3日、カーター国防長官は会見を行い、2016年1月から米軍内の全ての職域を女性に開放すると発表しました。これまで順次女性の職域は拡大されてきましたが、約1割の22万ポストについて女性を受け入れていませんでした。
最後まで「全開放」に反対だった海兵隊に対しては、国防長官が海兵隊トップと何度も時間を掛けて話し合ったと、カーター長官が会見で語っています
これまで未解放だったのは、陸軍のレンジャーや戦車兵、海軍のSEALS、海兵隊歩兵、空軍の救命救助員、特殊部隊等の体力的に厳しく、極限状態でチームとしての機能発揮が求められる職域です
従って、「例外なく女性に開放」は3年に及ぶ検討の末の結論で言葉通り間違いないのですが、職域基準をクリアした者のみが対象で、結果の平等ではなく機会の平等であり、強制的な女性枠は無く、部隊全体の効率性も念頭に、他国軍との共同にも配慮等々の「運用指針」を併せて発表し、4軍指揮官(特にDunford議長)の「言いたいこと」に配慮した「全開放」です
3日付米国防省web記事によれば
●3日カーター国防長官は、2016年1月から、全ての軍のポストを例外なく女性にも開放すると発表した。米軍史上初めて、各職種の基準を満たして資格要件をクリアする限り、女性も全ての道で国家に貢献することが可能になると長官は語った
●「女性兵士も戦車を操縦し、迫撃砲を発射し、歩兵部隊を率いて戦闘に参加することが許される。以前は男性のみだった、陸軍レンジャーやグリーンベレー、海軍のSEALS、海兵隊歩兵、空軍の救命救助員等として貢献可能になる」と表現した
●長官は(職種の開放との側面だけでなく)、才能ある女性がその能力や視点を、より良く軍に提供出来るようになる点を強調した。
●11月に長官は、3年間に亘る4軍をカバーする女性職種開放に関する検討結果を受け取り、陸海空軍と特殊作戦コマンドからは「全開放」に賛同を得た。海兵隊は部分的な例外(歩兵、砲兵等々)を求めていたが、統合部隊として活動することを踏まえ、長官は全軍に「全開放」適応を決断した
●一部例外を求めていた海兵隊司令官とは何度も協議し、本日4軍トップとも話し合い、懸念事項については「実施段階:implementation」で配慮していくことで「全開放」に至ったと長官は語った
●「実施段階」はWork副長官とSelva統合参謀副長官が当面監督し、30日間で「全開放」の準備を進める。慎重に整然と進めるため、長官は「7つの指針:seven guidelines」を示した
「7つの指針:seven guidelines」
1 実行段階では、部隊の効率性改善目的との整合を追求する
2 部隊指揮官は、性別でなく能力で任務や仕事をアサインしなければならない
3 機会の平等は、全分野における男女の平等な参画を意味するものではなく、(女性)強制枠はない
4 米軍の調査によれば、男女間には体力等の平均的な差が存在し、実行段階ではこれを考慮する
5 米軍兵士の中には、男女を問わず、男女混合編制が部隊の戦闘効率を低下させると認識している者が存在するとの複数の調査結果に、国防省は配慮する
6 特に新たに開放対処となる職種では、調査結果や指揮官の意見からも、小集団の機能発揮が重要だとの結果が出ている
7 米国やいくつかの同盟国等では、軍隊を男女両方で構成しているが、全ての国がこの認識を共有しているわけでは無い
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「7つの指針」の中で、6つは(いや、2も含めて全てか?)「全開放」の例外を事実上認める、「現場指揮官に抜け道を与える」表現だと理解しました。
カーター国防長官は、「原則全開放:no exception」を4軍に認めさせる一方で、米軍指揮官の裁量の範囲も大いに認めたと言えましょう。
まぁ米国のことですから、誰かがメディアの前で「話が違う」と騒いだり、裁判を起こしたりして、落ち着くところに落ち着くのでしょう。
多様性は組織を強くする・・・との言葉を、生かすも殺すも、組織管理者次第と言うことでしょうか。
本件関連の「覚書き」→http://www.defense.gov/Portals/1/Documents/pubs/OSD014303-15.pdf
カーター長官会見→http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/632495/remarks-on-the-women-in-service-review
会見映像→http://www.defense.gov/Video?videoid=440437
軍での女性を考える記事
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11