中国側に「君たちも脆弱だ」といっている
21日、カナダ大西洋岸最大の都市で開催された「Halifax Security Forum」で、米軍サイバーコマンド司令官(兼ねてNSA長官)Michael Rogers海軍大将が、これ以上中国が悪質なハッキング行為を行った場合、サイバー空間で反撃する可能性を示唆しました
9月の習近平訪米に伴う米中首脳会談で、「お互いサイバー泥棒はしない」ことで合意したと発表されていますが、同時に合意が守られない場合の対応についてもオバマ大統領が示唆していたところです
なお同合意については、米中双方で解釈が異なることを専門家が指摘しており、米情報機関トップも履行の可能性を悲観的に見ていました
21日付Defense-News記事によれば
●Rogers司令官は中国も歓迎されないサイバー侵入の餌食になる可能性を示唆し、「中国側のカウンターパートには、中国も他の工業化社会と同様にサイバー攻撃に脆弱であることを、肝に銘じておくべきだと言い聞かせている。中国が世界的なサイバー攻撃問題の枠外にいるとの考えは間違っている」と語った
●NSA(National Security Agency)長官も兼務する同大将は、中国は国の機関に米民間企業のハッキングを行わせ、盗んだ知的財産を中国企業に分け与えている。当然米国はこのようなことはしていないと語った。
●同大将は、NSAとして対外的に何が実施可能かを掌握しているが、ボーイングやロッキードに情報を与えるため、その能力を利用することは無いとも語った
●そしてRogers司令官は「危機を助長しあおる様な行為を誰も望んでいない。誰の利益にもならないからだ」と付け加えた
マケイン議員は書簡で中国への制裁を要求
●18日、マケイン上院議員(上院軍事委員長)はオバマ大統領に書簡を送り、サイバー攻撃で知的財産を強盗している中国に対し、制裁等を伴う強い姿勢で臨むよう訴えました。なお、同様のレターを国土安全保障長官やDNI長官、更に司法長官にも送付されたようです
●書簡は、オバマ政権に対しハッカー行為により強い対処を求める内容で、中国に対して制裁措置を執らない政権を、サイバー抑止戦略遂行を逡巡していると厳しく非難しています
●書簡の中でマケイン議員は、「米政権はこれまで、米国に対するサイバー攻撃を抑止する確固たる戦略の策定遂行を拒んできた」、「繰り返されている米国へのサイバー攻撃は、抑止に必要な手段の使用を拒むことによる安全保障上の対価や虚弱な戦略をあぶり出している」と指摘しています
●また同議員は、4月にオバマ大統領が署名した大統領令で、米国の安全保障を脅かす国家や企業だけでなく、個人も制裁の対象に含めていることに触れ、「サイバー強盗国家等に対処して結果で思い知らさなければ、安価で有利な強奪を止めないだろう」と訴えています
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米国専門家は米中首脳の「お互いサイバー泥棒はしない」合意を、「中国主席は単に、中国は商業面の知的財産窃盗に強く反対し戦っていくとだけ語り、米国より曖昧で狭義な表現しかしていない。更にこの表現は、中国によるサイバー攻撃が指摘されるたびに中国が示してきたスタンスと同じである」と評価しています。
「米中サイバー合意に期待せず」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-30
いつまで米国が忍耐を維持するのか・・・どのような「reprisals in the cyber realm」が想定されているのか・・・。
誤解や誤判断に基づく「意図しない反応」を呼び起こしかねない、未知の「ドメイン」がサーバーです。また、全く表に表れず、ひそかに一般の目に触れない世界で繰り広げられるのがこの「ドメイン」なのでしょう
知られざるサイバー戦の世界
「閉鎖ネットワークにサイバー攻撃を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-18
「航空戦力でサイバー戦を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-17
「イージス艦サイバー企業が中国に身売り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-06
「前半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-01
「後半:サイバーと宇宙演習の教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-02