サイバー攻撃停電に備えミニ原発開発中

追加報道
2種類のプロジェクトで実用化検討
SCOが3企業と設計契約結びコンペへ
調達次官室は2027年試験運用開始を目指し
9日付Defense-Newsが、下でご紹介する4日のLord国防次官の講演の続報として、米国防省によるミニ原発開発の動きに関し、大きく2つのプロジェクトが進んでいると報じています

Project Peleについて

Project Pele2.jpg9日、3企業と総額約44億円のミニ原発設計契約を結び、1-5メガワット級のデザイン設計を競わせる
安全かつ迅速に展開設置が可能で、かつ陸海空路で輸送可能なものを目指す

●国防省のSCOが担当し、2年後に最も優れたものを1社選び、更にデモ機製造へ進む予定も、提案の成熟度によっては実用化しない可能性もあり
3企業とそれぞれとの契約額は・・・
— BWX Technologies 約15億円
— Westinghouse Government Services 約13億円
— X-energy 約16億円

2019年国防授権法に基づくデモ機
2-10メガワット級を想定し、デモ機の効率性や安全性等を確認・実証するため、2023年にエネルギー省の試験施設での初期段階試験を構想
●上記初期段階試験で所望の成果が得られた場合、米国原子力規制評議会の許可を受け、商業ベースで具体的開発を進め、2027年までに米本土の米軍基地で1号機の固定デモ運用を構想

●ミニ原発を基地内で運用開始後は、運用民間会社から電力を購入する形式で利用
約9割の米本土米軍基地の電力は40メガワット級の発電所でまかなえるが、サイバー攻撃停電に備え、ミニ原発で2-10メガワット程度を確保したいとの構想

その他、様々な視点から小型原発について同記事は紹介しています。ご興味のある方はどうぞ・・・
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米空軍の僻地展開飛行場にも、民間僻地用にも
究極的には航空機搭載用もねらい
2メガワット級を国防省は狙うとか

miniature nuclear.jpg4日、辣腕でおなじみのEllen Lord調達担当国防次官が講演で、電源供給網に対するサイバー攻撃の脅威が無視できなくなっていることから、米軍基地の重要施設へのバックアップ電源として、小型の原子力発電を検討していると述べ、重要装備品の迅速な調達を担当するSCO(Strategic Capabilities Office)を中心に関連企業と進めていると語りました

同次官は「2メガワット級」の発電量を想定していると述べたようですが、この規模はまんぐーすがググッて調べたところによれば、一般家庭約200世帯をまかなう事が可能な、一般的な日本の原発炉1基の1/500程度の発電能力だそうです。また最近流行の大規模太陽光発電施設と同レベルだそうです

miniature nuclear2.jpg多くの米軍基地は商用電力で運用されており、当然ある程度の緊急対処用の自家発電施設を確保しているでしょうが、サイバー攻撃の対象と考えられている商用電力網が麻痺した場合の長期にわたる電力供給源確保に迫られているということです

また同次官は、ミニ原発の将来の活用先として「前線の僻地:forward, remote operating locations」と言及しており、米空軍が対中国を想定して取り組み始めた「航空アセットの分散運用」に必要な各種装備の展開運用に欠かせない電力源確保にも期待されている模様です

一例として、ロッキード社も開発に5年以上取り組んでいるようで、こちらは究極の目標として航空機搭載も狙っているようです。

5日付米空軍協会web記事によれば
Lord2.jpg●Lord次官はMcAleese and Associates conferenceで講演し、「電源網がサイバー攻撃で途絶することを恐れている」、「我々はモジュラーな小型原子力発電を検討している」と述べた
●国防省の報告書によると、2018年度1年間で、米軍基地で8時間以上の停電が発生した事案が562件もあり、そのうちの223件の損失額は25億円と見積もられている

●Lord次官は、重要装備品の迅速な調達を推進する特別チームSCOが出資し、民間企業と協力して国の認可を受けられるミニ原発のデモ機開発に取り組んでおり、この努力は小型原発開発に関する民間人材の育成にも貢献するものだと説明した
●また、小型原発は「前線の僻地:forward, remote operating locations」において重要な電力供給を担うことも期待していると将来の可能性について語った。米空軍は現在の根拠基地が有事に敵の攻撃目標になると想定し、施設が不十分な飛行場などに航空アセットを分散して運用する方向を追求し始めており、このような場合の電力源としても期待されている

miniature nuclear4.jpgロッキード社は少なくとも2014年から、「CFR:compact fusion reactor」開発に取り組み、2020年代半ばには工場や都市への電力供給を狙っており、将来的には航空機への搭載も目指していると担当責任者が昨年語っていたところである
●ただしLord次官は、国防省が取り組んでいるのが「核分裂型」か「核融合型」かには言及しなかったので、このロッキード社の取り組みとの関係は不明である

●ちなみに、米空軍は1950年代に一度、原子炉搭載航空機開発を検討したことがあったが、墜落時のリスクや搭乗員への放射能の影響を懸念し、開発を中止した経緯がある
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「モジュラーな小型原子力発電」がどれくらいの規模のものなのかイメージがわきませんが、最新のフォード級空母の原子炉発電能力が約200メガワット(19.5万kw)ですから、Lord次官が言及した2メガワットの100倍です。全くの想像ですが、「モジュラーな小型原子力発電」は2階建て一般住宅2軒分ぐらいの大きさでしょうか???

miniature nuclear5.jpgググッて見ると、色々な写真が出てきましたので、適当に添付しています。想像を膨らませていただければ幸いです

サイバー攻撃による電源網ダウンを想定した取り組みを始めて耳にしました。国家安全保障の観点からすれば、金融や治水や交通網システムの防御と並び、極めて重要な分野ですから、是非参考にしたいものです。福島第一アレルギーで立ち止まってはおれません

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