責任ゆずり合い:F-35射出座席問題

F-35 ejection seat.jpg1日にDefense-Newsが独占スクープして継続取材している「F-35射出座席問題」について、14日付で続報が出ました。
複数の証言が時系列を前後し複雑に入り組んだ記事で、記者も整理できていない印象を受けましたが、結局のところ、原因は明確ではないが、種々の対策案を組み合わせて実施する方向にあり、仮にその方向だと対処完了に2017年の夏まで必要とのことのようです
また、当初関連を強く否定していた第3世代HMDヘルメットに関しても、対策が講じられるようです
15日付 Defense-News続報は、射出座席のメカニズムや、脱出時にパイロット身体にかかる負担を詳細に説明していますが、ここでは省略しますので、ご興味のある方はご自身でご確認を!
まず3日付記事で概要を復習
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
8月に実施されたF-35射出座席(Martin-Baker社製)の試験で、軽量の操縦者が低速状態で脱出した際に首を痛める可能性がある事が明らかに
F-35 Ejection2.jpg軽量操縦者が低速で飛び出した際に余分な回転運動が起こり、パラシュートが開いた際の姿勢が理想的な状態からずれることが判明
8月27日から体重「136 pounds未満=約61.7kg」のF-35操縦者の飛行を停止しており、少なくとも1名が影響を
●米国防省F-35計画室のDellaVedova報道官は、7月に納入され試験時にも使用され始めたHMDヘルメット(Generation 3)の影響ではないとし、「企業と国防省が一体となり、24/7態勢で問題解決に取り組んでいる」と説明
F-35射出座席の静止状態試験の模様(映像12秒)


15日付 Defense-News続報によれば
●米国防省F-35計画室は射出座席だけを(当初)問題していたが、最近の関係者への取材では、7月から使用されている新HMDが問題を複雑化しているようだ。非難の先が、座席か、HMDか、他の部位に落ち着くのか先が見えない
F-35HMD3.jpg●問題が判明した試験は、7月に実施の重量103-pound(46.7kg)のマネキンで見つかり、8月の136 pounds(61.7kg)でも確認された。またこの2回の試験から新HMDヘルメットが使用されている
新HMD(Generation 3)と旧HMD(Generation 2)の重量の差は、僅か6オンス(約170g)であり。新HMDの重量は5.1 pounds(2.31kg)である
●HMDを開発し、既に製造契約を終えているRockwell Collins社の担当副社長は、(7月の)試験を開始する以前に、新HMDは全ての要求値を満たすことが確認されていると述べ、更に射出時の問題は、(夏よりも早い)今年初めの試験で既に明らかになっていたと訴えている
対策の方向性は・・・
●F-35計画室のDellaVedova報道官は新HMDヘルメットは問題に関係ないと言っていたが、ロッキード社はHMDに「下あごPad」の追加装着を提案していた。現時点で米国防省F-35計画室は、長期的な対策として新HMDの重量を「減らす」ことを決定した
F-35 ejection 3.jpg●同報道官は、HMD軽量化の設計審査を12月に予定するが、HMD内部のストラップを削減し、外部バイザーを取り去り、現5.1から「4.67 pounds」に軽量化(195gの削減)を考えていると説明した
HMD以外にも対策案が2つある。一つは、軽量パイロット用に射出座席に「メイン落下傘の開傘遅延スイッチ」を追加することで、これにより、射出時に軽量操縦者の首へのリスクを軽減する
●2つ目は、メイン落下傘の開傘時に、操縦者の頭が後方に動くのを防止する「head support panel」を組み込むことである
●HMD以外の2つの対策は、射出座席の改良型が導入される2016年末に組み込まれる。HMD対策も合わせると、3つの対策の完了は2017年夏になるだろうと、同報道官はメールで説明している
詳細で難解な技術的説明からつまみ食いで
F-35 ejection 2.jpg●速度250ノット以下の低速で脱出すると、メイン落下傘の開傘時に、急激に頭が後方に引っ張られて首に負担がかかる。これは、低速の場合、地上に近い可能性があるため、早期に落下傘を開く必要があるためである
●この課題は他機種でも同様で、米空軍のA-10s, F-15s, F-16s, F-22s, B-1sとB-2に採用されているUTC Aerospace Systems社製の「ACES II」や、同社新型の「ACES 5」射出座席は、座席下に脱出時の座席姿勢を正す小型ロケット噴射機が装着されている
●更に同社製の射出座席には、パイロット体重をセンサーで検知し、ロケット噴射の強さを自動調整するシステムが搭載されている
F-35射出座席はこのような装置を装備していないようだが、メーカーであるMartin-Bakerは、Defense-Newsが本件を取り上げて以降も公式の声明等を出していない
●F-35計画室の報道官は、同社が「head support panel」の試験を計画していると述べるに止めている
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Bogdan4.jpg体重「約61.7kg」以下の操縦者のみが飛行停止になっている状況からすれば、「素人的には」全体への影響は軽微だと思うのですが、どうなんでしょうか・・・
悪くても良くても、いつも率直に問題点を語り、厄介なF-35計画における唯一の「光明」であるF-35計画室長Bogdan空軍中将の声が聞こえてこないのが心配です。
状況を確認しているのか、くだらない問題だからくだらない問題だから放置しているのか、問題の根が深くて「真っ青」になっているのか・・・。
F-35より、Bogdan空軍中将のご様子が心配です!
1日付Defense-Newsの独占スクープ
「射出座席問題:F-35軽量操縦者が飛行停止」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-02
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