9日、米国防省F-35計画室長のBogdan中将が講演し、今後3年間で製造ペースを3倍に加速することと、製造した機体のソフトやエンジン改修等を同時並行的に進めていくことが、大きなチャレンジになると語りました。
2019年末段階で諸外国用も含め計493機を製造完了している予定ですが、493機の中で改修不要な完全な形で出来上がってくる機体は「1機もない:Not a one」という驚くべき発言もありました。
「開発と製造の同時進行」の結果であると率直に認めるところは、Bogdan室長の立派なところではありますが・・・
また改修のため機体が部隊で十分使用出来ず、米空軍が2016年夏から冬に計画通りIOC(初期運用体制確立)を達成するには、海軍や海兵隊、場合によっては諸外国からF-35を借りて訓練する必要があるとも明らかにしています。
正直に語るところがBogdan中将の魅力ですが、驚くばかりです
9日付Defense-Newsによれば
●9日、Bogdan中将が講演し、F-35計画の今後の新たなチャレンジとして、製造ペースの3倍増および飛行運用と機体改修の同時並行実施を上げ、またALIS(自動整備管理システム)の成熟度も引き続き課題だと語った
●来年は43機製造する予定だが、その3年後には年間120機を製造する計画になっており、この急激な生産増に各工場や部品供給等が追いつくかが懸念だと語り、「調達の原則からすると、年5割増が限度と言われているが、その限度を超えている」と表現した
●また、今後4年間にそれらの機体を17基地(半数以上が海外)で運用開始することになり、世界に分散した機体の維持整備体制も大きな鍵を握る。なぜなら、世界各地で運用を開始して日々のトラブルに対応するほか、エンジンやソフト等の機体の改修も維持整備関係者は並行して行う必要があるからだ
●私の見解では、F-35計画は転換点を迎えている。これまではゆっくり確実に物事を進めていたが、このやり方から脱するタイミングにある
全ての機体を機体改修
●2019年末段階で諸外国用も含め計493機を製造完了している予定だが、493機の中で改修不要な完全な形で出来上がってくる機体は「1機もない」。従って運用体制確立のための訓練と、機体の改修を並行して行う必要がある
●基地外の整備補給工場に持ち込んで改修を行えば、機体の移動等で時間を要することから、改修チームを各基地に送り込むことを計画している。この様な事態に至ったのは「開発・試験と製造の同時進行」を決断した結果である
●それでも改修中の機体は訓練に使用出来ないので、特に2016年後半に初期運用体制確立を目指す米空軍に取っては大きな問題となっている。米海軍や海兵隊のF-35を訓練用に借用することや、他国から機体を訓練用に借りる事も選択肢となっている
●「改修には巨費が必要になり大きな課題だが、それ以外の最大の懸念は、米軍や購入国が、改修により機体が使用出来ないことに耐えうるかである」ともBogdan中将は表現した
●ALIS(Autonomic Logistics Information System:自動兵站情報システム)でもやるべき事が多く残されている。ALISは「期待された性能を発揮出来ていない」と述べた
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通常の維持整備と機体改修を世界中に散らばる機体に行う大変な作業が待っているようですが、それらを効率的に管理するシステムがALISのはずです。
そのALISの出来映えを、「has not met its potential yet」と「奥歯に物が詰まったような」表現で逃げられると、「口をあんぐり」するしかありません。
4月にF-35関連要員養成のメッカと言われるフロリダのエグリン基地を訪問した議員団に、F-35整備員達は「ALISが発する警報の8割が誤警報で、使い物にならない」と訴えたそうです。
あれから半年・・・「has not met its potential yet」とは言え、少しは改善されたのでしょうか???
「ALISは8割が誤警報」
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-16-1