月刊誌Wedge1月号は、トヨタが特許を開示してまで普及を推進する水素燃料電池車(FCV)について特集し、「水しか排出しない究極のエコカー」とのふれ込みが本当にFCVを正しく表現しているのか追求しています
つまり、走行時には「水しか・・」のエコカーであっても、エネルギー源となる「水素」の製造過程まで考えると、「究極の」と表現するほど二酸化炭素CO2が削減できるわけではないとの主張です
もちろん、走行時に排出される窒素酸化物や粉塵・煤煙は「ゼロ」になるのかもしれませんが、地球環境への影響が世界的な議論となっているCO2に関しては、どのような「水素の製造法」を採用するかでFCVの「エコ」の程度は大きく変化し、現在想定されている製造法では、ハイブリッドカー程度の効果しかないとの見積もりだそうです
月刊誌Wedge1月号によれば
●トヨタのFCV車「MIRAI」は、政府の援助も受け価格が670万円+税程度になり、想定を遙かに上回る受注を受けている。
●ライバルである電気自動車EVの問題点である「充電時間」を後目に、FCVは水素補給を3分間で可能にしたのも大きい
●更に、FCV車は災害時に非常用電源車として機能し、通常の家庭であれば通常の家庭であれば「1週間以上」の電気を供給できる点でも日本のニーズに適合している。
●また想定されている水素の販売価格も、ハイブリッド車のガソリン価格程度になるとの見積もりがあり、「水素スタンド」の普及など課題は多いが、注目を集めるのは当然といえよう。
●ただし、走行時に「水しか排出しない」点は「究極のエコ」と認めるとして、「Well to Wheel:井戸から車輪まで」とのスパン、つまり燃料の採掘・調達から車輪走行までの全行程で「CO2エコ度」を吟味すると、そう単純でない事が明らかになる
「Well to Wheel」でのCO2排出量比較
●太陽光発電で電気自動車走行を「1」単位とすると
●ガソリン車走行「141」単位
●ハイブリッド車走行「95」単位
水素燃料電池車FCVの場合:水素製造手法別で
●太陽光発電の電気で水を電気分解で「14」単位
●都市ガスから水素スタンドで水素製造で「79」単位
●天然ガスから産地で水素を取って輸送で「111」単位
世の中には3種のエネルギーしかない
●3つとは、化石燃料、原子力、自然エネルギーである。
●また、現状で水素を製造するには、化石燃料(石炭・石油・天然ガス)を原料に水素を作るか、電気で水を電気分解するか、2つの手法しかない
●現在技術では、どのエネルギーや手法にも欠陥や弱点があり、水素燃料電池車FCVもその課題を克服できていない
FCV車に水素を充填するにも多量の電力が
●軽い水素を大量にFCV車に充填・運搬するため、700万気圧にして強化プラスティックのタンクに入れている。通常の産業用の水素タンクは150気圧で、その5倍の圧力である
●FCV車「MIRAI」のタンクを満タンにするには、水素を700万気圧以上にする必要があり、その為に必要な電力量は電気自動車を100km以上走行させる量である
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水素の製造は、川崎重工が代表的企業だそうですが、豪州南部で産出する石炭の一種「褐炭」を原料に水素を製造するプラントに取り組んでいるようです
川崎重工もCO2対策に取り組んでいますが、まだまだ課題があるようです
日本が世界に誇る技術ですから、FCV車「MIRAI」の発展普及を大いに期待するのですが、限界も承知しつつ、資源の有効活用や本質的なエコを考えたいモノです