カーター長官のベトナム訪問と非拘束合意

Vietnam.jpg1日、カーター国防長官はベトナムを訪問し、国防長官として初めてベトナム沿岸警備艇を視察したほか、Phung Quang Tranh国防相と会談し、拘束力のない「Joint Vision Statement」に署名しました。
また、警備艇視察の後には、警備艇購入支援に約20億円を提供すると発表しています。
ベトナム戦争後の「しこり」が長く残り、中国の台頭を背景にベトナムとのよりを戻し始めた初期段階の米国ですので、まだまだ「人権問題」等で意見の相違も根強いのですが武器の共同生産にも道を開く内容の声明がまとまっています
1日付Defense-Mews記事によれば
●カーター長官は「Joint Vision Statement」の署名式で、「昨年米国がベトナムへの武器禁輸を緩和したことを受け、両国はこの合意で初めて、行動を共にし、装備取引を活発化し、共同生産への歩みにコミットした」と語った
●米側高官は微妙な両国間の協議に触れつつ、2011年の両国覚え書きを発展修正した点で大きな意義があると評価した
Vietnam3.jpg●「Statement」は、「装備品取引を拡大し、現行法制の元で、新たな技術や装備の開発も潜在的に含むものとする」と謳っている
●米側関係者は、急激に物事が進むとは期待出来ないが、中国とベトナム間で広がりつつある亀裂に飛び込む意味も込め、両国産業界の潜在的な枠組みとなると意義を語った
ベトナム軍の装備品の9割以上はロシアからの輸入であるが、この合意が両国の「win-win」な関係を提供し、米国軍需産業の進出でロシア軍の影響力を削ぐことにもなろう
●ベトナム国防相は署名式典で、米国武器輸出の緩和を歓迎する一方で、全面解除も要望し、「全面解除が両国関係に信頼と敬意を払うことを表す」と語った
●カーター長官はまた、米国防省から在ベトナム米国大使館にPKO専門家を派遣し、ベトナムによるPKO活動教育を支援すると発表した。ベトナムがいつPKO活動を開始するかは未確定である
ベトナム国防相は、ベトナム戦争で米軍と戦った功績で、共産党内で現在の地位を得た人物である。それだけに思い入れもあるようだ。
相違点も存在
Vietnam2.jpg●米国とベトナム間で意見の相違は残っている。一つは人権問題であり、署名式でカーター長官も触れたが、質問には細部答えず、国務省と連携しつつ国防協力を進めると述べるにとどめた
●もう一つは領有権問題である。米国は南シナ海の島々に軍を配置したり、施設を建設することに反対の姿勢だが、ベトナムはベトナム管理下の19の島に軍人を配置している。ただし島を拡大する計画はない
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記事には、「国防省は、この様な合意文書を製造する工場のように見えることもある」と皮肉を込めた表現も見られます。
でも、カーター長官歓迎のセレモニーはかなりの規模で、昨年石油採掘リグを巡ってベトナムと中国が激しく対立して以降の「風の変化」も感じられます
日本もベトナムとの関係では色々貢献出来そうですので、こっちの方に来るようにお誘い致しましょう。
アオザイには惹かれるし・・・。
米国防省webの関連記事
→http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=128955
米とベトナム関係の記事
「武器輸出緩和発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-13-2
「ベトナムへ武器輸出解禁か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-28
「50年ぶり米軍トップが訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-16
「中国と関係改善の兆し?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-28

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