1日付ロイター電子版が、豪州が日本製で世界最大の通常型潜水艦である「そうりゅう型潜水艦」購入を検討しており、数ヶ月後には発表になる可能性があると報じています。
背景には、日豪の最近の緊密な外交関係があり、更に先週潜水艦を製造する三菱重工と川崎重工の関係者が豪州の造船所を訪問したことで、豪州では大きな話題になっているようです
1日付ロイター電子版によれば
●豪州は中国の急速な軍事力増強もあり、2030年までに旧式でノイズの多い国産のCollins級潜水艦6隻を更新したいと考えている。しかし国産で更新を行うと、約4兆円の経費が必要となることから懸案となっていた
●ロイターによる関係者3名からの聞き取りによると、前例のない海上自衛隊の「そうりゅう型潜水艦」の輸入が、最も可能性あるオプションとして浮上してきている
●豪州政府が潜水艦後継は国産でと約束してきた経緯もあり、日本製購入には当然反発もあろうが、アボット新政権は日本製の静粛な潜水艦を熱望している模様
●Collins級潜水艦6隻を、12隻の4千トン級「そうりゅう型」に置き換える計画だが、その手法にはエンジンのみ輸入、ライセンス豪州国内生産、完成潜水艦輸入、更には共同で新潜水艦開発まで複数のオプションがある
●政府が運営する「ASC:Australian Submarine Corp」報道官は、豪国防相のコメントをそのまま繰り返すように「豪州の次期潜水艦の建造や設計については何も決まっていない。このような戦略上の重要事項の決定は、国防白書検討の過程で行われるのが適当だ」と述べた。
●日本の防衛省報道官武田氏もコメントを避け、「日豪間では、両国の協力関係強化のため、装備品や技術交換を含む多様な意見交換が行われている」とのみ述べた。
●三菱重工と川崎重工の報道官は、コメントする立場にないと述べた
豪州内の雇用問題
●「そうりゅう型」は1隻約500億円と言われており、約4兆円と言われる国産経費と比較すれば、緊縮財政を迫られる豪州には有利な選択である
●一方で、国産となれば今後30年にわたり総計25兆円の経済効果があると言われる次期潜水艦計画であり、豪州の地方政府や国内産業界からは反発の声が挙がっている
●豪州では最近、トヨタ、フォード、GMが自動車生産を中止すると発表しており、雇用問題が深刻になりつつある
●特に南豪州では、軍需産業で2.7万人が雇用されており、そのうち造船業界に3千人が働いている。
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そうりゅう型潜水艦は、2007年に1番艦が進水し、現在までに6隻が就航している世界最大のAIP(非大気依存推進)推進の潜水艦です。日本は10隻の調達を予定しています
米国は原子力潜水艦しか製造しておらず、通常型潜水艦がほしい国にとっては交渉相手になりません。台湾も潜水艦の更新が差し迫った課題ですが、中国の目が気になるため誰も売ってくれません。
インドに救難飛行艇US-2を輸出するのとは異なり、潜水艦はハードルが高そうですが、仮に日本の潜水艦輸出が可能になれば、それはそれは世界の軍事的均衡に、ひいては世界平和に貢献できるでしょう。
関連の過去記事
「米海軍は日本から豪へ移動すべき」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-29-2
「10年以上不履行:台湾への潜水艦売却」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-28