4日付Defense-Newsが中国紙の報道を引用しつつ、中国軍の受動レーダー(passive-detection radar)がF-22をはじめとする米軍ステルス機を識別でき、米軍にとっての脅威となるだろうと報じています
米国の専門家も、ネットワークに依存する米軍アセットが放射する電磁波で探知する受動レーダーを脅威だと分析しているようです
ロシアの専門家は、中国の「対ステルス」技術開発が、約15年前にユーゴスラビアの中国大使館が米軍ステルス機に「誤爆」されて以来の、「臥薪嘗胆」の取り組みだと表現しています
4日付Defense-Newsによれば
●9月末の中国紙は、今年5月に北京で開催された軍事装備品展覧会に出展された「DWL002 passive-detection radar system」(中国企業CETC製)により、米空軍のF-22や欧州のステルス無人機が「役に立たなくなる」と主張している
●同紙によれば、DWL002受動レーダーは、F-22等のステルス機が放出する電磁波を複数のセンサーで捕捉し、入手した情報を総合してステルス機を探知・識別できる
●DWL002受動レーダーは、1台の中心となるレーダー車両と2台のレーダー搭載車両から構成され、更に2台のレーダー搭載車両を追加できる。
●探知距離は400~600kmで、中国大陸から台湾や尖閣諸島をカバーできるが、沖縄の米軍基地はカバーできない。また500km以上で探知するには、レーダーが3000mの高所に配置しても、目標が高度1万m以上である必要がある
●中国紙によれば、同レーダーは100目標の情報を同時処理でき、様々な航空機搭載装備が発する電磁波を多様なパラメーターで分析できる
海外の専門家の評価は
●米シンクタンクのRichard Fisher氏は、「ますますネットワークを重視する米軍作戦が放出する電磁波に耳を傾け、敵を見分けて位置を特定するのがDWL002のような受動レーダーであり、ステルス機にとっての脅威だ」と語った
●ロシアの中国軍専門家Vasiliy Kashin氏は、DWL002受動レーダーがウクライナ製の「Kolchuga passive surveillance radar」とチェコ製の「VERA-Eレーダー」(米軍が中国への売却を阻止したが)の技術をヒントにしたレーダーだと見てる
●またKashin氏は、DWL002が中国製のYLC20(探知距離600kmの方位距離探知受動レーダー)を発展させたレーダーだと解説している
●米軍は中国のステルス機対処への強い思いを忘れてはいけない。1999年5月のユーゴスラビア作戦の際、米軍のB-2ステルス爆撃機が中国大使館に5発の爆弾を投下して以降の強い思いである。
●なお、同作戦間に撃墜されたF-117戦闘爆撃機の残骸を、中国が極秘裏に入手したとの報道もある
●また2011年Google Earthが衛星写真で、中国内陸の中国軍技術研究センター(LOEC)に原寸大のF-117モックアップ配備を明らかにし、元在中国軍事アタッシェが B-2, F-35 and F-22モックアップも配備されていると表明している。
●今年6月には、中国国籍のSu Binがカナダ政府に逮捕され、中国にF-22やF-35の秘密データを提供したことが明らかにされている。
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これまで対ステルスのレーダー技術としては、高度な情報処理技術とUHF帯の周波数を組み合わせたE-2D早期警戒機のレーダーや、中国海軍艦艇のレーダーをご紹介してきましたが、「passive-detection radar」との分野もあるそうです
ところで、中国がユーゴ大使館誤爆事件を心に刻み、「臥薪嘗胆」の思いで対ステルス技術に取り組んでいるとの説明は説得力があります。
関連の過去記事
「E-2Dはステルス機が見える?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-12
「ステルスVS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「米イージス艦のIAMD進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09