中国海軍と露海軍が史上初の地中海演習へ

china-russia.jpg4月30日、中国国防省の報道官は、中露国防相が大筋合意していた地中海における共同海軍演習について、5月に実施すると少し具体的に発表しました。
この海軍演習は、昨年11月に北京で行われた中露国防相協議において、ロシアのSergei Shoigu国防相と中国のChang Wanquan(常万全)国防部長の間で合意していたものです
中国国防省Geng Yansheng報道官は
●「Joint Sea 2015-I」と名付けられた両国海軍初の地中海演習は、中露間の軍事協力の深化を示すものである
●5月に実施される演習には、ロシアから6隻、中国からは3隻の艦艇が演習に参加する。中国からの参加艦艇は、アデン湾での海賊対処任務に派遣されているType-054AのJiangkai II級2隻(Linyi, Weifang)と給油補給艦Weishanhuである
China-Navy5.jpg●強調しておくが、本演習は特定の第3国を相手に想定したものではないし、地域情勢とは何の関係もない
●ロシア海軍からの参加艦艇については承知していないが、本演習では、海洋防衛、海上補給、船舶援護、共同での航路確保、実弾射撃等を訓練する予定である
昨年11月の演習発表時に
ロシア国防相は「演習の主目的は、集団的な地域安全保障システム形成に向けた努力の一環だ」と語り、「米国のアジア太平洋地域における軍事的・政治的企てに対する懸念を表明する」と訴えていた
●なお細部は明らかになっていないが、中露海軍は、2015年後半に太平洋地域でも海軍演習を計画している
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日米の新ガイドライン発表にぶつけたような、中露海軍演習の中身発表でした。中国海軍は最近イラン海軍とも演習をしており、米国感情を逆撫でる事に置いて怠りはありません。
中露関係についてはよく分かりません
東アジア戦略概観2015の分析
Gaikan-2015.jpg●ウクライナ危機をめぐる欧米との対立の中で孤立を深める露は、中国の重要性を再認識。元来プーチン大統領は、露極東地域の発展重視の観点から東アジア諸国との関係強化を模索しており、ウクライナ危機はロシアの東アジア外交を積極化させる要因
●2014 年5 月にプーチン大統領は中国を公式訪問し、ガスプロムと中国石油天然気集団公司(CNPC)が露産天然ガスの中国への長期供給契約を締結し、計40以上もの経済協力に関する文書が調印
●また会談に合わせ中露海軍の合同演習が実施され、両首脳がそろって開始式に出席し、中露両国の軍事面での連携を示そうとした。更に露大統領はアジア相互協力信頼醸成会議にも出席し、上海協力機構(SCO)との連携検討を提案
●更に(上記のように)11月に両国国防相が北京で会談し、中露の軍事協力および軍事技術協力の発展の重要性を強調
●しかし、中露戦略的協力強化は露の思惑通りに進んでいるわけではなく、両国の接近には限界も指摘できる。ウクライナ問題をめぐって中国は、ロシアを明確に支持しているわけではない
●欧米のロシアに対する制裁には反対だが、クリミアの帰属の変更やウクライナへの介入といった露の対応には懸念を抱く、というのが中国の見方。ウクライナが国連提出の対ロシア非難決議案に中国が棄権したのは中国の複雑な立場を象徴している。
●また、中国は「シルクロード」構想を打ち出して中央アジアにも積極的に関わろうとしている。ロシアが独自の「影響圏」とみなす地域への中国の影響力の拡大の試みは、将来的に中露の深刻な利害の対立をもたらす可能性もある
昨年6月、防研の兵頭慎治部長は
(奇妙なことに、上記「概観2015」執筆者に兵頭氏の名前がない)
hyoudou.jpg中露関係は「離婚なき便宜的結婚」と表現されており、中露結束を過度に警戒して、日本がロシアとの関係改善に前のめりになる必要はないであろう
中国は「抗日」姿勢だが、露には日本と交渉を継続したい意向が垣間見られ、足並みはそろっていない
露から中国への武器輸出も、中国の違法コピー問題等による不信感が有りほとんど進展がない。共同軍事演習も双方が相手の戦力を探り合っている状況
天然ガス交渉は、10年も揉め続けてきた交渉であるが、最後はプーチンが訪中寸前で折れた形。ウクライナ問題で孤立が生んだ妥協とも言われる
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兵頭氏の最新の見解を伺いたいところですが、なぜか「東アジア戦略概観2015」のロシア部分に兵頭氏は関与していません。
中露の関係に関する兵頭氏の見方が、必ずしも政府や防衛省の都合に沿わなかったからでしょうか?
ロシアは、中国による北極圏進出(それに伴う通路であるオホーツク海への勢力拡大も)を強く警戒しているとも言われており、両国の潜在的争点は中央アジアだけではありません
一方で、複雑に利害が絡み合い、「敵の敵は味方」の世界です。また「押ば引け、退かば押せ」の世界でもあります。両国首脳とも「腹黒さ」では引けを取らない人物でもあります。
今後の進展と、専門家の分析を待ちましょう
兵頭部長の分析
「露は日露共同演習を目指す」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-07-09-1
「中露関係は頭打ちで複雑化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-03
ロバート・ゲーツ語録
(http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-05-19)
→ロシアで講演→軍事官僚制の2つの病巣、つまり兵器システムの継続的価格高騰と納期の遅延、を危惧する点でセルジュコフ露国防相と意見が一致した
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-28

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