ハリス司令官個人的見解:島々は中国に属さない

「I made clear my personal view that those islands do not belong to China」
Harris CSIS.jpg27日、ハリス太平洋軍司令官がCSISで講演し中国を含む担当地域諸国との関係について語り、インドとの関係を重視し、タイとの関係が懸念との見方を披露しています。
軍人として政策面で語れる分野は限定されており、中国に関する部分は22日のカーター国防長官ダボス会議発言のラインと一致ですが、「個人的見解」として、中国の南シナ海領土主張が間違いだ、中国には属さない、と一歩踏み込んだ発言も見られます。
日本では、記者の質問を受け無理矢理言わされたのであろう、「中国に攻撃されれば、我々は尖閣を明確に守る」との発言が注目されていますが、それは政治レベルの判断だと思いますし、最近のRANDの研究では「尖閣に米国は手を出さない方が賢明」との提言も見られます
→http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45849
とりあえず、日本人の血を引く、有事に対中国の作戦指揮官ですから、新年に辺り、その言葉をご紹介しておきます
なおカーター長官のダボス発言は
→http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/644261/carter-us-welcomes-rise-in-power-of-asia-pacific-nations
27日付Defense-News記事によれば司令官は
Harris CSIS2.jpg中国の発展は悪いことではないが、その力の使い方に懸念を覚える。中国の意図するところが、雲がかかっているようによく分からない。
南シナ海における領土主張や具体的行動は、過去40年間に5カ国が行ってきているが、全ての国にとりあえず一端主張を停止するよう(話し合うよう)求めてきている
●過去40年間でベトナム、マレーシア、フィリピン、台湾が主張してきた領有権の面積は「215エーカー」だが、中国が過去1年半で主張したのは「3000エーカー以上」である
●昨年イージス艦ラッセンが「航行の自由作戦」を実施した直後に中国を訪問したが、かなり興味深いやりとりを中国側と行った。米側は緊張緩和の機会について話したが、中国側は彼らの領有主張に固執した
私は中国が主張する島々は中国に属さず、中国側の行動が地域の緊張を増す攻撃的なものだとの「個人的見解:my personal view」を明確に述べた。中国は大国として採るべきで無い行動を行っている
(原文:I made clear my personal view that those islands do not belong to China
中国は世界の中で良いことも行っている。例えば、ソマリア沖での海賊対処パトロールを20回以上行い、イエメンから外国人を脱出させ、シリアの化学兵器除去を支援し、病院船「Peace Ark」を巡回させ、不明になったマレーシア民航機捜索に大規模な艦隊を派遣したりしている
●これらの行為は、我々が大国として相応しい行為だと考える前向きな出来事である。また私の訪問中、彼らの接遇は素晴らしく、最高の敬意を持って対応してくれた
他国との関係についてハリス司令官は
Harris CSIS3.jpg●当地域に於いては、米国との2国間関係がほとんどだが、私は多国間の関係に発展させたいと主張してきた。共に行動することでより強くなれると考える。例えば、日韓米、また印日米、豪日米はより広範な関係の好例である
●私は当地域の司令官として、インドとの関係改善を主要目標に掲げ、軍事関係を発展させてきた。米印関係については、楽観的でわくわくする事しかない
アジア太平洋地域を語る際は、「Indo-Pacific region」との用語を使用するようにいつも心がけてきた。
●(質問に答え、)2014年の軍事クーデター以降、タイ国内の人権問題があり、タイとの関係が低調になっている。軍同士の関係を切っ掛けとして、両国関係を改善したい
重要で根本的な面で、タイとの間には「some big disagreements」がある。継続して同盟国としてのタイに米国の立場を維持し、語りかけて行くことが必要で、彼らが民主主義に戻り、今より関係が良くなるよう働きかけたい
/////////////////////////////////////////////////
2月2日にカーター国防長官が、2017年度予算案について説明会見を行うようですが、推測記事によれば、対ISや対ロシアの経費が増加し、将来に向けた開発投資が犠牲になる方向がにじみ出るようです。
もちろん、「第3の相殺戦略:Third Offset Strategy」関連は頑張るとの説明でしょうが、将来の投資が減ることは、対中国の投資が減るのと同義に近く、不明確だとCSIS報告書に酷評された「アジア太平洋リバランス」政策は、推進力を得られないままの模様です
Harris CSIS4.jpgそんな現実を察してでしょうか、ハリス司令官は「個人的見解」まで持ち出し、つまり米国の領土問題に対して「どちらの側にも立たない」主義から離れ、「中国には属さないと思う」と語ることで地域諸国の思いに答えようとしたのでしょう・・・軍人として精一杯の発言だと思います
今後たたかれる可能性もありますが・・
タイに関しては、ミャンマーでもそうですが、米国は人権を主張しすぎです。いいじゃないですか、幸せならば・・・
議会要請でCSISがリバランスに提言
→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-20

タイトルとURLをコピーしました