19日、米軍で弾道ミサイル防衛BMDに関わった軍人が下院軍事委員会で証言し、米陸軍や海軍が担っているBMD任務が急増して現場の対応が不可能になりつつあるのに、国防省は両軍トップが求めているBMD戦略見直しを行わず、予算面でも「アウェイ」で戦っているように冷遇されていると訴えました
米軍のBMDに関しては、昨年11月5日に陸海軍人トップが連名で国防長官への要望書を提出し、上記課題への対応を求めましたが国防省はこれに取り合わず、しかも予算の強制削減を前に何らBMDに救済措置がなさそうな状況に、関係者の怒り爆発です
まず昨年11月5日の陸海軍トップの要望MEMO概要
(Odierno陸軍参謀総長とGreenert作戦部長)
●最近の弾道ミサイル脅威は急速に大きくなっており、ミサイルの能力は伸び、我々の対処可能領域を上回り続けている。
●更に各地域戦闘コマンド司令官からの要望は増加の一途で、数少ない装備品を保有する現場部隊は最も多忙な部隊となっている
●また、長期的な予算展望は厳しさを増し、予算の強制削減が目前に迫っている。
●現在の国防省のBMD戦略は実質「装備品購入計画」と「前方展開指向」であり、ミサイルをミサイルで迎撃するという費用対効果の良くない方式を追求するものであり、抑止戦略とはなっていない。このままでは部隊が戦略を支えきれない。
●国防省は早々に現実に目を向け、希薄な装備品と現場の強い要求を前線部隊が支えきれない現実を直視し、ミサイルが発射されるのを抑止する戦略、物理的破壊と非物理的オプションを駆使した戦略も導入し、ミサイル同士での戦いの前の手段を検討すべきである
19日の下院ヒアリングに関する報道
(19日付米海軍協会web記事)
●北米航空宇宙防衛軍司令官のGortney海軍大将は、ミサイル防衛を含む本土防衛は予算獲得で「アウェイ試合」を戦わされていると訴えた。
●また、既に予算削減で関連の訓練予算や海外作戦予算は削減され、将来予期される削減は即応態勢にも大きな影響を与えることは必至であると同大将は下院で語った
●更に、BMD装備は絶対量が不足しているのに現場からの要求が急増しており、PAC-3も、THAADも、イージス艦もその運用頻度は上昇の一途で、軍内で最もストレスを抱える部隊の一つとなっていると訴えた
●別の場で米海軍の調達担当次官は、BMD任務に当たる駆逐艦や巡洋艦などの米海軍アセットは正に屋台骨だが、イージス巡洋艦は既に「若者ではなく中年代にあり」、駆逐艦も「中年代に入りつつある」状態だと解説した
●2つやるべき事がある。一つは艦艇がフル稼働に近い状態の中でも、予定寿命を達成させなければならない。もう一つは、延命措置についての検討を開始しなければならない点である。
●下院軍事委員会のフォーブス議員は、2014年には前線部隊からのBMD艦艇派遣要求が44隻だったのが、2016年には77隻に増加する見通しだと語った。
●別の下院議員は、当時のヘーゲル長官が陸海軍トップの要望を却下したことに失望したと述べ、現BMD戦力維持に疑問を呈した
●Gortney大将は、巡洋艦や駆逐艦には、空母群としての作戦や護衛任務もある点に言及し、現戦略は維持不可能になると付け加えた
●米ミサイル防衛庁の長官であるSyring海軍中将は、既に予算削減で新型SM-3(Block IIA)の試験が遅延しているが、強制削減の緩和対象扱いになっていないBMDやミサイル防衛庁予算は、再度の強制削減で破壊的な影響を受けると訴えた
●Syring中将は、再び強制削減が発動されれば、ミサイル防衛庁予算は$8.1 billionから$6.7に減少し、将来への能力向上が妨げられると述べた
●同時に同大将は、最近のミサイル試験の好成績や安定から、ミサイルの品質保証期間延長が可能になり、14%の調達経費削減につながると説明した
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ミサイル防衛BMDの話題をご紹介するのは久しぶりですが、しばらく目を離した隙に、各軍種が予算縮小の中で「組織防衛」に走り、BMDが「アウェイ試合」を戦わされている様です
陸海軍トップが要望する「ミサイルが発射されるのを抑止する戦略:deterrence policy」が考え得るのか??? ・・との疑問はあります。
相手が相手だけに難しそうですが、余りにもBMDが高価で効果も限定的なため、少しでも抑止が可能なら・・・との思いは分からなくはありません。
でもよく考えると、陸海軍がBMDの優先度を下げて重要度を訴えないから、つまり各軍種の古典的装備を最優先にするからBMDが「アウェイ試合」をさせられているのでは・・とも思います
「日米韓がBMD情報共有へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-05-1
「あれ?韓国がPAC-3導入へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-13
「進化するイージスIAMD」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09