原油安でも米軍需産業に悲観なし

F-35 N.jpg1月30日付Defense-Newsは、業績見積もりに言及した主要軍需産業関係者や研究者への取材記事を掲載し、原油安で混乱する世界経済の中にあっても各社の見積もりが楽観的で、むしろ不安定な世界情勢を受けて新たな投資家が軍需産業に資金を向けるのではないかと推測しています
このような記事は、記者の立場や視点によって表現が大きく左右されるものとは思いますが、企業関係者やシンクタンク研究者の多くが兵器や軍需装備需要が堅調だと予想している点を「take note」しておくため、取りあえずご紹介します
1月30日付Defense-News記事によれば
chemical battalion2.jpgLockheed MartinのCEOであるMarillyn Hewson女史は、原油価格安が諸外国の国家予算編成への圧力になっているようだが、引き続き国家や国民を守るための装備や技術に対する需要は続いており、国防投資が縮小する兆しはないと述べている
●なお同社の2015年売り上げの21%は、外国からの注文によるものであり、前年より6%上昇している
Northrop Grumman社CEOは、14%が海外からの受注であり前年から10%上昇しているとし、今後数年を見通しても海外売り上げが成長の重要要因だと語っている
Raytheon社のCEOも、原油価格の影響は見られないと語り、世界の脅威状況から同社が提供する装備への需要は継続しており、短期的な経済変動は直接的に影響力とはなっていないと述べていた
●特に同社が提供する、ミサイル防衛、長距離レーダー、最新指揮統制システム、精密誘導兵器やサイバー対処装備への需要は高いと語っている
General Dynamic社のCEOも同様の見解を示し、投資家の皆さんにも、諸外国からの需要は高く伸びており、国防投資は脅威によって完全に左右されるものだと説明していると語ってくれた
●軍需産業の中には研究開発費を増加する企業も出てきている。ロッキード、Booz Allen HamiltonやL-3は研究開発費の増加を示唆しており、レイセオンも昨年並み以上の確保を明らかにしている
●レイセオンCEOは「超超音速飛行、サイバー、エネルギー兵器等々のgame changingな技術開発に投資を増加し、長期的な競争力確保に勤める」と語っている
軍需産業の専門家達は
Cyber-EX.jpgCSISのAndrew Hunter軍需産業分析部長は、石油収入の減少が国防投資の削減に自動的につながるわけではないと見ており、「中東諸国は原油価格に過剰に反応しないようにしているし、国防関連施策が長期的なものであることを理解している」と語っている
●同部長はまた、イランと欧米諸国がイラン核協議で合意したことも中東の懸念材料となっており、更なる国防投資に駆り立てる要因となっていると語っている
●またHunter部長は、米国防予算が過去数年に比して安定することから、軍需産業市場は変化の時を迎えることが予想されると見ており、より長期的な投資に関心を持つ新たな投資家を呼び寄せる方向にある
●各軍需産業のCEO達は明らかにしていないが、投資家達の状況を見ていると変化の方向にあると感じていると同部長は語った
●一方、投資顧問会社Capital Alpha PartnersのByron Callan分析員は、軍需産業幹部が原油安の影響がないと主張することには懐疑的で、例としてマレーシアが国防費を削減したことを上げた
●国民を満足させるための予算削減は容易ではなく、兵器や高価な装備でない方向の国防投資を探している場合もあると指摘している
●またCallan分析員は、主要軍需産業が投資家への配当や分配を増やしていることに関し、その投資が見返るにつながるとは限らないと否定的に見ている
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Malabar 20155.jpg欧米の軍需産業に元気がないと困るのですが、「海外からの需要が増加傾向」と言われると、米国を上げて外国に米国製兵器を売り込んでいるのでは・・と気になりますし、そうなんでしょう。
Lockheed MartinのCEOなど、今後5年間のF-35需要の半分は海外からのものになろう・・とウハウハ発言をしています。
原油安と各国の国防投資の関係については、しばらく様子を見る必要があると思いますが、安全保障上の危機感が多くの地域で高まっていることは確かでしょう

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