17日、自衛隊の統合運用開始10周年を記念する「統合幕僚監部創立10周年記念式典」や「祝賀レセプション」が行われ、統合運用推進に「豪腕」を振るった石破茂・元防衛大臣も招待された模様で、19日付オフィシャルブログでその思いを語っています
ご存じのように、石破氏は自衛隊のイラク派遣を采配した国防を語れる数少ない政治家ですが、大臣当時の振る舞い、特に自衛隊が関係する「事故」「事件」が発生した際の振る舞いには様々な評価があります(海自艦艇と漁船衝突事案など)
それでも、精力的な状況掌握と勉強量に裏打ちされた防衛省・自衛隊を見る目は「温かくかつ厳しく」、特にイラクに隊員を派遣した思いを自ら綴った「平成16年度版防衛白書の巻頭言」は、自衛隊員のみならず、各界有力者の「心を熱く」したと高い評価を得ています
●(イラク支援派遣部隊の壮行会で)世間の多くの人々にとって、一年で最も楽しみな日のひとつであるこの日に、多くの若い隊員たちに厳しい任務を与える行事を行うことに、私は心の中である種のすまなさを感じていた・・・
「2003年のクリスマスイブ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-23-1
そんな石破氏はかねてより、市ヶ谷の防衛省や陸海空自衛隊司令部が繰り広げている「(理念無き)陸海空自衛隊バラバラの防衛力整備」を厳しく非難しており、今回の「10周年」に際しても、真綿で包んだ表現ながら、相変わらずの現状に厳しい視線を向けています。
このような指摘をする有力者はいませんので、過去の発言と併せてその真実の主張をご紹介します。
なお石破氏は、2002年から04年の防衛庁長官として「統合運用」開始を「豪腕」で決定し、2007年から08年は防衛大臣として「統合運用」開始後の防衛省・自衛隊を実地に確認した人物です
19日付オフィシャルブログで石破氏は
●10周年記念式典で来賓としてスピーチをして参りました。それまで陸・海・空がそれぞれに運用を行っていたものを一元化するという、極めて当然のことが長く行われていなかったこと自体が不思議なことですが、ここまでの道のりは実に多難なものでしたし、これからもそれは続いていくものです。
●(防衛庁長官や防衛大臣当時、)「部分最適の総和は決して全体最適ではない」「『内局と制服、陸・海・空、それぞれが互いを非難し合い、防衛省・自衛隊が一致して非難する対象は政治の無知・無理解や予算査定に厳しい財務省』という責任回避体質を改めよ」などと随分と嫌われることを言いながら改革を進めていた頃のことが脳裏に甦りました。
●旧軍時代、「陸海総力を挙げて戦い、余力を持って英米に当たる」と揶揄されたこともあって、自衛隊の前身である保安隊(警察予備隊ではなく)創設時にも似たような議論はあったようですが、陸・海の制服組(空はまだ存在していなかった)、そして内局の反対により、統合運用も統合的能力整備も実現することはありませんでした
●創設時に米軍から何らのサジェッションも無かったとすればそれはそれでとても不思議なことですが。
2010年11月11日の発言
●防衛省改革というモノがどうして止まっているのか。
●つまり、陸海空の装備が、本当に統合オペレーションを頭に入れて、陸は、海は、空はとこれだけという予算の立て方をしているかというと、私は3年間防衛庁や防衛省にいたが、絶対にそうだとは思わない。
●陸は陸、海は海、空は空・・それは絶対譲らない。シェアも変わらない。運用だけ統合でやっても、防衛力整備を陸海空バラバラにやっている限り、信用がならないと思っている。
●陸海空がバラバラに内局へ行って、内局の分からず屋と言う話になって、政治が馬鹿だと言って、それでおしまい。そしてみんなが何となく天を仰いで、この国はだめだとか言っている。
●こんなことではどうにもならない。朝鮮半島、台湾有事等々、それぞれどのようなオペレーションになってどのような装備が必要か、みんなが頭をそろえて防衛力を整備しなければならないのに、そうなっていない。
●私は防衛力整備局を作って、制服も内局も入って議論して、防衛省として自衛隊としてこれがあるべき防衛力だと言えなければならない。そうでないと、結局財務省に足元を見られる。
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真綿で包んだ「道のりは実に多難なものでしたし、これからもそれは続いていくものです・・・」との表現で、厳しい財政状況下、ますます激烈さや暗闘の度合いを増す陸海空自衛隊の「予算争いの仁義無き戦い」をチクリと語っています
ついでに、「保安隊創設時に米軍から(統合に関する)何らのサジェッションも無かった・・・とても不思議」は、米国による「瓶のフタ施策」を臭わせる表現です
昔はもう少し腹を割って話していたような気がするが、最近は各自衛隊が生き残りや予算シェア確保を賭け、結構好き勝手に動いてますよ・・・との声も市ヶ谷の方から聞こえてきます。
情勢も予算も急激に厳しさを増す中、この「10周年記念」が新たな門出となるのか、「防衛装備庁」なる官僚ポスト確保施策や内局による自衛官作業員化施策がどのような影響を「市ヶ谷台」に及ぼすのか、今後をなま暖かく見守ることと致しましょう
石破茂・元防衛大臣関連の記事
「防衛予算と中国脅威を語る」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-29-1
「石破元防衛大臣の怒り」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-24
「2003年のクリスマスイブ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-23-1