カーター長官:日韓訪問前にアジア政策を語る

8日からの日韓訪問を前にアジア政策演説
arizona-asia.jpg6日、長官就任後初めてのアジア訪問(日韓&ハワイ)を直前に控えたカーター米国防長官は、アリゾナ州立大学でアジア政策に関する講演を行いました。
目新しい施策を打ち出した訳ではありませんが、「はじめの一歩」ですので概要の概略を、米国防省webサイトの講演紹介記事でご紹介します
なおカーター長官は、最初に8~9日で日本に、その後韓国に2日間滞在し、11日のホノルル訪問で締めるスケジュールを組んでいるようです。
6日付米国防省web記事によれば長官は講演で
(講演はJohn McCain研究所で)
●オバマ大統領が進める歴史的なTPP交渉の成功を希望し、これにより米国の国益が確保出来ることと確信している
●アジア太平洋リバランスには軍事的分野が含まれるが、これは全政府機関を挙げてのアプローチである。WW2後に米国が同地域の安全保障を裏書きし始めて以降のことでもある
●この米国の姿勢により、日本、台湾、比、マレーシア、ベトナム、インドネシア、中国の開発と繁栄が可能となったのだ
米国は重要なアジアに関与を続ける
carter-hearing3.jpg米国は太平洋のパワーであり、太平洋諸国の一員であり続け、アジア太平洋地域に関与を続ける。今回の日本と韓国訪問は、数十年に及ぶ両国との同盟関係の重要性を反映したものである
●米国の取り組みはそれだけでは無い。最新の装備や兵器はまず一番に当地域に配備されるし、将来、米海軍艦艇の6割は同地域配備となる。また海兵隊は豪州でのローテーション配備を開始しているし、米比は、軍事協力関係の強化に向けた協議を続けている。
2050年までには、世界の人口の半分以上は当地域が占めるだろうし、今後15年間で、世界中の「中間層消費」の6割は当地域で発生することになるだろう。
●アジア太平洋地域は繁栄を続けており、その市場へのアクセスを確保しなければならない。当地域での国益を確保するため、米国も変化を続けている。
アジアで繁栄と友好の輪が広まっている
Carter-first4.jpg米国のプレゼンスで、当地域に民主主義政府が4倍にも拡大した。また我々の主導で、当地域国は自由貿易、法治システム、国際法に基づく秩序の利益を享受している。
米国の安全保障、経済、外交の力は、比類無き同盟国や友好国の連携によって更に増幅され、他地域の国も呼び込んで繁栄の輪を広げている。これは力や脅しによるものではなく、理念や価値や意思が生む引力によるものだ
●この様な地域の同盟関係をより強化したい。日本と韓国とは情報共有について協議を行っており、豪州と日本とは海洋安全保障について関係強化に向けた話し合いを行っている
インドとは、1月に2国間国防協力枠組みの見直しを10年ぶりに行い、海洋安全保障やハイテク技術開発(ジェットエンジンや空母設計等)で両国関係に新たなページを開いた
中国の当地域への影響について
中国が米国を当地域からはじき出すとか、中国の経済発展により米国のチャンスが奪われると主張する者が居るが、私はその様な「ゼロサム思考」を排除する。
強力な米国が役割を果たすことで地域の平和と安定が数十年維持され、今後もそうあるだろう。この様なシナリオを米国は追求する
TPP交渉に関して
arizona-asia2.jpg●国防長官として言えば、米国の軍事力が究極的には躍動的に成長を続ける当地域の経済発展の基礎である事を、決して忘れることは無い
TPPは極めて重要である。なぜなら米国経済に仕事と成長をもたらすからである。質の高い仕事を支え、今後10年間で約13兆円もの輸出の伸びを確保するものだからである
TPPは地域諸国との関係強化戦略の面でも重要である。TPPを成立させることは、「空母」のように重要であるTPPが同盟や友好関係を深化させ、アジア太平洋への関与を確かなものにするのだ。そして我々の価値や国益を支える世界秩序推進を後押しする
なお別メディアは講演のこの部分を重視
長距離攻撃能力:6日付Defense-News
●カーター長官は講演の中で、アジア太平洋地域への軍事戦略アプローチについても語った
●新たな技術、例えば次期長距離爆撃機LRS-Bや新型対艦巡航ミサイルLRASMは、アジア地域で活動する際の距離を埋めてくれる重要な装備で重視している装備である
講演の原稿(トランスクリプト?)
→http://www.defense.gov/Speeches/Speech.aspx?SpeechID=1929
//////////////////////////////////////////////////
IS対処やイスラム過激派対処、ウクライナ問題やイラン問題等、世界中で「火の手」が上がっている今日この頃、アジア太平洋地域が静かに見えてしまいます
最近の米国政府や政権に近い研究者の発言をフォローされている皆様にとっては、3年前のパネッタ国防長官時代からほとんど進展が無い・・と突っ込みたくなるカーター長官講演ですが、これが現状です。
「2013年ヘーゲル演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-31
「2012年のパネッタ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-25
TPPにかなり言及していますが、なぜでしょう。これしかアジア太平洋諸国を米側につなぎ止める切り札手段が無いとの思いからでしょうか???
日韓両国に「もっと仲良くしろ」と言うために、仲人のような心持ちでカーター長官はアジアツアーを迎えるのでしょうが、韓国へのTHHAD配備問題、日本とのガイドラインや普天間問題の話、どれもため息の出る話題です

タイトルとURLをコピーしました