17日、前太平洋空軍司令官で10月から空軍戦闘コマンドACC司令官に就任しているカーライル大将が、アジア太平洋地域における宇宙アセットが不足していると語りました。
宇宙アセットの分野は日本人にはなじみが薄く、また余り情報が公開されない分野でもあるので、限定的な情報ですがご紹介します。
24日付米空軍協会web記事によれば
●17日ラングレー基地で、ACC司令官司令官のHawk Carlisle大将は、アジア太平洋地域では衛星でカバーーされている地域がまばらで、ISRや通信確保が将来妨げられる可能性が高いと述べた
●特に、過去10年以上に渡って戦いの場であったイラクやアフガンと比較すると、宇宙アセットの分野でアジア太平洋地域は劣っていると語った
●同大将は「中央軍や欧州軍の担当エリアにとって幸いだったのは、他の地域に比較して多量の十分な数の衛星や通信能力があった点である」と(記者団への)ブリーフィングで語った
●現有の通信覆域や既に軌道上にある宇宙アセットの能力で、ウクライナ事案で突然急増したISR要請に何とか対応することが出来たのだと説明した
●カーライル司令官は、敵から妨害や破壊行為を受ける以前から、ISRの利用可能範囲は「軌道上にあるアセット」不足で不十分な状態にあると語った
●ACCでISRアセットであるU-2やMC-12を担当するRay Alves大佐は、(イラクやアフガンから、アジア太平洋地域へのシフトが始まって、)初めて我々は与えられた地域の環境が異なることを意識することになったと述べた
●同大佐は「恐らく衛星が不足すると思う。(無人機等の)空中アセットのような何かを考えなければならない」と語り、中東地域と同様のISR環境を確保するための方策案について説明した
●「いずれにしても今後の課題であり、地域戦闘コマンド司令官に必要なサービスが提供できるよう、いろいろな戦術を考えていくべき課題である」と同大佐は語った
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カーライル大将は今年10月半ばにPACAF司令官からACC司令官に就任したばかりであり、より高い立場で全体を見渡し、アジア太平洋地域の問題点をはっきり認識したのでしょう。
非常に重要なポイントですし、だから中国は戦いの緒戦で弾道・巡航ミサイルによる大量飽和攻撃を仕掛けるとともに、宇宙アセットへの攻撃をサイバー戦とともに試み、米国や同盟国の戦いの足場を粉砕しようとするのでしょう。
宇宙アセットの代替としては、長期在空型の無人機やバルーンが候補に挙がるのでしょうが、覆域や継続運用性や残存性の点でまだまだ課題があるのでしょう。
本分野の「残存性」や「強靱性」に考えが及んでいない日本にとっても、大きな課題です