米国防省レポート「中国の軍事力2014」

2014-China-report.jpg5日、米国防省が議会に毎年提出を義務付けられている中国軍事力に関する報告書を公表しました。タイトルは「Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China for 2014」で、90ページ以上の報告書です
米国防省webが概要を紹介していますので、手抜きで更にその概要をご紹介します。報告書にも2ページのサマリーが付いていますので、少し元気のある方はそちらをご覧ください
海軍の史上最大規模の演習や統合での大規模演習に危機感を訴え、弾道・巡航ミサイル、宇宙やサイバー等に注目しています。日本の「戦闘機命派」が大騒ぎする中国戦闘機は、もちろんone of themの扱いであり、米国防省webの概要記事には一言も登場しません
5日付米国防省web記事によれば
China.jpg●中国は継続して軍事力の近代化とその改善に努めている。また、周辺国との領有権紛争が続く東及び南シナ海での、緊急事態に備えている
●中国の国防費は引き続き増加しており、地域の、そして世界のパワーとなる目標に向かっている
●中国人民解放軍PLAの主任務は、地域の高列度紛争を戦い、短期間で勝利を収められるようにその能力を高めることである
●中国は引き続き台湾海峡での潜在的紛争に備えており、その際は米国の介入を抑止し破砕することが含まれている
●一方でPLAは、台湾緊急事態以外の潜在的事態、南や東シナ海での事態を含む有事にも重点を置いている
●中国海軍は、フィリピン海(比の東方海域)で史上最大の艦隊演習を実施した。
●またPLAは、一連の統合演習を9月と10月に実施し、PLA陸海空軍の大規模機動を伴い、中国大陸の南東沿岸で実施した
China-CV.jpg●中国の国家として国益、能力、国際影響力が拡大すると共に、中国の軍事力近代化投資の焦点は、中国沿岸からより遠方で任務を遂行する方向に益々向かっている
●「より遠方で」には、米国が中国と共に取り組む、海上交通路、海賊対処、平和維持、HA/DR任務も含まれる
●中国の指導者は、今の時代を「戦略的機会の時期」と見なしており、国家躍進の好機だと捉えている
●中国はこの戦略的好機を経済成長と発展を優先させる時を捉え、また2049年までに「国家を回春」させる好機だとも考えている
同時に中国指導者は、中国周辺地域の平和と安定維持の願望、市場・資本・資源確保のための外交影響力の拡大、米国や他国との直接対決の回避を表明している
●このような戦略に沿い、中国のプレゼンスは全世界で拡張しており、米国の同盟国やパートナー国を含む地域諸国との摩擦を招いている。
China-beidou.jpg米中関係は拡大し発展している。ただし、軍事分野では関係発展のスピードは疑問である。背景には中国軍事の不透明性、例えば米国専門家の見積もりで中国軍事費は14.5兆円だが、中国発表は僅か12兆円
である。
中国は依然として戦略兵器部隊を拡大・近代化しており、中距離弾道ミサイルや長距離対艦・対地巡航ミサイル、宇宙攻撃兵器やサイバー攻撃兵器などA2AD能力への投資を維持している
その他、日本の各種報道が紹介する同報告書
中国海警局が「2011~2013年の計画で、少なくとも30隻の巡視船を追加する」
中国海軍が小型で近海用のコルベット艦を昨年新たに9隻導入したほか、今後も20-30隻の導入を予定
●また、「2020年ごろまでには、(兵士や車両を海から陸に揚げる)強襲揚陸艦も建造しそうだ」との見通し
●昨年10月から11月にかけ、西太平洋の公海上で、海軍の3地域艦隊(北海、東海、南海)が全て参加する軍事演習を実施するなど「実際的な戦闘シナリオに基づく訓練」を
UAV3.jpg●開発が難航していた巨浪2型(JL-2)とみられる推定射程距離約7400kmの潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)が運用段階に入り、年内に晋級原子力潜水艦に搭載される可能性があると指摘。
●建造中の国産空母は数年以内に運用が可能になると予測
●空軍では、無人機開発について「将来は米国以上の開発費を投じるかもしれない」とし、昨年9月に中国軍の無人機による東シナ海上空での偵察活動を初確認
●更に空軍に関し「史上例のない規模の近代化を追求し、西側諸国の空軍との差を急速に縮めている」と警鐘
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米国防省webの概要紹介記事は良く出来ています。日本のマスコミが騒ぐ「枝葉」ではなく、本流を短節にまとめています
6月6日金曜日の日本の報道と比べていただければ・・・と思います
昨年と似たトーンで、「台湾有事が柱」だと指摘し、「地域の高列度紛争に短期間で勝利」する能力獲得をめざしていると指摘しています。
更に継続して、「戦略兵器部隊を拡大・近代化」や「弾道・巡航ミサイル、宇宙やサイバー等のA2AD」能力の急成長に注目しています
SouthChinaSea.jpgなんと言っても今年の特徴は、「台湾以外への備え」が急速に進み、「海軍の史上最大規模の演習や統合での大規模演習」で「南や東シナ海での事態を含む有事にも重点」を置き始めたと指摘している点です。
この点は、今年2月にご紹介した米太平洋海軍情報部長の発言→「中国軍は短期戦で自衛隊を撃滅する任務を付与された」(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-21)が裏付けています
ところで今年は誰が発表会見を行ったのでしょうか? 
昨年は中国の反応を気にしてか、ロープロファイルのHelvey東アジア担当国防次官補代理でしたが、今年は会見をやってない雰囲気です。QDRに続き、影の薄い報告書になりそうな雰囲気です
表紙も思いっきり地味で、タイトルなど「米粒大」です・・・
現物96ページ
→http://www.defense.gov/pubs/2014_DoD_China_Report.pdf
過去の「中国軍事力」レポート
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08
「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1
「中国の軍事力」を読む際の重要参考記事
シンクタンクCSBAが語る米中の高列度軍事衝突シナリオ
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-30

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