昨年末から新年早々に掛け、F-35を巡り米国防省とやり手若手記者のバトルに火がついています
年末の26日に記者が「F-35の電子光学Targeting Systemは4世代機におとる」と報じ、更に31日に「F-35の機関砲は2019年まで使用不能」と立て続けにF-35計画を批判し、1月7日に国防省F-35計画室の報道官が「反論」する騒ぎとなっています
8日には記者が再び国防省に反撃する記事を掲載し、何となく記者に分があるような気がしますが、8日付DODbuzzを主に活用して適当に概要をご紹介します
Dave Majumdar記者の訴え
●F-35の機関砲はAV-8ハリアーが搭載いしている機関砲を改良したGAU-22 25mmの4連装(ハリアーは5連装)であるが、搭載ソフトウェアの完成版である「3F」が完成して部隊配備される2019年までは使用できない
●海兵隊型F-35Bは本年から簡易ソフト「2B」で、米空軍型F-35Aは2016年からソフト「3I」で、海軍型F-35Cは完成版「3F」で2018年から運用開始を目指しているが、、ソフト開発の遅れから実質2019年からしか機関砲は使用できない。
●F-35に搭載する「EOTS:Electro-Optical Targeting System」は、目標映像を地上の目標照準員(JTAC)に直接伝送できず、現4世代機が可能な能力を備えておらず、機関砲の不具合とともに近接航空支援CAS能力において大きな不具合だ
F-35計画室報道官DellaVedova氏の反論
●匿名の軍幹部発言を引用した記事は「名無し、引用無し、根拠無し」記事である。
●機関砲にはソフトの問題が存在する。またEOTSに記者が指摘した能力が備わっていないことは事実である。
●しかし、機関砲については本年夏からF-35の3つのタイプ全て(空軍用は機体内蔵、その他はポッド式)で試験を開始し、2017予算年度のソフト「3F」導入時に問題は解決される
●EOTSに地上への映像伝送機能が無い点に関しては、ソフトを今後改良する中での追加機能で検討しており、ソフト「3F」で運用可能になる
8日付Majumdar記者の反論
●機関砲用の完成版ソフト「3F」は、国防省が想定する理想的でな全く問題が生じない計画通り進んだ場合で、テスト操縦者の試験用に提供されるのが2017年である。
●米空軍のテスト飛行関係者によれば、試験が進んで前線部隊にソフト「3F」が配分されるのが最速2018年末で、部隊で使用するのは2019年以降になる。これも全てが問題なく進んだ理想的な想定である。つまり、理想的に進んでも、全軍がF-35を使用し初めて、1年から4年たってやっと機関砲が使用できるかどうか・・・といった状態
●国防省はEOTSの改良が既に決定済みであるかの様に説明しているが、具体的な計画は何ら決定しておらず、どのソフト改良に含まれるか全く未定で、予算的裏付けもない。
●このほかにも、EOTSには「high-definition video」や「utilize an infra-red pointer」等、4世代機が保有している重要な機能が不足しており、これについても今後の課題である
///////////////////////////////////////////////////
Dave Majumdar記者は、そのフットワークで多くの話題記事を発表している注目の記者です。
本ブログでも、米海軍のNIFC-CA構想や、対中国航空作戦構想を巡る「海軍VS空軍」の構図を、同記者の記事をご紹介してきました
Majumdar記者の話題記事
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「なぜ8機EA-18Gが必要か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-13
「ステルス機VS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22
「なぜUCLASSが給油任務を?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02-1
本件に関して同記者は、「国防省は根拠無き記事と批判するが、6名以上の軍高官の話から記事にしたものである」と胸を張り、軍幹部の言葉「F-35計画が依然深刻な状態にあることを示す一つの側面に過ぎない」を記事に掲げています
8日付DODbuzz記事が各記事にリンクを張っていますので、ご興味のある方はご確認を
F-35にどこまでCASを期待するか?・・・の論点もありますが