10日、ロシアのDmitry Rogozin副首相は、米軍によるPGS構想に対応するため、ロシアの核部隊や宇宙防衛部隊を近代化すると語った模様です。
米軍のPGS構想とは「prompt global strike」の略称で、世界中のあらゆる目標を1時間以内に攻撃できる態勢整備を目指すモノです
10日付Defense-News記事によれば
●インターファックス通信によれば、ロシア副首相は「ロシアのPGS戦略に対する対応は、我が戦略核部隊や関連部隊、戦略ロケット部隊や海軍部隊の近代化更新を行うことであり、我々が策定したばかりの計画に基づく航空宇宙防衛システムでの対応である」と述べた
●国防政策を担当する同副首相は、プーチン大統領が開催した国防予算に関する政府会議の後に同発言を行った。
●なお、この会議でプーチン大統領は、西側諸国がNATOを復活させるためウクライナで騒ぎを起こしていると非難している。
●またプーチン大統領は冷戦時のような言い回しで、「NATO戦力の増強、欧州やアラスカにおける米国主導のBMD網の整備、そしてPGS構想への取り組みのような、新たな脅威が出現しつつある」と不満を表明した
●そしてPGS構想についてプーチンは「いわゆる世界の非武装化理論に取り組む輩がいる」と言及した
●米国防省が構想し開発を進めるPGSは、核を使用しない通常弾頭で世界中のあらゆる目標を1時間以内に攻撃することを狙う計画だ
●同じく10日、ロシアのYury Borisov副国防相は、ロシアは(米国のPGS構想により)新型兵器に対処するための技術開発を迫られているが、あくまでも防御兵器であると強調し、ロシアが防御的な国であることに変わりはないと主張した
米国防省のPGS構想を復習
●「世界中のあらゆる目標を1時間以内に攻撃」ために考えられた兵器には、ICBMやSLBMの弾頭に通常弾頭や分散する金属片等をを搭載するタイプ(米陸軍のAHW(Advanced Hypersonic Weapon)や米空軍のHTV-2)や、大気圏内をスクラムジェット等の新エンジンで超超音速で飛翔するタイプ(米空軍のX-51A)などが考えられています
●一時、潜水艦発射のSLBMに通常弾頭を搭載する案の方向で収束しつつあるとの報道もありましたが、弾道ミサイルを発射手段に使用するタイプは、相手に「核攻撃」だと誤解される恐れがあり、慎重な見方が出ています。
●ただ、大気圏内を超超音速で飛翔するタイプも実験の失敗が続いており、技術的な壁と予算の制約から開発が順調とは言えません。最近も実験失敗の報道があったような・・・
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米国内のPGS開発状況を詳しく承知していませんが、順調ではないことは確かであり、ロシアが今の時点でPGSへの対抗措置を持ち出したのには驚きました。
何となく・・・、米国のPGSを上手く活用し、ロシア独自のミサイル防衛や宇宙兵器開発に乗り出そうとしているのかもしれません
PGS関連の過去記事
「PGSに少し光り??」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-18
「パネッタ長官はPGSに期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16
「X-51Aは初期実験段階」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23
「対中国もう一つの柱PGSは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-03
「核抑止の代替?CSMについて」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25