米国防省3人組がアジア政策を語る

Wormuth11.jpg15日、米国防省のNo3であるChristine Wormuth政策担当次官、Locklear太平洋軍司令官、更にScaparrotti在韓米軍司令官がそろって下院軍事委員会に出席し、アジア情勢とアジアリバランスの状況を証言しています。
カーター国防長官による6日のアジア政策演説を先日ご紹介しましたが、そこで取り上げなかった部分(語られなかった部分も)について、つまみ食いで15日付米国防省web記事からご紹介します
もちろん全体のトーンはカーター演説に沿い、地域国との関係を強化し、技術優位を確保する努力を強化し、地域が求める軍事力強化に努めるから予算もよろしく・・とのラインです
まずWormuth政策担当次官は
中国の急速な軍事近代化、不透明な軍事費、宇宙やサイバー空間での行動、更に東及び南シナ海での振る舞いは、米国防省の疑問を喚起している。中国政府による東シナ海や南シナ海における斬新的な主張拡大や、また特に広範な領土主張に伴う前線ポストの軍事化は、我々に強い懸念を抱かせる
●中国と米国は同盟国ではないが、敵対国である必要も無い。国防省は中国軍との軍事関係の中で、懸念事項に関し理解を改善するよう対話を行う
Wormuth2.jpg●他の最大の懸念事項は、北朝鮮の弾道ミサイルと大量破壊兵器計画である。他にも、外部地域との過激活動家の移動、違法物資の取引、破壊的な自然災害が懸念事項である
●関係国との同盟や協力強化では、日韓豪比との同盟強化の他に、シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムとの新しい関係強化を含む、南&東南アジアとの関係強化を図る。ASEANやインドとの関係も重要
●前方展開戦力については「当地域の海兵隊については、より分散したモデルを追求し、沖縄に集中したプレゼンスを削減し、豪州、グアム、ハワイ、日本本土に再配置を進めている」と語った
●また海軍は、計画通り4隻の沿岸戦闘艦LCSをシンガポールでローテーション配備するが、現在の2隻態勢を2017年までに4隻態勢にする
●米陸軍は今年の春後半に、旅団戦闘チームが朝鮮半島で初めてのローテーション展開を開始する。
●また地域への精密誘導兵器への投資や、サイバーや宇宙空間での行動の自由を確保する取り組みも行っている
Locklear太平洋軍司令官は
Locklear1.jpg●我々は数十年前には想像もしなかったシステムに依存しており、それはサイバー空間や宇宙空間のシステムである。そしてそれらは脆弱性も明らかになってきており技術進歩に米軍は追随する必要がある。
●私にとって重要なのは、諸外国の軍事力が向上する中でも、米軍がNo1であり圧倒的である事だ。そのために、全てのドメインで技術的優位にある必要がある。米国の国益を守るため、米国力を投射出来るようにどのドメインでも関与出来るようでなければならない
Scaparrotti在韓米軍司令官は
北朝鮮は非対称能力の強化に努めている。特に彼らから見た我が弱点を狙い、我の支配を封じようとしている。非対称の能力とは、特に弾道ミサイルや、我のISR能力に対抗する能力である
Scaparrotti1.jpg●多くの敵対者は、例えば我々のISR能力を欺き、裏をかく努力に懸命に取り組んでおり、練度を向上させている。他の手段も用い、我々の優位を脅かそうとしている
私の一番の懸念は、北朝鮮がいきなり非対称挑発行動を仕掛けてくることである。このような北朝鮮の行動は予期しないエスカレーションを招く可能性があるからだ
●これを防止するため、同盟国で高い即応体制を維持しなければならない。2014年はこの改善に大きな進展があったが、2015年もこの勢いを維持し、連合の即応体制に焦点を当てたい
●同盟の強化で重要な事項の一つは、紛争の初期段階で韓国に外部から即応部隊を迅速に受け入れることである。また、ISR能力の改善や弾薬の確保も重要である
16日上院軍事委員会で両司令官は
LocklearPAC2.jpgLocklear太平洋軍司令官は、米本土に到達可能な射程距離を持つと言われる北朝鮮のKN-08ミサイルに関し、米国は有効な試験を確認していないが、太平洋軍として同ミサイルからの防御措置に取りかかっている
●防衛措置の強化には、米軍のBMD能力の最適化の追求と、日韓とのミサイル防衛強化が含まれており、韓国へのTHAAD配備議論も行っている
Scaparrotti在韓米軍司令官は、北朝鮮はKN-08が核弾頭搭載可能であると宣言し、公に公開展示しており、また核弾頭を小形化する能力と時間が十分あったと語った
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海兵隊の再編成について「分散モデルの追求」との表現がありますが、中国の弾道・巡航ミサイル等の初動攻撃による被害を局限するため、戦力を分散することが目的の中核です
日本側は「沖縄の負担軽減」との説明を中心に据えていますが、米軍からすれば軍事合理的な「被害極限のための分散追求」が目的です。
従って、平時のプレゼンスのための在沖縄米軍戦力が、危機が迫った際、どう行動するのかは軍事的合理性を基礎に日本側は想定すべきです。
その他、LCSの4隻態勢が2017年まに完成とか、「シンガポール、インドネシア、マレーシア、ベトナムとの新しい関係強化」の追求明示、韓国への旅団戦闘チームのローテーションに小さく期待致しましょう
「カーター長官のアジア政策演説」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-07

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