25日、ブラッセルでのNATO国防相会議に長官として初参加したカーター国防長官が記者会見し、米軍の欧州へのコミットメントの裏付けとして、VJTF(高即応統合部隊)を運用すると語りました
一方で、記者団からの「現在欧州に展開する6万5千名の兵力を増強するのか?」との質問には、「現時点で増強の考えはなく、ローテーション派遣を基本とする」と答えています
VJTFに関しては「新しい能力を提供」と表現し、部隊の種類を多数上げており、今は存在しない部隊を派遣するのでしょうが、総兵力数6万5千名に変化をもたらすほどの兵員を伴う部隊を常時在欧させる計画ではないのでしょう。
または、65000名との数自体が、かなり底上げした表現の数字なのかもしれません
会見のトランスクリプトによれば
●ロシアによる攻撃的で脅威となる行為に対し、米国の戦略的アプローチは強力でバランスのとれたものであり、NATOへの関与は重要な部分である
●新たな対処行動の一つは、VJTF(high Readiness Joint Task Force:高即応統合部隊)である。22日にVJTF関連部隊を訪れた際、私は新たな戦力増強(provide many unique enabling capabilities)を行うと発表し、今朝も昨日も同盟国にその旨を告げた
●増強する10カテゴリー
域内及び戦略空輸力
航空ISR能力
戦闘維持支援(combat sustainment support)
空中給油能力
1個航空宇宙展開航空団(an air and space expeditionary wing)
海軍支援装備(naval support assets)
精密誘導火力(precision joint-fires)
戦闘ヘリ(Combat helicopters)
1個移動式指揮所(a deployable command post)
海空軍の特殊作戦部隊(special operations air and maritime能力)
●他には、演習や訓練を支援する米軍の派遣や展開があり、これは米軍の機動性や対応力を向上させる役割も果たす
●また、中欧や東欧地域に、戦車、歩兵戦闘車両、火砲等の1個旅団規模の関連装備を事前集積する。2個大隊分は既に現地にあるが、全体の1/3もまもなく到着する
●サイバー戦やハイブリッド戦といわれる新たな脅威への備えにも取り組んでいる。NATOサイバー防衛センターへの関与による戦略からインフラ等々の計画的強化、また弾薬の共通化に習ったサイバー対処基準のすりあわせ等々に取り組む
●ハイブリッド戦(対称戦と非対称戦の同時対処か?)に関しては、NATOが戦術、技術、手順等々を共有することが必要。NATO事務総長(Stoltenberg:新着任)にもこの点を優先するようお願いした
////////////////////////////////////////////////
この様に抽象的な表現だったため、直後の質疑では「ルーマニアに関しては、どんな関与をしてくれるのか?」、「現在欧州に展開する6万5千名の兵力を増強するのか?」等の具体的中身を問う質問が連発しましたが、カーター長官は「増員の計画なし」「ローテーション派遣」としか具体的には触れませんでした
また特に米国メディアからは、中東問題にも多くの質問が出され、対IS、アフガン対応等々、カーター長官の大変さ、つまり米国の大変さがよく分かります
「10カテゴリー」の増強・・当然嘘はないでしょうが、その厚みについては余り多くを期待するのは酷でしょう。
なおこの他に、「Wales Summit」でNATO諸国が共有したはずの「各国予算における国防投資の確保」について、改めて強く「釘を刺す」ことも忘れては居ませんが、これも期待薄かも知れません。
関連の記事
「フィンランドが不明水中物体に警告機雷」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-29
「米軍がロシア最新軍事技術分析」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02
「NATOと連接せず:トルコ防空」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-20
「露軍機とデンマーク民間機が接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-12-22
「スウェーデン領海内に露潜水艦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-10-23