次期米海軍空母であるフォード級は、べらぼうに高い(約1兆6千億円以上:$12.8 B)ことで議会等から非難を浴びていますが、米海軍はフォード級建造費削減策を検討するため2017年以降年約30億円を投入する計画だそうです。
ちなみに、現在のニミッツ級空母は約8000億円だと言われています
フォード級の1番艦(CVN78:USS Ford)は来年米海軍に引き渡される予定で、2番艦(CVN79:USS Kennedy)はNewportで現在建造中で2023年運用開始を目指しています。
次に3番艦(CVN80:USS Enterprise)計画があり、この建造費削減検討は3番艦以降に反映させて約600億円の経費節減を目標としているそうです。火に油を注ぐような「ゆったり検討」ですが、まずは海軍の説明からご紹介
2日付DODBuzz記事によれば
●米海軍は最近、2番艦(Kennedy)に関する固定経費契約(コスト削減で報奨金も)を結び、価格を約1兆4千億円未満にせよとの議会要求に対応する計画である
●USS Fordは1番艦であり、またハイテク新装備の導入など様々な初期問題が生じたためにコスト増になったと米海軍は説明しており、今後は経験を元にフォード級の建造費は低減すると示唆している
●年間約30億円の取り組みは、革新的建造技術や戦略を明らかにしてコスト低減に繋げようとするもので、担当のThomas Moore少将は、複雑なフォード級建造に必要な人員をニミッツ級レベルに押さえることが一つの目標だとしている
●また同経費は、例えば建造企業が新たな溶接機械を開発して効率化に貢献したような分野にも投入されるとし、船体のコーティング技術や船内の複雑な電子ケーブル配線の効率化も想定される検討分野だとMoore少将は語った
●他の海軍幹部は、複雑な組み立て工程の検討、業務パッケージの検討、兵器エレベーターの再設計等を例として上げ、Moore少将は作業員の熟練度に応じた職場ローテーション検討も示唆した
議会や専門家の目は厳しく
●これまでも海軍や造船会社幹部は、1番艦の経験を生かして2番艦のコスト管理を行うと頻繁に発信してきた。
●ただ同時に、現有ニミッツ級より大きな甲板、電磁カタパルトや各種電子装備等の運用するため3倍の発電量を可能にする装備、自動化の推進など、技術的進歩とそれらを融合する技術的難しさも抱えている
●しかし議会や専門家の目は厳しく、上院軍事委員会は2016年度予算案に本空母計画のコスト管理と計画監視を盛り込み、更に米海軍に対し、2番艦のコスト管理オプションとフォード級に変わる代替案の報告を求めている
●また議会は国防省の監察官に、2番艦以降の経費見積もりに関する再評価を命じている
●この様な状況下、米海軍は今年年初から1年間を掛け、空母建造費削減の検討を開始しており、同時に空母の長期的な代替に関する検討と建造企業の競争促進の検討も行っている
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最後の部分でご紹介した、米海軍が今年から取り組む空母代替や経費削減や企業競争の検討は、以下の記事でご紹介しました。
米軍事メディアの記事の書きぶりは「海軍は言われたから仕方なくやっている」と言った印象で、成果に期待する雰囲気はありませんでした
「空母代替検討:やる気なし?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-24
「空母をどう位置づける?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-22
1兆円以上の買い物ですから、年間30億円かけて「経費節減」を検討する案が出てくるのでしょう。16000円の買い物の吟味に、30円投入する換算ですね。こんな納得の仕方で良いものか・・
米海軍にはこの他、戦略原潜オハイオ級の後継検討も同様の「泥沼感」に包まれており、現在の海軍予算を遙かに拡大しなければ対応出来なくなっています。
そんな中で空母艦載無人偵察攻撃機UCLASSも検討されているわけです。どうなるのでしょうか・・・
米海軍の将来作戦構想
「米海軍NIFC-CA構想」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23