カーター長官が2017年度予算案をアピール

2017Budget.jpg2日、カーター国防長官がEconomic Club of Washingtonで9日提出予定の2017年度予算案の概要についてアピールし、「5つの考慮要因」や関心事業への予算配分、更には注目の技術開発等について語りました。
一方で、アピール点以外の「Trade-Offs:削減どころ」については積極的に語らず、主催者の質問に「やんわり」と沿岸戦闘艦LCSやフォード級空母等について答えるにとどまっています。
また、先日事前リーク情報が軍事メディアを飛びかったUCLASSからCBARSへの変更については言及無く、F-35調達計画についても特段の言及がなかった模様です
2日付Defense-News記事によれば
予算案編成上で考慮した「five key factors」
●大国ロシアと中国の伸長(←これで2つにカウントか?)
●米国やアジア太平洋の同盟国等への北朝鮮の脅威
イランの湾岸諸国へのよくない影響
●進行中のISILとの戦い
●カーター長官は、現在と将来の戦い両方に対処し備える必要があり、そのように予算案を編成したと説明
●更にロシアや中国は先進の競争者(competitors)であり、彼らが挑発的行為に出た際にに耐えがたいコストを負わせる能力を持つことで、そのような行為を思いとどまらせ、又は後悔させなければならないと表現
具体的な数字で説明した内容
2017Budget3.jpgISILとの戦いには、昨年比5割増しの$7.5 billionを。この金額とは別に(対ISILで消耗の激しい)精密誘導兵器の購入に$1.8 billionを当て、4.5万発以上の誘導兵器を調達
アフガン治安には「full funding」とのみ言及し細部は不明
●2年間にわたり米空軍と議論してきたA-10攻撃機の引退は、後継機となるF-35Aの配備が進む2022年以降に延期し、次期政権に判断をゆだねる
今後5年間でバージニア級攻撃原潜を9隻を$40 billion以上で購入を計画し、まず2017年度は$8.1 billion投入
サイバー戦関連には、今後5年間で$35 billion以上の投資を計画し、まず2017年度は$7 billionを投入
宇宙分野に関して具体的数字はなかったが、2016年度($5 billion)以上と言及
2017Budget5.jpg欧州諸国の支援ERI(European Reassurance Imitative)の経費は、2016年度予算から4倍以上増の$3.4 billion
2年連続で研究開発費を増加させ、2017年度は$71.4 billionを要求
官僚機構や司令部経費(overhead)を、今後5年間で$8 billion以上削減し、前線能力発揮に投入を誓う
●長官自身が副長官時に設置した、国防省と情報機関と民間企業に敵を困惑させるような新しい画期的能力を提供するSCO(Strategic Capabilities Office)の取り組みを紹介した
・スマホカメラのような小型センサーを目標照準の精度向上にキットとして開発し、SDBなど多様な爆弾等に適用
群れを成す自動無人機。アラスカやイラクで実験を開始しているジェット機から散布するような高速飛行する小型無人機や、実際の島や人工島で周辺の海で艦隊防御や偵察に利用するネットワーク化された自動無人ボート
・海軍駆逐艦や陸軍の自走砲装備する5インチ「電磁レールガン」は、従来の兵器をミサイル防衛兵器に変換。先月試験に成功
無人機化した空軍の旧式航空機を「空飛ぶ弾薬庫:arsenal plane」として活用し、全てのタイプの通常兵器を発射使用可能にし、第5世代機とネットワーク連接してセンサーや目標照準機として活用既存システムの組み合わせで新能力の獲得
「Trade-Offs:削減どころ」関連部分
2017Budget2.jpg●他の予算確保のためにトータルの調達機数削減が話題になっているF-35については言及がなくUCLASSのCBARSへの変更についても言及がなかった
●削減関連にはほとんど言及を避けた講演だったが、米海軍が反対するであろう沿岸戦闘艦LCSの削減については「ハイエンド脅威の抑止と撃破のための広範な予算取組の一環」として言及があった
●カーター長官は、米海軍の総艦艇数を308隻に増強する計画に触れつつ、(ハイエンド脅威に脆弱なLCS削減について)海軍とともにベストなバランスを検討していると語った
●また主催者である「Economic Club」David Rubenstein氏からのフォード級空母に関する質問には、「関与や統制が不十分(undisciplined)なプログラムであり、過去15年間の開発の経緯は正当化できない。空母の購入は継続するが、これまでのやり方ではない方法で行う」と表現した
●またGoldwater-Nichols法の見直しに関して、「過去数か月間、法律改正に向けた見直しを行っており、今後提出される改正提案を吟味して決断することになろう」と語り、米議会も検討している課題に、国防省自らも先行して取り組んでいることを明らかにした
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2017Budget4.jpg今後、9日の議会への予算案提出を挟んで、様々に2017年度予算案について様々な情報や分析が飛び交うものと思います。
特に上記で言う「Trade-Offs:削減どころ」については、様々に語られるのでしょう。
対ISILの戦いや、ウクライナや欧州での対ロシア支える経費を、「なんちゃってアジア太平洋リバランス」や将来に備えた経費を「広く浅くスライス」してねん出するのではとの予想記事も出ていますが、どうなることやら。
空や海の「群れ小型無人機」、サイバーや宇宙、潜水艦、「空飛ぶ弾薬庫」、「impose unacceptable costs」、「人工の島」、「電磁レールガン」、LCS削減などなど・・中国(ロシアも)を意識した言葉やアピールが飛び交っていますが、「five key factors」で対中国を最初に語るあたりが、口先介入」に見えるのは老眼のせいでしょうか・・・
カーター長官の講演原稿
→http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/648466/remarks-prev%20iewing-the-fy-2017-defense-budget 
米国防省2017年度予算特設webページ
→http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0216_budget
2017年度予算案の関連記事
「UCLASSからCBARSへ後退?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-02
「A-10全廃案を取り下げへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-22
「下院軍事委員長が重点を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-14
「ハリス司令官講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-28
「Offset Strategy解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-28

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