタンクで発表したレポートを取り上げ、中国が昨年11月に宣言した防空識別圏ADIZの南縁が中国軍地上レーダーの「弱点」だと紹介しています。
また本ADIZは、中国軍の軍事官僚制内での「相互作用:interplay」から生まれたもので、将来設定が予期される南シナ海のADIZは台湾のADIZを圧迫するだろうが、東シナ海での様に中国軍の強みと弱みを表現するのではないか、と分析しています
筆者のMark Stokes(Project 2049 Institute)は、1990年代に在北京の米空軍武官を務め、国防長官室の中国担当だった人物のようです。その他記事は、Paul GiarraやRichard Fisherらのコメントも紹介しています
Stokes氏の分析をDefense-News記事は
●中国海軍の浙江省(地図上の赤部分)所在の第2レーダー旅団と、(台湾正面にある)福建省所在の空軍の第4レーダー旅団の境目に中国地上レーダー網の弱点がある。
●この弱点となる境目は、中国ADIZの南端のラインに沿っている。
●この「穴」は米空軍の突破を可能にし、中国軍のコアとなるレーダーや防空兵器の指揮統制施設への攻撃を導くだろう。逆に米軍はこの「一転の穴」を突き、中国が弾道/巡航ミサイルで我を攻撃する前に対処しなければならない
●嘉手納基地所属の米空軍RC-135電波情報収集機が付近を飛行し、中国地上レーダーの情報を収集しているだろうし、その情報は尖閣諸島で日中の紛争があった際の電波妨害に活用されうる
●またMark Stokes氏は、中国地上レーダー組織を明らかにしている。同氏は、いずれこの「穴」はレーダー施設の進展や統合の空中監視網によって埋められるだろうとも分析している
●中国の防空レーダー組織を理解することなしに、中国の「kill chain」を打ち破り、中国による各種ミサイル攻撃の阻止することは容易でない
●中国は南シナ海でもADIZ設定を準備しているようだが、このADIZは中国防空網の力と弱点の双方を描き出すことになるだろう
他の識者のコメント
●Paul Giarra氏は中国が設定したADIZについて、「実態も言葉の意味からも、砂上に書いた軍事ラインである」と表現した
●またGiarra氏は、「中国はADIZを領空のように扱っており、軍事的に領空域とその海上を確保しているように振舞っている」と述べている
●Richard Fisher氏は、「Stokes氏は、穴の細部見積もるための中国地上レーダーの細部性能に触れていないが、仮に穴が存在していれば、中国側はレーダー性能を誇張して穴を隠しているだろう」とコメントしている
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仮に中国地上レーダー網に「穴」が存在するとしても、今の中国軍の右肩上がりからすれば、穴が埋められるのは時間の問題かもしれません
でも、その穴が装備の間隙からではなく、海軍と空軍の間の組織の壁であるならば、今後とも「弱点」となるかもしれません
いずれにしても、Mark Stokesのレポートは、なかなかお目にかかれない「中国地上レーダー網の図」を掲載しており、その筋の皆様には興味深いでしょう。
基礎的な重要情報ですから、ご紹介しました。10ページのレポートですが、ちゃんと読んでないので、気になる方は御自身でご確認を
→http://www.project2049.net/documents/Stokes_China_Air_Defense_Identification_System_PLA_Air_Surveillance.pdf
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