米空軍の科学諮問委員会(SAB:Air Force Scientific Advisory Board)のWerner Dahm委員長が、本年米空軍から依頼されている重点検討項目のひとつ、米空軍無人機の残存性向上策に関する検討について語っています
最終報告は非公開の模様で、記者団にもあまり細部に踏み込んでいませんが、「強固に防御された空域:contested environment」での作戦を考慮した無人機MQ-9やRQ-4への対策の方向性を語っています
雰囲気を感じていただければ・・・
4日付Defense-News記事によれば
●米空軍の科学諮問委員会(SAB)は、米空軍のMQ-9やRQ-4が「強固に防御された空域」で残存性を高めるために、状況把握能力や自動化レベル、搭載兵器を改善すべきだと考えている
●SABは約50名の各方面の科学者等で構成され、毎年米空軍から依頼された項目について提言を行っている。今年は無人機の件、量子コンピュータ、既存装備品の内部回路のサイバー対策の3つのテーマを検討している
●3つの検討項目のうち、無人機の生存性向上が最も短期の課題とSABは認識している。そしてレーダー警報装置、新たな搭載兵器や通信装備等が、GPSが使用不能になるような厳しい環境で現存無人機に新たな命を吹き込むと考えている
●また、これら能力向上策はほとんど全て既存技術(off-the-shelf)で可能であり、しかも現場の需要が極めて高い現存無人機の運用に飛行特性を含め限定的な影響しか与えない。
●新装備搭載により多少重量が増えて飛行時間が減少するが、機体には十分なスペースとパワーがある。限界もあるが、選択により大きく改善が期待できる
●SABの検討では、体系的に多様な兵器や装備の搭載可能性や組み合わせについて検討している。ただしMQ-1プレデターは、「おとり目標」の役割しか果たせないだろうが
ソフト面の対処も重要
●ソフトの改良はハードより大きなインパクトを与える可能性がある。目標捜索や特定追跡の自動化もSABでの検討対象だ。しかしSABではAIや映画の世界のようなところまでは検討していない
●無人機システムそのものだけでなく、ソフトに関し最もインパクトが大きいのは、MQ-9やRQ-4の改良への「modelingやsimulation」の活用だろう。
●「強固に防御された空域」で無人機操縦者に必要な戦術や技術や手順を、これらソフト手法で検討し、改良具体策を詰めることが重要だ
●「modelingやsimulation」を活用する戦術や運用の検討は、もっと早期に実施されるべきであったはずだが、あまりに急速に無人機に対する需要が急増し、立ち止まって考える余裕もなく走り続けてきたからであろう。今こそ非伝統的な勢いで導入した無人機に対し、伝統的な手法の分析を導入すべきだ
●SAB検討では、RQ-4の武装の必要性や、MQ-9への空対空ミサイル搭載の是非を検討している。検討ではミニ兵器搭載で地対空ミサイルを撃退することも考慮している
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使い慣れ親しんだMQ-9やRQ-4を無駄にせず、厳しい環境でも活用したいとの強い思いから米空軍がSABに検討を依頼したのでしょう。
大部分が非公開レポートになるということは、被発見率を低下させたり(ステルス性を高める)、他のアセットと組み合わせて防御を固める等の技術や戦術にも言及しているのかもしれません
それにしても、国の安全保障の向上のため、官民を上げて英知を結集する体制(SABのような)があることが素晴らしいです。
日本のように、無知なノーベル賞学者が安保法制反対を訴えたり、有力大学が軍事関連技術の共同研究を排除したりする国を、英霊はどのように感じているでしょうか
今年1月発表の検討3テーマ
「米空軍科学諮問委員会の3テーマ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01