米国が国家安全保障戦略(NSS)を発表

2015 NSS.jpg6日、オバマ政権が国家安全保障戦略(NSS:National Security Strategy)を発表しました。オバマ政権としては、2010年以来2回目。分量は29ページで、「安全保障」「繁栄」「価値」「国際秩序」から構成されています
オバマ大統領は序文で、「国際秩序の構築には米国の指導力が不可欠」とし、「問題は、米国が先導すべきかどうかではなく、どのように先導するかだ」と力説。
一方で、米軍の力が「人類史上で比類ないもの」と自信を示しつつ、「賢い国家安全保障戦略は軍事力にだけ頼るものではない」と指摘し、米軍による軍事行動は抑制的に判断する意向を表明
なお、ライス大統領補佐官はNSSの概要発表に際し、オバマ大統領が今年、安倍首相と習近平を国賓待遇で招待すると発表。
各種報道を総合すると概要は
2015 NSS4.jpg●米国の指導力が不可欠、しかし資源と影響力は無限ではない。賢明な戦略は軍事力のみに頼らない。過激主義の根本原因に対抗するため他国との協力努力が、米国の能力より長期的には重要
TPPとTTIPを通じ、米輸出品への障壁を除去し、世界経済の66%の自由貿易圏の中心に米国を置く一方、労働者権利と環境保護に世界最高の基準を設定。米国を最適な生産の場に
アジア太平洋リバランス実現のため、米国の防衛態勢だけでなく(各国との)安全保障関係を多角化する。日韓豪比が地域・世界の課題に十分対応可になるよう、同盟を近代化し、交流を強化。日韓比タイとの条約上の義務を守る。
中国との建設的関係の発展を探求。海洋安保、貿易、人権などの問題で、中国が国際的なルールや規範を守るよう主張する。中国の軍備近代化とプレゼンス拡大を注意深く監視する。
ロシアの虚偽プロパガンダに対抗し、制裁等でロシアに大きな代償を。露の武力侵略を抑止し、戦略的能力に警戒し、露に抵抗するNATOなど同盟国等を支援する。露が近隣国を尊重する道を選択すれば、利益を共有する分野で大いに協力。
●「イスラム国」を弱体化し、最終的に打ち倒す包括的な対テロ戦略を主導中。同時にシリアの破壊的紛争に対する持続的な政治解決を追求継続
その他の分野でもオバマ色を
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM06H7W_W5A200C1FF2000/ 
2015 NSS2.jpgキューバとの国交正常化交渉などを通じた地域安定への取組。
核兵器なき世界を目指してイランの核問題を解決し中東・北アフリカの安定を目指す
●地球規模の課題として気候変動問題に対する温暖化ガス排出削減や、
エボラ出血熱などの脅威への即応体制を構築
貧困の防止や人権擁護、同性愛者への差別解消なども推進
米国防省の幹部達の反応は
●ヘーゲル国防長官
2014Budget.jpg「NSSは国家の全ての資源を必要としている。そして、米国の比類無き強さとねばり強さを持った経済、外交、軍事力、そして価値観等が資源たる国力を形成している」
「だからこそ大統領と私は、議会による強制削減の終結と2016年度予算案の承認を求め、NSSと国防戦略の遂行に必要な軍事優位と米国のリーダシップの裏付けを今後数十年に渡り維持することを求めたい」
●デンプシー総合参謀本部議長
「米軍は世界に冠たる能力を有している。しかし波乱の世界を見れば、それを当然のことと考えるべきではない。継続的な改革と投資が必要だ
「特にNSSが議会に対し、強制削減の中止を求めている点を歓迎する」
////////////////////////////////////////////////////
鍵となるフレーズを「独断と偏見」で拾っていくと・・・
2015 NSS3.jpg「賢明な戦略は軍事力のみに頼らない」、「他国との協力努力が、米国の能力より長期的には重要」、「米国を最適な生産の場に」、
リバランスでは安全保障関係を多角化」、「中国との建設的関係の発展を探求」、
「NATOなど同盟国等を支援」、「包括的な対テロ戦略を主導中」、「政治解決を追求」、
核兵器なき世界」、「温暖化ガス排出削減」、「人権擁護、同性愛者への差別解消なども推進」、「強制削減の中止を求め」となります
オバマ色を明確にしてくれたことに感謝かも
しかし、米国へ「安倍首相と習近平を国賓待遇で招待」して、何に合意させようとしているのでしょう? 怖いですねぇ・
ホワイトハウス作成のNSS概要(Fact Sheet)
→http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/02/06/fact-sheet-2015-national-security-strategy
2015 NSSの現物
→http://www.whitehouse.gov/sites/default/files/docs/2015_national_security_strategy_2.pdf
本当は毎年提出する必要のあるNSSですが・・・
2010年の前回は「そんなこと出来るか!」と不満たらたらの国防長官
「ゲーツ長官の本音」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-26-1

タイトルとURLをコピーしました